どーも、Shinshaです。
今回は連載記事『古事記を読もう』第6回目の記事。主人公はスサノヲからオオクニヌシへ。これからはオオクニヌシの成長の物語となります。どんな冒険が展開するのか楽しみですね。
今回の記事では、昔々読んだ因幡の白兎(しろうさぎ)の物語も出てきます。そしてオオクニヌシの新しい物語もスタートします。
古事記の面白さ
古事記は、およそ1500年前に書かれた現存する日本最古の歴史書です。語り言葉を生かした漢文体で書かれています。日本書紀は、古事記ができてから8年後に、本格的な歴史書を作ろうという動きの中で作られた正史です。中国に習って漢文体で書かれています。
古事記の魅力は、正史である日本書紀には書いてないヤマトに生まれた王権によって日本列島が統一される以前の物語が書いてあることです。ヤマト王権に、逆らい敗れた者たちの悲劇のドラマが生き生きと書かれているのです。これこそ、大河小説ではないか。
しかも、全てが空想の物語ではなく、関連する遺跡が発見されていたり、縄文文化とも関わりがあるのです。古事記とは何なのか。何が書かれているのか? 大きな興味を感じます。
本ブログで古事記をご紹介する方法について
このブログでは、テキストとして、青空文庫『古事記』現代語訳 武田祐吉を使用します。この本は初版が1956年と古いので、副読本として三浦佑之著『読み解き古事記 神話編』朝日新聞出版を使用します。副読本を使って、現代的な解釈を補ってもらうことにします。
ブログ記事の範囲は、個人的に興味がある、古事記の上巻、神話部分と致します。全文を読むのは、大変な労力となりますので、独断と偏見で、「重要だ」、「面白い」と判断した部分のテキストを引用して、その解釈と感想について記事を書いていくことにします。また、できるだけ、インターネットの特長であるビジュアルな記事としたいと思います。
少しずつ、古事記の勉強を進めていきたいと思います。興味のある方は、ぜひ、一緒にを勉強していきませんか。
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オオクニヌシの冒険
前回は、スサノヲのヤマタノヲロチ退治の物語でした。スサノヲは知恵と武力で、出雲の国を苦しめていたヲロチを見事に退治して、めでたし、めでたしという結末でした。
ここからオオクニヌシのストリーが展開していきます。生まれて死ぬまでの一代記が語られるのは、古事記では大国主とヤマトタケルの二人しかいません。オオクニヌシは、古事記の象徴的な人物なのです。
今後の物語の展開について、副読本から引用します。
古事記の系譜では、スサノヲから数えて7代目として生まれたのがオホクニヌシ(大国主神)だが、オホクニヌシには、オホナムヂ(大穴牟遅神)、アシハラノシコヲ(芦原色許男)、ヤチホコ(八千矛)、ウツシクニタマと(宇都志国玉)いう別名があった。
その五つの名のうちの中核となる名前が、オホナムヂであり、そのオホナムヂがさまざまな試練を受け、それを克服して地上の王オホクニヌシとして君臨する流れが中心をなしている。
身に受けた苦難を自らの力で乗り越えて立派な男になるという成長物語は、少年を主人公とした物語の典型的な様式だと言って良い。
そのようにしてでき上がった地上世界を眺めていた高天原の神アマテラスが、地上はなんてすばらしい国だ、これは自分の子どもが支配すべきところだと言い出し、次々に遠征軍を派遣して地上を奪ってしまうのが、いわゆる「国譲り神話」である。
国譲りという言葉には、ある種の誤魔化しがあって、内実はれっきとした侵略であり制圧である。
今後の展開はこんな感じになるんですね。少し前の当ブログの記事、「6万年前から世界中を旅した使い走りの男たち 福岡伸一著『できそこないの男たち』を読みながら」の中で、古事記の物語は大陸からやってきた弥生人が、先住民である縄文人を侵略していく歴史だと書きましたが、今後はそのような展開となっていくようですね。
まずは、少年オホナムヂ(大穴牟遅神)=オオクニヌシの、冒険の物語を楽しみましょう。
Flow in edgewise - Flow in edgewise撮影, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11314796による
因幡の白兎
[テキスト]
この大国主の命の兄弟は、沢山おいでになりました。しかし国は皆大国主の命にお讓り申しました。
お讓り申し上げたわけは、その大勢の神が皆因幡のヤガミ姫と結婚しようという心があつて、一緒に因幡に行きました。時に大国主の命に袋を負わせ從者として連れて行きました。
そしてケタの埼に行きました時に裸になつた兎が伏しておました。
大勢の神がその兎に言いましたには、「お前はこの海水を浴びて風の吹くのに當つて高山の尾上に寢ているとよい」と言いました。
それでこの兎が大勢の神の教えた通りにして寢ておりました。
▲ Kakuzō Fujiyama - このファイルは以下の画像から切り出されたものです: The Japanese Fairy Book.djvu, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=38560745による
大国主には大変多くの兄神、弟神がいました。しかし、最後にはすべての国を大国主が譲り受けることになりました。その訳は。。。。(ここではその理由は語られません)
兄神たちには、因幡の国(今の鳥取県)のヤガミ姫と結構したいと思っていて、荷物を持たせてオオクニヌシを従者として連れて行ったのです。
気多の岬に行くと、皮を剥がれたウサギが倒れていた。大勢の兄神たちは「海水を浴びて風に吹かれて山の尾根に寝ていろ」と、ウサギに嘘を教えて、傷をさらに悪化させたのです。
話は脱線しますが、鳥取県には白兎(はくと)海岸、白兎神社があるんですね。白兎神社は創建は不明。秀吉の鳥取城攻めの際に焼失し、慶長年間に再建されました。「日本医療発祥の地」、「日本最後の恋物語の地」。めちゃくちゃ濃いコピーだなぁ(笑)。
「古事記」の一節「因幡の白兎」に登場する白兎神が祀られる事から、日本医療発祥、また大国主命と八上姫との縁を取りもたれた日本最古の恋物語の地として知られています。
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[テキスト]
ところがその海水の乾くままに身の皮がことごとく風に吹き裂かれたから痛んで泣き伏しておりますと、最後に來た大国主の命がその兎を見て、「何だつて泣き伏しているのですか」とお尋ねになつたので、兎が申しますよう、「わたくしは 隱岐の島にいてこの国に渡りたいと思つていましたけれども渡るすべがございませんでしたから、海の鰐を欺いて言いましたのは、わたしはあなたとどちらが一族が多いか競べて見ましよう。あなたは一族をことごとく連れて来てこの島からケタの埼まで皆並んで伏していらつしやい。」
わたしはその上を踏んで走りながら勘定をして、わたしの一族とどちらが多いかということを知りましようと言いましたから、欺かれて並んで伏している時に、わたくしはその上を踏んで渡つて来て、今土におりようとする時に、お前はわたしに 欺されたと言うか言わない時に、一番端に伏していた 鰐がわたくしを捕えてすつかり着物を剥いでしまいました。
それで困つて泣いて悲しんでおりましたところ、先においでになつた大勢の神樣が、海水を浴びて風に当たって寢ておれとお教えになりましたからその教えの通りにしましたところすつかり 身体をこわしました」と申しました。
そこで大国主の命は、その兎にお教え遊ばされるには、「いそいであの水門に往つて、水で身体を洗つてその水門の蒲の花粉を取つて、敷き散らしてその上に 転がったなら、お前の身はもとの肌のようにきつと治るだろう」とお教えになりました。
依つて教えた通りにしましたから、その身はもとの通りになりました。
これが因幡の白兎というものです。
今では兎神といつております。
そこで兎が喜んで大国主の 命に申しましたことには、「あの大勢の神はきつとヤガミ姫を得られないでしよう。袋を背負つておられても、きつとあなたが得るでしよう」と申しました。
兄神たちの言うとおりにしたウサギは、海水が乾いてくると身体の皮が風に吹かれて裂け、痛くて苦しんで泣いていた。一番最後に来たオオクニヌシが訳を尋ねると、何故こんなことになったか語り始めました。
オキの島に住んでいたウサギは、こちらに渡りたいと思っていた。「私と君の一族のどちらの仲間が多いか数えてみないか?」と、ワニを騙して仲間をすべて集めさせ、気多の岬まで並べさせた。
ウサギは数を数えながらワニの背中をぴょんぴょん飛びながら進んでいった。あと少しで陸に渡ろうとする時、「君たちはだまされたんだよ」と言い終わるやいなや、端にいるワニにかまれ、皮を剥がれてしまったのです。
ここでいうオキノ島とは、沖にある島という意味。隠岐島であるという説もあります。下のイラストではワニが書かれていますが、古代の日本語ではサメ(シュモクザメ)を意味すします。
頭の良いウサギですね。同じようなのウサギとワニ(カメ、スッポン、シャチ)などの物語は、インドネシアから北東アジア、アメリカ大陸まで広く伝搬しているようです。Y染色体の移動から考えると、これは旧石器人の中で伝わった物語なのかもしれませんね。
オオクニヌシは「水で身体を洗って、ガマの花粉を地面に撒いてその上を転がって身体に塗りなさい。そうすれば元の肌に戻る。」と教えた。言ったとおりしたウサギの傷は元どおりになりました。オオクニヌシは古代の正しい治療法を教えてあげたのです。
ウサギは兎神(うさぎがみ)だったのですね。兎神は「ヤガミ姫と結婚するのは、兄神たちではなくてあなたでしょう」と伝えます。どうも、兎神は、やって来た兄神とオオクニヌシを試していたんですね。
▲ Kakuzō Fujiyama - このファイルは以下の画像から切り出されたものです: The Japanese Fairy Book.djvu, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=38560743による
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オオクニヌシの試練
[テキスト]
兎の言つた通り、ヤガミ姫は大勢の神に答えて「わたくしはあなたたちの言う事は聞きません。大国主の命と結婚しようと思います」と言いました。
そこで大勢の神が怒つて、大国主の命を殺そうと相談して伯伎(ははき)の国の手間(てま)山本に行つて言いますには、「この山には赤い猪 がいる。わたしたちが追い下すからお前が待ちうけて捕えろ。そうしないと、きつとお前を殺してしまう」と言つて、 猪に似ている大きな石を火で焼いて転がし落しました。
そこで追い下して取ろうとする時に、その石に燒きつかれて死んでしまいました。
そこで母の神が泣き悲しんで、天に上つて行つてカムムスビの神のもとに参りましたので、 赤貝姫と蛤姫とを遣つて生き還らしめなさいました。
それで赤貝姫が 汁を搾り集め、蛤貝姫がこれを受けて母の乳汁として塗りましたから、りつぱな男になつて 出歩くようになりました。
ウサギの言ったとおり、ヤガミ姫はオオクニヌシと結婚したいと話します。なんとか手に入れたいと思っていたヤガミ姫を、従者のオオクニヌシに取られて、兄神たちは激怒します。
兄神たちは相談して、オオクニヌシにこの山にいる赤い猪を捕まえないと、お前を殺すと脅したのです。そして、猪に似た形の石を真っ赤に焼いて転がして落とした。オオクニヌシはこの石に焼かれて死んでしまったのです。
この狩の方法では、通常は下から上に獣を追うそうです。猪が坂を下って走ってきたら危ないですよね。しかし、なんとひどい奴らなのか。でもヒーローはすぐに復活したのです。
母神は悲しみ、高天の原のカミムスヒに懇願します。カミムスヒは 赤貝姫と蛤姫を派遣して、オオクニヌシを生き返らせます。汁を搾って集めて、母の乳汁として塗ると、オオクニヌシは復活して、立派な男にもどって遊び歩いた。
また、出ました。困った時のカムムスヒ神(神産巣日神)。前回も登場しましたね。副読本では赤貝姫と蛤姫はカムムスヒの娘たちであると書かれています。
▲ nnh - selfmade by MS-Paint, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=631071による
三浦佑之著『読み解き古事記 神話編』は、古事記研究の第一人者の書いた本です。これまでの研究成果を踏まえて分かりやすく、現代的に古事記のすべてを解説してくれます。オススメの素晴らしい本です。ぜひ。
- 作者:三浦 佑之
- 発売日: 2020/10/13
- メディア: 新書
あとがき
「因幡の白兎」ですが、確か保育園の時、絵本で習ったような記憶があります。当時の話では「うそをつくとバチが当たる」というのような結末だったような。。。記憶違いでしょうか。
因幡の白兎の後の、オオクニヌシの試練の物語は今回初めて知りました。どうやら、ここから先には、僕らがあまり知らないオオクニヌシの興味深い物語が始まるようです。面白くなりそうです。乞うご期待。
今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
ShinSha
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