時の化石

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『クワバカ』を読みながら。120円のTシャツと、10億円でも売らないコーカサス。

どーも、ShinShaです。

『クワバカ』2回目の記事書きます。今回は、クワガタバトルとクワガタ飼育の世界、そして、コーカサスカブトムシに魅せられた人の物語です。今回は、世界最強のクワガタや、美しいクワガタの王様の写真もご紹介いたします。

1回目の記事を書いた後、女性の読者様から、メッセージを頂きましました。大変ありがたいメッセージです、
「男の人はクワガタ好きですね」、「大きいものを求めるのですね(笑)」、「息子がカブトムシを飼うと言ってきかず・・・最後は私が飼育しました」などなど。うむ。しかし、メッセージの中には、確実に「男というものは、どうしようない生き物ね」、という感情が含まれていますね(笑)。

もう1回だけ、クワガタのブログ書きますね。願わくば、この記事も多くの人に興味をもって頂ければ。。。

著者 中村計氏について

中村計さんの最新刊『クワバカ』-クワガタを愛しすぎちゃった男たち-。これは、タイトルが素晴らしすぎる。パラパラと数ページを立ち読みして、もう、買わずにはいられなかった。帯のキャッチコピーが、また、素晴らしい。「昆虫に人生をかけた男たちを描く。大人の課題図書」、「結婚を機に、昆虫やめちゃう人とかいるじゃないですか。僕はそれ許せなくて」。大人の課題図書とは、よく書いたもんですね(笑)。

中村/計 1973年生まれ。ノンフィクションライター。千葉県船橋市出身。同志社大学法学部政治学科卒業後、某スポーツ新聞社に入社するも七カ月で退職。以降、スポーツを中心に様々なノンフィクション作品を発表している。著書に、『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮社、第一八回ミズノスポーツライター賞最優秀賞)、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』(集英社、第三九回講談社ノンフィクション賞)、『金足農業、燃ゆ』(文藝春秋)など多数

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『クワバカ』-クワガタを愛しすぎちゃった男たち- 光文社新書

『クワバカ』-クワガタを愛しすぎちゃった男たち-

やっと、『クワバカ』を読了しました。やはり、予想どおり面白い本でした。今回の記事では、第2章から最終章までをご紹介いたします。クワガタ愛好家には、バトルマニア、飼育マニア。いろんな種類があるのですね、そして第4章では、コーカサスオオカブトムシに恋してインドネシアに移住した人の物語が紹介されています。クワガタやカブトムシは男を狂わせるのですね(笑)。

第2章 戦うために生まれてきた

第2章では、「クワガタ相撲」、「クワガタバトル」にハマった愛好家について書かれています。

クワガタバトルの世界

クワガタバトルの最盛期は、2000年代、子供たちの間で。カードデジタルゲーム甲虫王者ムシキング』が大ブームを起こした頃だった。この頃は全国で大会が開催され、賞金総額100万円という豪勢な大会もあったという。

「クワガタバトル」のルールはシンプルで、土俵中央でクワガタを向かい合わせ、相手を押し出したり投げ飛ばせば勝ちということです。ルールはシンプルだけど、実際戦っている時は音もすごくて、迫力満点らしい。YouTubeで動画を見てみたけど、結構残酷ですね。子供の頃は、こういうこと、いつもやってたなぁ(笑)。

現在は、クワガタバトルの世界も風前の灯火のようです。少数ながらロマンを求める人達が参加してしている。子供から60代まで、クワガタのバトルマニアが一定数いるのです。

現在の事実上の世界一を決めるクワガタバトルは、年に1回、東京で開催される『ドルクスチャンプ杯』です。最近の大会では、通称「バラワン」(フィリピンのバラワン島に生息するヒラタクワガタ)、と、通称「テイオウ」(同じくフィリピンのカタンドゥアネス島に生息するヒラタクワガタ)の2種のクワガタが二大勢力となっている。バラワンでは113.7ミリ、テイオウでは109.0ミリが、これまでの飼育昆虫の最大サイズです。国産の飼育したものではオオクワガタが91.7ミリ、採取したものではツシマヒラタクワガタの84ミリが、最大サイズ。マニアに言わせると、国産クワガタから見るとフィリピン産の2種は別次元の大きさだという。

国産クワガタバトルで世界に挑戦

筆者は、『ドルクスチャンプ杯』の80ミリ以下級に、国産クワガタでチャレンジする。大会のために石垣島に行き採取したヒラタクワガタ73.3ミリ、「平田君」と、沖縄本島で買い求めた飼育したサキシマクワガタ75.0ミリの二匹を用意する。試合の前には、調教して動きを活発にし、試合前夜には昆虫ゼリーに紹興酒を垂らして精をつけてやった。中には試合前日、ユンケルをなめさせる人もいるそうです(笑)。

そして、購入したサキシマクワガタは1回戦で敗退。採取した平田君は1回戦は、東南アジア産のセアカフタマタクワガタに勝利。国産昆虫で一矢を報いる。しかし、2回戦はジャワ産ダイオウヒラタクワガタに圧倒的な力の差で敗退。世界のクワガタは大きくて獰猛だった。面白いのは、相手が強いと分かると、クワガタはちゃんと逃げていく。自然は無駄なことはしないんだな。

そして、筆者は、クワガタのアゴの造形美は、武器であるからだと思い至るのです。

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世界最強「バラワン」ヒラタクワガタ https://www.amazon.co.jp/プロショップカブト-パラワンオオヒラタクワガタ♂90mmUPペア/dp/B07GQKHQD9 から転載

第3章 血の力

第3章で、筆者はクワガタの飼育家、ブリーダーの世界に入っていく。現在、オオクワガタブリーダーの人口は4万人とも10万人とも言われている。年齢としては40代50代の人が中心だ。そんなにいるのですね。

ブリーダーは、1ミリでも大きい個体を求めて、飼育を続けてきた。その結果、オオクワガタの最大サイズは91.7ミリまで大きくなった。かつては、自然界では70ミリ越えのサイズは採れないと言われていた。最近では、プロポーション、かっこ良さでクワガタを点数化して競う方法も行われているそうです。

オオクワガタブリードの世界では、三大血統とよばれるブランドがある。能勢YG血統、川西血統、久留米血統の三つ。これらの血統を掛け合わせて、血を濃くして、クワガタを大型化していく。血が濃くなりすぎると、異常な個体が生まれるという。あたり前だ。いわゆる近親交配だ。これは種の保存則に反している。

僕には、吐き気がする世界です。しかし、ここまで書いて、僕らが飼っているペットはどうなのかと、ふと考えた。きっと、似たようなことをしているはずだ。なんだか、とてもいやな気分になってきた。

そして、少し前に作られた『キング・コーン』という映画の話を思い出した。アメリカでは、遺伝子組み換えした害虫がつかないトウモロコシの栽培が盛んだ。人間には食べられないトウモロコシで、ほとんど、種を撒くだけで収穫できる。これが、穀物のコストを大きく下げた。

そのトウモロコシを食べた牛が、マクドナルドのハンバーガーを1ドルにした。豚も鶏もこのトウモロコシを食べて育つ。コカコーラなどの清涼飲料の甘味料もトウモロコシから出来たコーンスターチだ。今では、アメリカ人の細胞の炭素のほとんどが、このトウモロコシ由来なのだ。だから、『キング・コーン』。まあ、本当に人間のやることは似たようなものだ。

第4章 コーカサスに恋して

第4章では、世界の魅力的なカブトムシ、クワガタの話が登場します。そして、コーカサスカブトムシに越した男、吉川将彦さんが登場します。ちょっと、ほっとした。正直いうと、前の章の、ブリーダーの話では、かなり嫌悪感を感じていました。

『クワガタの王様』 エラフスホソアカクワガタ

前回のブログで登場した、むし社社長の藤田氏は、エラフスホソアカクワガタと出会ってから世界の昆虫に目覚めた。
エラフスホソアカクワガタは体と同じくらいの長さのあごをもち、グリーンのオーロラをまとったような荘厳な色彩を帯びていて、『クワガタの王様』といわれている。このクワガタはインドネシアに生息する。僕はこのクワガタを初めて見ました。熱帯には美しいクワガタがいるのですね。工芸品のようにすばらしいですね。

その後、むし社では、毎年、海外遠征を企画するようになる。むし社によると、日本の昆虫文化は特殊なのだという。日本には昆虫を飼育する文化があるが、世界でも昆虫生体の輸入を認めている国は日本だけだという、これは、外国人には理解できないらしい。

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『クワガタの王様』 エラフスホソアカクワガタ 転載: https://ja.wikipedia.org/wiki/エラフスホソアカクワガタ

インドネシアは世界の昆虫王国

世界には100万種以上の昆虫が存在する。インドネシアにはおよそ30万種の昆虫がいるといわれる。 地域によって栄えた甲虫の種類が異なり、南米はカブトムシが主流、そして、東南アジアはクワガタが優勢。したがって、インドネシアは世界一のクワガタ王国ということになる。 特にスマトラ島産はサイズが大きく、長いクワガタも、幅が広いクワガタ、美しいクワガタもいる。

そして、筆者は、むし社のスマトラ島昆虫採取ツアーで、インドネシア在住の吉川将彦さんと出会う。

運命のコーカサス

ここからは、インドネシア昆虫センターの吉川雅彦さんの物語となります。吉川さんはインドネシアの昆虫では、コーカサスオオカブトが一番好きだという。

この人は、小学校の時、昆虫に目覚めた。お小遣いをためて、昆虫図鑑を買い、絵を描くようになった。大学に入ると昆虫のことはすかり忘れ、卒業後は会計事務所に勤めるようになった。ある日、たまたま入ったデパートで、世界の昆虫標本が展示されていた。そこには、子供の頃好きだった昆虫「ハナムグリ」の標本があった。彼はそれを衝動買いしてしまう。それ以来、彼は昆虫標本を買い漁るようになっていく。

そして、会計事務所に勤務して9年後に、本屋でみかけた雑誌に載っていたインドネシア昆虫採取ツアーに参加する。帰りの飛行機に乗る頃には、「ここが俺の住みかなんだ」と、決心を固める。

そして、帰国するとすぐに会社を辞め、3ヶ月後、恋人とも別れて、インドネシアに旅立つ。インドネシアでは語学校に通いながら、昆虫キーホルダーを作ってかろうじて生きていく。勢いで、インドネシアに移ったが。進むことも退くこともできない毎日が続いていく。

そんな日々が続く中、ある日、彼はコーカスオオカブトムシの13cmの標本を手に入れる。彼はその日、標本を飽かずにながめ、この出会いが運命だと思った。この時、あらゆる迷いが消えていった。

「その時、思ったんです。おれはインドネシアの昆虫で生きていくんだと。」

それから、ほどなくして、ネット上に『インドネシア昆虫センター』という標本販売のネットショップをオープンさせる。会社の顔となる13.1cmのコーカスオオカブトを、ネットに載せることで、人が寄ってきてくれると考えた。

その後、彼のビジネスは成功して、今では約20人が会社で働いている。

気になって、『インドネシア昆虫センター』でググりました。ホームページありました!そして、そのコーカサスの写真も掲載されていました。なんだか、すごく嬉しくなった。やっぱり、すごく大きい、コーカサスです。

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10億円でも売らない 体長13.1cmの巨大コーカサスオオカブト 引用:『インドネシア昆虫センター』http://iinsectc.com

十億円でも売れない標本

じつは、この体長13.1cmの巨大コーカサスオオカブトは、世界で二番目のサイズだという。世界で一番大きな13.3cmのコーカサスは、この本に登場する、むし社の飯島氏が所有しています。

吉川氏は、虫以外はケチを徹底している。120円で買ったTシャツを10年以上着ている。しかし、昆虫標本にはこれまで数千万円のお金を投じたいう。これが、彼の幸せのスタイルだ。そして、現在の彼のゴールは「インドネシアの昆虫大図鑑」を作ることだという。

「体長13.1cmの巨大コーカサスオオカブトは10億円でも売らない」と、彼は語っている。本当に良い標本はコレクターの精神的に支柱だという。

『自由になれたのはコーカサスのお陰なんですよ。そのきっかけをつくってくれたんで、いくら積まれたって、とてもじゃないけど売れないです』

あとがき

この本の取材を通じて、筆者はクワガタを愛しすぎるあまり、人生から転げ落ちてしまった人の話をたくさん聞いたという。あの人も趣味で留めていればよかったのにという、哀れみの言葉も数多く聞いた。

作者は、この本『クワバカ 』をこう結んでいる。

人の一生において、他人に話す価値のある出来事など、ごくわずかだ。しかし、私が彼らについて書いたことは、彼らの思い出の中の、何百分の一、何千分の一にすぎない。彼らの中には、まだまだ、いくらでも「話」が眠っている。

彼らは虫と関わっている時、人生に倦(う)むことなど皆無だったはずだ。それがリスクと引き換えに得た最大の報酬である

幸福とは。。。。

それは、好きという業火(ごうか)に、一度でもいいから、身を投じたか、投じなかったか、である。

素晴らしいエピローグでした。上の文章に加えて、書く言葉はありません。余韻にひたりつつ、この記事を閉じたいと思います。

今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
『クワバカ』 素晴らしかった!
今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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