時の化石

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福岡伸一著『できそこないの男たち』を読んで やっぱそうなんだな 認めるしかないよなぁ

どーもSinShaです。

今回の記事は、福岡伸一著『できそこないの男たち』のご紹介です。「草食系男子の生き方は至極当然。肉食系女子の生態にもうなずける。」 この本の帯の文章がとても気になります。

帯の言葉はどういう意味なんでしょうか?興味がわいてきますね。
しかし、この歳になって分かります。やっぱり、男はできそこないなのだ。若い男性諸君も、早く悟っておいた方が良いと思うよ。

著者のご紹介

最近、福岡伸一さんの本の記事が多くなっています。きっかけは『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線- 』のウィルスに関する記事を読んでからです。

それ以降、『動的平衡』、『生物と無生物のあいだ』を読み、ブログでご紹介してきました。福岡伸一さん、文章が抜群にうまいですね。それと、新型コロナ感染被害により、この分野の関心が高まってきたこともあります。

彼の本を読んで、ウィルスに関する様々な情報、PCRの仕組みなど、勉強できたことはとても有意義でした。

福岡伸一

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。

引用:https://dot.asahi.com/columnist/profile/?author_id=hukuoka_s

以前の記事のリンクを下に貼りました。この記事には、人間とウィルスの驚愕の関係が書かれています。興味がある方は、ぜひクリックして下さいね。

www.fossiloftime.com

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福岡伸一著『できそこないの男たち』 光文社新書

福岡伸一著『できそこないの男たち』を読む

精子の発見

1677年、アマチュアの発明家レーウェンフックの作った顕微鏡を使って、初めて精子が発見された。レーウェンフックは、その後も精子の観察を続け、運動の様子、頭部の形状等スケッチを続け、精子が生殖に関係していることを予想した。

1677年8月のことだった。
レーウェンフックのもとにライデン大学医学生ハムが白い液体を入れた小さなガラス瓶を持って息せき切ってやってきた。
おそらくこの頃までにレーウェンフックの名は近在にはかなり知らたものになっていたのだろう。

現在の顕微鏡は接眼レンズ、対物レンズの2枚のレンズを使って、倍率の掛け算で、拡大する仕組みとなっています。レーウェンフックという人は、たった一つのレンズを使って倍率300倍の顕微鏡を作り上げたのです。

レーウェンフックは顕微鏡の作り方を、誰にも教えなかった。今日でも、どうやって彼が高性能の顕微鏡を作ったか、謎となっています。下に写真がありますが、確かに顕微鏡には見えないですね。不思議な機械です。

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初期レーウェンフック型の顕微鏡(複製)
Jeroen Rouwkema, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3657142による

男の秘密を覗いた女

次に、本書ではオスとメスの染色体の違いを発見した研究者の話が書かれています。

時は流れて1905年、小さな女子大学ブリンマーカレッジの補助教員ネッティ・スティーブンズという研究者が「男の秘密」を発見した。この大学は、津田塾大学創始者津田梅子の留学先の大学です。

助教員のネッティは、昼間は学生達の実験の監督、後片付け、試験の採点などをしながら、わずかな研究費で自らの研究を続けた。彼女は、チャイロコメノゴミムシダマシという昆虫を飼育して、苦労して検体サンプルを作り、その細胞を顕微鏡で観察を続けた。

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ネッティ・スティーブンズ
By The Incubator (courtesy of Carnegie Institution of Washington) - http://incubator.rockefeller.edu/wp-content/uploads/2010/05/NettieStevens.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15219254

彼女は、メスの細胞には20個の染色体があり、オスの細胞には19個の染色と1個の小さい染色体が、精子には20個の染色体と19個の染色と1個の小さい染色体の2種の組合せがあることを発見した。そして、彼女は241のスケッチを載せた論文『精子形成に関する研究』を発表した。

大きな染色体の替わりに、小さなsの染色体が入っているのがオスだった。

この小さな染色体がY染色体。これこそが男の秘密だったのです。哺乳類、植物の一部は、Y染色体上にある雄性化因子(哺乳類ではSRY遺伝子)によって、Y染色体を持つ個体はオスへと変わっていくのです。

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ネッティの描いたスケッチの一部 引用:Nettie Maria Stevens, Public domain, via Wikimedia Commons

アリマキの世界

アリマキは別名アブラムシ。そうそう、どこにもいる植物にびっしりくっついている、あの虫です。 アリマキの生態は驚きに満ちていますす。

アリマキの世界は基本的にメスしかいない。アリマキのメスはメスの子供を生み、その子供も成長してメスを生む。アリマキはメスだけで世代を維ぎ、おそろしい繁殖力を持っています。

しかし、アリマキは年に1回だけ、この仕組みを変えるのです。冬の前だけの時期に。

ホルモンのバランスが変わって、遺伝子の一部を捨てたできそこないのメスがオスに変わるのです。

生まれてきたオスは、メスに比べてやせぎすで貧相に見える。オスは落ち着きなく歩き回り、冬がくるまでに、できるだけ多くのメスと交尾して死んでいく。

交尾によって生まれるのは、やはりメスです。新しいメスの大半は、冬に死んでいきますが、稀に生き残る強い個体が現れる。その万が一の可能性を作ることが、オスの役目なんですね。

メスは縦糸で太い命を継ないでいく。しかしメスだけの生殖では、遺伝子のコピーが作られるだけ。オスは細い横糸となって、あっちのメスと、こっちのメスの命をつなぐ。そうすることで、生命に多様性が生まれるのです。

毎回書いていますが、つくづく生命の仕組みとはよく出来ていますね。

福岡先生は、はっきり書いています。オスの価値はわずかしないと。
オスは何のために生まれてきたか?それは、母の遺伝子を他の娘に届ける「使い走り」をするためです。これはアリマキでもヒトでも同じこと。

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アリマキ

"Aphids on a Family Trip" by Lennart Tange is licensed under CC BY 2.0

できそこないの男たち (光文社新書)

できそこないの男たち (光文社新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

あとがき

この本も、大変勉強になりましたね。アリマキの生態から、男の存在意義をはっきりと突きつけられました。

そうか、僕ら男は遺伝子を運ぶ「使い走り」で、しかも、できそこないだったんだ(笑)。まあ、最近うすうす気付いていたけどね。

でも、この歳になると、そういうことを体感しますね。圧倒的に、女性の生命力の方が強いですね。男は寿命も短いしね。

福岡先生の本を読むと、地道な研究者の観察によって、数多くの新しい科学的な発見が生まれたことを教えられます。アマチュアの顕微鏡マニュアの発見、補助教員の女性のY染色体の発見。努力する人には、どこにいても等しくチャンスの光があたっている。

自然科学では、眼で見る観察が基本ですね。見えないものを見るという研究分野では、AIなんか役に立ちそうにないですね。

どうでもいいことだけど、中島みゆきさんの名曲『糸』の歌詞は、縦横が逆になっている気がします。正しくは「縦の糸がわたし〜♪」ですね(笑)。

今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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