時の化石

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『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-』を読んで。ワクチンには期待できない。ゆっくり集団免疫獲得に向かうしかない。

どーも、ShiShaです。

まだまだ、暑いですね。TV番組のコロナ関係ニュースでは、医者や医療関係者が出演して、いろいろコメントしていますが、かなりうさんくさい人が多いですよね。まあ、今の時期、医療関係で有能な人は、テレビになど出ている暇がある訳ないですよね。妄言に騙されてはいけません。

今回の記事は、新書『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-』 第2章 歴史と国家 から、印象に残った記事の内容を紹介します。こういう時代だから、自分で選んで本を読む。そして、自分の頭で考える。当たり前のことですが、非常に重要だと感じます。

本書を読みながら、2回ブログ記事を書いて、我々が目指すべき方向について、確信することができました。どうやら、正常化まで3年から5年というのが、現時点での妥当な見込みです。信じたくないが、相当厳しい道になりそうです。

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『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-』 朝日新書

『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線- 』 第2章 歴史と国家

この本は、4章に分かれており、22人の内外の識者がコロナ後の世界について執筆しています。主な執筆者は、養老孟司氏、ユヴァル・ノア・ハラリ氏、福岡伸一氏、おお、鎌田實先生も、坂本龍一氏も入っています。

本書の中に、1918年〜1920年に流行したスペイン風邪では、3年間に3回のぶり返しがあり、4,000万人の死者を出したことが書かれています。日本では、竹久夢二宮沢賢治が生きていた時代です。この例でいくと収束まで3年かかるのか。しかし、4,000万人というのは、当時の世界人口の5%。すさまじいパンデミックだったんですね。

今日は本書の「第2章 歴史と国家」から、印象に残った記事を採り上げて、内容をご紹介します。

ユヴァル・ノア・ハラリ『脅威に勝つのは独裁か民主主義か 分岐点に立つ世界』

ユヴァル・ノア・ハラリ(1976年イスラエル生まれ )。ヘブライ大学教授、人類史を問い直し、未来を大胆に読み解く著作で知られる。『サピエンス全史』『ホモ・デヴァス』など。

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ユヴァル・ノア・ハラリ 朝日新聞デジタルから転載https://www.asahi.com/articles/ASN4G76G1N4BUHBI02X.html

この章の最初に掲載されているのは、ユヴァル・ノア・ハラリ氏が書いた記事です。『サピエンス全史』、有名な本ですね。僕は読みたいのですが、なかなか時間が取れません。学者であり、世界的なベストセラー 作家であるユヴァル・ノア・ハラリが、どんな記事を書いたのか、非常に興味がありますね。

政治の重大局面

ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、現在は、政治の重大局面だと書いています。確かに、危機の中で、社会が混乱している時は、政治しか解決できない問題だらけです。

  • 世界は政治の重大局面にある。ウィルスの脅威に対応するにはさまざまな政治判断が求められる。

  • 経済における政治判断も重要になる。企業を救うには政治の介入が必要だが、全ての企業を救うことなどできない。大企業を救うのか、街のレストランを救うのかは、政治判断に委ねられる。

  • 長い目で見ると、独裁より、民主主義の方がうまくパンデミックに対応できる。情報を得て、自発的に行動する人間は、警察と監視カメラで見張られた無知な人間より、危機にうまく対応できる。

  • グローバル化がなければ、感染症はなくなるという考え方は間違っている。中世には、ペストが東アジアからヨーロッパに広まった。我々は石器時代に戻ることなどできない。グローバル化は、ワクチンや医療資材の供給など、むしろ感染症との戦いを助けるものだ。
  • エクアドル、ペルー、エジプト、バングラデシュなど国力の弱い国は、新型コロナウィルス の感染拡大により壊滅的な被害を受ける可能性が高い。国際的なセーフティネットが必要。

中国は、すぐに意思決定ができるので、最近では、一見、新型コロナウィルスにうまく対応できている感じを受けます。しかし、初期の感染発生時には情報を隠蔽し、それが原因で自国にも、世界に感染が拡大した。

筆者が書いているように、長い目で見ると、正しい情報をもって、自発的に行動する市民のいる国の方が、危機にうまく対応できる。僕もそう信じたいですね。

グローバル化がなければ感染症リスクは減る。しかし、あらゆる仕組みがグローバル化している中、鎖国なんてできるわけありません。グローバル化の仕組みの中で、今こそ、世界が協調することは重要だと考えます。

世界が、我々が立つ分岐点

記事の後半で、筆者は今回の新型コロナウィルスの脅威 に対応するためには、全世界の問題として解決しなければならないと書いています。

  • 感染症は全世界の共通するリスクだと考える必要がある。日本でウィルスが消えても、エクアドルの患者の体内のウィルスが突然変異し、強毒化して戻ってくる可能性もある。
  • 1918年春に流行したスペイン風邪では第1波で死亡した人は少なかった。その後1918年秋の第2波で死者数は大きく増えた。さらに第3波もあった。一つの国が感染に苦しんでいる限り、どの国も安全でいることはできない。
  • 今回の感染症は、中国から始まり、東アジア、欧州、北米へと広がった。最悪の事態は、感染が南米、アフリカ、南アジアに到達した時に起こるかも知れない。

最新の新型コロナウィルスの感染状況では、ヨーロッパではようやく感染拡大の勢いが治まってきて、死者数も大きく減ってきた。アメリカは経済活動再開による感染拡大が、ロックダウンの再開により、ようやく減速しつつあるが、まだ、感染者数は、死者数とも多い。

日本も経済再開による感染拡大がようやく減速傾向となった。死者数は少ないものの再び増加傾向にある。インドは感染者数、死者数も増加し続けており、アフリカはデータすら把握できていない。

世界の新型コロナウィルスの感染状況は、まだまだ、こんなレベルだ。どう考えても、解決まで、まだ長い時間が必要となるだろう。
筆者の主張からいえば、世界の脅威は南米、アフリカ、南アジアの感染が収束するまで続く。これらの国の感染対策に対応するためには、国際的な協力の中で、対峙してしていくしか方法がないと考えられます。

この記事の最後で、筆者はこう書いています。これはイマンジンの世界ですね。実現するといいですね。

この危機の中、憎しみより連帯を増し、強欲に金儲けするのではなく、寛大に人を助ける。陰謀論を信じ込むのではなく、科学や価値あるメディアへの信頼を高める。それが実現できれば、危機を乗り越えられるだけでなく、その後の世界をよりよいものにすることができるでしょう。我々はいま、その分岐点の手前に立っているのです。

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世界の新型コロナウィルス 感染者数の推移 早野龍五 さんのtwitter記事から転 https://twilog.org/hayano

山本太郎『病原体の撲滅は「行き過ぎた適応」 集団免疫の獲得を』

1990年長崎大学医学部卒業後、市立札幌病院救急部の医師として勤務。1995年長崎大学大学院博士課程修了・博士(医学)、1998年東京大学・博士(保健学)。アフリカ、ハイチなどで感染症対策に従事。1998年長崎大学熱帯医学研究所・助手、2000年京都大学医学研究科社会健康専攻国際保健学分野・助教授、2004年長崎大学熱帯医学研究所・助教授、2004-2007年外務省国際協力局勤務・課長補佐併任、2007年長崎大学熱帯医学研究所・国際保健学分野・主任・教授。

引用:wikipedia

次に、長崎大学教授 山本太郎氏の記事をご紹介します。この人の記事は分かりやすく、今後、目指すべき方向性を教えてくれます。彼の主張は、前回記事の福岡氏の主張にも似ていますが、海外、熱帯地方で活動した医学者らしい観点で記事が書かれています。

病原体も共生を目指す

この記事の前半で、山本教授が書かれている内容をまとめると、下記のとおりです。

  • 「文明は感染症のゆりかご」である。感染症は農耕が始まって人口が数十万人規模に増えた都市に定着した。ペストはねずみ、はしかは犬、天然痘は牛、インフルエンザはアヒルが持っていたウィルスが、人間社会に適応したもの。
  • 感染症に対抗するために大量の抗生物質を使うと耐性菌が生まれる可能性もある。病原体の撲滅を目指すのは、感染症に対する行き過ぎた適応だと考える。
  • 病原体も宿主である人間が死んでしまえば、自らも死ぬ。だから、潜伏区間が長期化し弱毒化する傾向がある。撲滅より共生を目指す方向が望ましい。

文明自体がウィルスを育ててきた。はしかが、犬由来のウィルスだとは知りませんでした。やはり、いろんな野生生物を食べるのは、リスク高いですね。生物には、それぞれ普段付き合っている様々なウィルスがいる訳なので。中国内陸部のレストランなんか、1階は動物園状態だもんなあ(笑)。怖い怖い。

ウィルスは、我々の皆殺しを望んでいない。適当なところで手を打ちたいと、こう思っている訳だ。じゃあ、こちらも手打ちといきますか。ヤクザ映画風にいうと、こんな感じですね(笑)。

流行が終わるためには

次に、筆者は、ウィルス感染症について下記のように説明しています。

  • 人口急増と、交通も発展は感染拡大をもたらす最大の要因。
  • 流行地域によって状況が異なるので、新型コロナウィルの真の致死率は明らかではない。世界に広がっていく中で濁毒化して、普通の風邪ウィルスのような、ありふれた病気となる可能性がある。
  • 一方、1918年〜1920年に流行したスペイン風のように、強毒化する可能性も否定できない。

一般的なウィルスは弱毒化するのが、通常のストーリーだ。しかし、問題は、強毒化することもあることだ。それがスペイン風邪だったんですね。自然界における変異がもたらす変化だから、当然、こういう可能性はあるでしょう。その瞬間に適性を得たものが残るのだから。

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スペイン風邪流行時、マスク姿で通学する東京の女学生たち。1920(大正9)年1月11日付の東京朝日新聞から

そして、つづいて山本氏の感染予防に関する考えが書かれています。

  • 感染予防策を取ることで、病気の広がる速度を遅くできる。患者の急増を防ぎ、医療機関の負担を軽減し、より多くの患者が救われる。
  • 病気の広がる速度を遅くすることで、病原体の弱毒効果も期待できる。新しい宿主を見つけにくい状態では、宿主を大事にする弱毒の病原体が有利になる。
  • 感染防止策はウィルスとの共生に至るまでのコストを大きく引き下げる。
  • 集団内で一定以上の割合の人が免疫を獲得すれば、流行は終わる。
  • 被害を最小限に抑えつつ、集団としての免疫を獲得することが、今、目指すべきものである。
  • 非常に気になるのは、発展途上国でのウィルスの広がりである。

前回の、福岡先生の記事にも、ウィルスの撲滅はできないと書いてありました。山本氏の記事では、同じ共生を目指す中で、医者の立場から感染拡大速度を遅くするメリットが書かれています。両者は矛盾するものではありません。

山本氏も前項の記事と同様に、発展途上国でのウィルスの広がりを懸念しています。どうも、ここ大きなポイントがありそうですね。

この記事を読んでよく理解できました。ウィルスとの共生を目指す中でも、予防対策に重要な意義があるのですね。そういえば、集団免疫体制を採用したスウェーデンでも、ソーシャルディスタンスを取り、感染を遅くする対策は取られていました。スウェーデン、最新データでは死者がほとんど出なくなっています。集団免疫体制がうまくいったのでしょうか。

この記事では、14世紀の欧州のペスト流行で、社会構造が封建者社会から、近代市民社会へ、加速的に構造が変わったことが書かれています。今度の新型コロナウィル感染拡大では、どのような変化が起こるのでしょうか。

僕らは、機敏にこの変化をとらえて、対応しなければなりません。

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まとめ

またまた、今日も長文になってしまいました。相変わらず文章が多くて、ビジアルでもなくて、申し訳ありません。しかし、今日の記事にも、とても重要な内容が含まれています。時間がある時にでも、読んでいただければと思います。

今回の記事では、新型コロナウィルス 対策における、政治、国際的な連帯の重要性と、集団免疫の獲得を目指す中での感染予防の重要性について書きました。2回記事を書いて、我々がどこに向かうべきか、明確になりました。

ロックダウンではウィルスは無くならない。ワクチンの開発は容易ではないし、一時的にワクチンができても、ウィルスが変異すれば、また感染が起こる。安全な社会に戻るまで、とても長い道のりになる可能性が高い。何だか、気が遠くなるような結論になってしまいました。

結論としては、世界中の感染が収束するまで、感染対策を取りつつ、ゆっくり集団免疫獲得に向かうしかない。

今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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