どーも、ShinShaです。
今回のブログでは磯田道史著『感染症の日本史』をご紹介します。江戸時代の人々は「給付金」も「出社制限」も「ソーシャル・ディスタンス」も考案していた。
新型コロナウイルスの感染被害がある、今だからこそ、歴史を見つめ直す意義があると思います。昔の日本人の知恵はすばらしいです。しかし、感染症の歴史というのは、読めば読むほど、すさまじいなぁ。
本書を読むきっかけ
いつものように、本屋さんにふらふらと出かけました。そこで、新書のコーナをみていると、この本が目にとまりました。これは、少し前に読んだ『龍馬史』を書いた古文書オタクの教授の本ではないか。これは読まなければならないと思ったのです。
この人の本は、古文書を読んで、史実から論理を積み上げてくるので説得力があるのです。また、この人の書く本には、普通の市民から見た歴史感があります。それが新鮮なんですね。
著者プロフィール
磯田さんのプロフィールは下のとおりです。
磯田さんの本を読むのは2回目です。しばらく前に、『龍馬史』を読ました。この本は、龍馬の手紙、史料に基づいて、ノンフィクションの坂本龍馬の実像を描き、暗殺した犯人を特定しています。さすが、古文書オタクの磯田さんの著作だけあって、非常に説得力がありました。
磯田道史(いそだ みちふみ) 1970年、岡山県生まれの研究者。茨城大学、静岡文化芸術大学などを経て、国際日本文化研究センター准教授。専攻は日本近世・近代史・日本社会経済史。 実家は備中鴨方藩重臣の家系で、古文書が豊富にあった。高校生のとき実家と岡山県立図書館の古文書を解読している。京都府立大学文学部史学科、慶應義塾大学文学部史学科を経て、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。「近世大名家臣団の社会構造」で史学博士号取得。 2003年刊行の『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』が第2回新潮ドキュメント賞を受賞し、2010年森田芳光監督により『武士の家計簿』のタイトルで映画化し大ヒット。2015年には『天災から日本史を読みなおす』で第63回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。その他代表作に『日本史の内幕』などがあり、多くの新書がヒット作となっている。
本書の紹介
一級の歴史家が、平安の史書、江戸の随筆、百年前の政治家や文豪の日記などから、新たな視点で、感染症と対峙してきた日本人の知恵に光をあてる。 新型ウイルスに対するワクチン、治療薬も確立していない今だからこそ、歴史を見つめ直す必要がある。
「給付金」も「出社制限」も「ソーシャル・ディスタンス」もすでにあった! 今こそ歴史の知恵が必要だ!
【目次より】 第一章 人類史上最大の脅威
第二章 日本史のなかの感染症――世界一の「衛生観念」のルーツ
第三章 江戸のパンデミックを読み解く
第四章 はしかが歴史を動かした
第五章 感染の波は何度も襲来する ――スペイン風邪百年目の教訓
第六章 患者史のすすめ――京都女学生の「感染日記」
第七章 皇室も宰相も襲われた
第八章 文学者たちのスペイン風邪
第九章 歴史人口学は「命」の学問 ――わが師・速水融のことども
引用:文芸春秋BOOKS https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166612796
感染症の歴史
ヒト型コロナウィルス が初めて歴史に登場したのは、紀元前8000年前。人間が定住化し、牧畜を始めた時期に重なります。ヒトと動物の密接な接触から感染症が生まれた。コロナウィルス はインフルエンザと同じ、「人獣共通感染症」、動物で流行している感染症がヒトに流行するようになったものです。
人間は定住し、農耕技術が向上すると人口が増加し、都市が誕生した。都市が誕生した後には、結核、コレラ、天然痘、マラリア、ペスト、インフルエンザなどの感染症が大流行するようになった。
「牧畜」、「人口増加」、「都市化」が、感染症のキーワードです。コロナウィルスって、紀元前8000年前から人間を脅かしてきたんですね。
日本で発生した恐るべき感染症
この本には恐ろしい歴史的事実がいくつも書いてあります。医療技術の発達していなかった、昔には、想像を超える大きな感染症被害が出ていたのです。
天平時代は天然痘の大流行期であり、百万人〜百五十万人、当時の人口の役3割が死亡した。この疫病を鎮めるために奈良の大仏が建立された。
大航海時代のヨーロッパから日本に伝来したのは、火縄銃、キリスト教だけではなかった。性感染症もヨーロッパからもたらされた。びっくりしたのは、「江戸時代前期の日本人の遺骨を調べると。男性の3分の2、女性の3分の1に梅毒の痕跡が見られる」という記述です。この猛烈な梅毒の蔓延から生き残った者の子孫が、今の日本人です。
さらに、ペリー来航時には、ペストが江戸にもたらされ、26万人もの人が死んだと言われる。これが、攘夷思想、つまり外国との通商を断ち、鎖国しようとする思想が高まるきっかけとなった。
この本で、史実を読めば読むほど、びっくりしてしまいます。
すでに行われていた給付金、医療支援
この本を読むと江戸時代にも、流行性感冒が大流行したことが書かれてます。筆者は、大阪の風聞集『至享文記』、『南総里見八犬伝』の作者、滝沢馬琴の残した文書などを調べます。そこには、営業自粛、給付金の支給や、薬を無料で人々に配る医療支援が行われたことが書いてありました。
給付金は、最初はお金で支給されたようですが、2回目以降は米が支給された。男は金をもらうと、酒を飲んでしまうから、2回目以降は現物支給となったのではないかと。。。いつの時代も、男はたいして変わっていない(汗)。
日本ではその後、明治時代には麻疹(はしか)、大正時代にスペイン風邪が大流行した。スペイン風邪では第一波〜第三派による大流行により、46万人の人々が亡くなった。
こういった感染症の歴史から、日本人には世界で最も高い衛生管理意識が根付き、今回の新型コロナウィルス の感染防止にも役立った。
本書の感想
日本の歴史では、火山噴火、地震、津波災害等が起き、その都度、大きな被害が発生しました。しかし、本書を読むと、日本でも最大の脅威は、感染症であることが明瞭に分かります。現代に生きる我々は、医療の発達の恩恵で、そういう感覚を無くしていることに気付かされます。
江戸時代には、感染症対策として、「給付金」、「営業制限」、「ソーシャル・ディスタンス」対策も行われいたことを知り、当時の日本の文化が、非常に優れていたことに感動しました。江戸時代が、教育、文化、衛生管理など、世界に誇るべき水準であったことを知ることができました。 筆者は、米沢藩の名君、上杉鷹山の優れた疱瘡感染症対策と患者・領民支援策について触れ、「我々がやるべきことについては、既に歴史が答えを出してことが多いのではないか」と書いています。非常に説得力がある言葉だと感じました。
世界で拡大する新型コロナウィルス の被害
このブログを書いている2020年10月末には、日本の新型コロナウィルスは、まだら模様です。冬に向かって感染者数が増加傾向を見せています。世界の新型コロナウィルス 感染者は、増加し続けて4,118万人となり、死者は113万人にも及んでいます。
夏に収束気味であったヨーロッパ諸国では、このところ、感染者数、死亡者数が急増し始め、痛ましい状況となってきています。また、アメリカ合衆国では、いっこうに感染者数、死亡者数も収まる様子が見られません。
日本は内閣が変わって、ようやくPCR検査実施の重要性を認めました。今までの厚労省の姿勢は何だったのか。このまま、日本が「ファクターX」の恩恵に預かっていけるのか、誰にも分かりません。これからの対策充実に期待したいですが、いつもながら、対応のスピードが遅すぎる。もう、あきらめしかないです。
世界の新型コロナウィルス被害が、今後どうなっていくのか、とても心配です。分子生物学者、福岡伸一さんは、「ワクチンには期待できない。自然免疫の獲得を待つしかない。」と書いておられました。百年前のスペイン風の流行から推測すると、収束までまだ2年間かかるかもしれません。
自然免疫の獲得を、新型コロナウィルス への対策方針としてきた、スウェーデンは、ロックダウン対策は行わず、ビジネスも止めてません。感染発生以来、新規感染者数が、1日数百人〜千人の範囲で推移していますが、2020年7月以降の死者数は1日数人レベルとなりました。(スェーデンの人口は日本の12分の1のおよそ1000万人)かなりの数の患者が出ても死者を出さない医療体制と対策モデルは、模範にすべきです。医療対策がしっかりしているから、取れる対策とも言えますが。かかっても、重症化しないならば、コロナウィルス は怖くない。
あとがき
本書を読んで江戸時代の人々の知恵に感動し、感染症の本当の恐ろしさを知りました。本書は、おすすめのすばらしい本です。
しかし、繰り返しになりますが、感染症の歴史というのは、読めば読むほどすさまじいです。人口の3割とか、半分が犠牲になっています。
医療が進んだ現代に、生まれてきたことを感謝しなければなりませんね。新型コロナウィルスは目の前にありますが、少なくとも、天然痘も結核も麻疹(はしか)も脅威ではなくなっています。
江戸時代に、現在と同様の感染症対策が、すでに取られていたことを知ったことは驚きでした。先人の知恵に感動しました。江戸というのは、すごい時代だな。
磯田さんは、古文書を読んでいると「江戸時代の我々より後退していないか」と鷹山に叱られているような気がします、と書いています。危機だからこそ、しっかり政治を注視していかなればならないと考えます。
今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
ShinSha
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