時の化石

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連載記事『日本最古の歴史小説 古事記を読もう』(その11)いよいよオオクニヌシ VS アマテラスの戦いが始まった 

どーも、ShinShaです。

今回は連載記事『古事記を読もう』第11回の記事。いよいよアマテラスによる地上侵略が始まります。迎え撃つオオクニシの運命はどうなっていくのか。今後が楽しみですね。

オオクニヌシは老かいなテクニックを使って、二度までも天からやってくる敵将をみごとに丸め込んでしまった。

今回は、天の波々矢(アマノハハヤ)というすごい武器も登場しますよ。

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古事記の面白さ

古事記は、およそ1500年前に書かれた現存する日本最古の歴史書です。語り言葉を生かした漢文体で書かれています。日本書紀は、古事記ができてから8年後に、本格的な歴史書を作ろうという動きの中で作られた正史です。中国に習って漢文体で書かれています。

古事記の魅力は、正史である日本書紀には書いてないヤマトに生まれた王権によって日本列島が統一される以前の物語が書いてあることです。ヤマト王権に、逆らい敗れた者たちの悲劇のドラマが生き生きと書かれているのです。これこそ、大河小説ではないか。

しかも、全てが空想の物語ではなく、関連する遺跡が発見されていたり、縄文文化とも関わりがあるのです。古事記とは何なのか。何が書かれているのか? 大きな興味を感じます。

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寛永版本 古事記國學院大學古事記学センター蔵) 引用:Wikipedia https://commons.wikimedia.org/wiki/Special:Search/しんぎんぐきゃっと

古事記を読む(その11)

天の神による地上侵略の始まり

[テキスト]

天照らす大神と大国主の命 天若日子

天照らす大神のお言葉で、「葦原の水穗の国は我が御子のマサカアカツカチハヤヒアメノオシホミミの命のお治め 遊ばすべき国である」と仰せられて、天からお降しになりました。

そこでアメノオシホミミの命が天からの階段にお立ちになつて御覽になり、「葦原の水穗の国はひどくさわいでいる」と仰せられて、またお還りになつて天照らす大神に申されました。

そこでタカミムスビの神、天照らす大神の御命令で天のヤスの河の河原に多くの神をお集めになつて、オモヒガネの神に思わしめて仰せになつたことには、「この葦原の中心の国はわたしの御子の治むべき国と定めた国である。それだのにこの国に暴威を振う乱暴な土着の神が多くあると思われるが、どの神を遣してこれを平定すべきであろうか」と仰せになりました。

そこでオモヒガネの神及び多くの神たちが相談して、「アメノホヒの神を 遣つたらよろしいでございましよう」と申しました。

そこでアメノホヒの神を遣したところ、この神は大国主の命にへつらい着いて三年たつても御返事申し上げませんでした。

このような次第でタカミムスビの神天照らす大神がまた多くの神たちにお尋ねになつて、「葦原の中心の國に遣したアメノホヒの神が久しく返事をしないが、またどの神を遣つたらよいだろうか」と仰せられました。

そこでオモヒガネの神が申されるには、「アマツクニダマの神の子の天若日子を遣りましよう」と申しました。

そこでりつぱな弓矢を天若日子に賜わつて遣しました。

しかるに天若日子はその国に降りついて大国主の命の女の下照る姫を妻とし、またその国を獲ようと思つて、八年たつても御返事申し上げませんでした。

アマテラスは、「葦原(あしはら)の水穗の国は、我の子供のマサカアカツカチハヤヒアメノオシホミミの命の治めるのが相応しい国です。」という命令を天から下したのです。

天の浮き橋から地上を見たアメノオシホミミは、地上はひどく騒がしいとアマテラスに報告をしました。

「葦原の水穗の国」とは、地上の意味です。マサカアカツカチハヤヒアメノオシホミミは、アマテラスとスサノヲが行ったウケヒで、スサノヲがアマテラスの玉飾りを噛んで吹き出した最初の子供です。詳しくは下記の記事をご参照くださいね。

これより、天の神による地上の侵略が始まります。大陸から来た弥生人が、土着の縄文人の村を侵略始めたということですね。

高天原(たかまがはら)では、タカミムスビ(高御産巣日)の神、アマテラスの命令で天の安河の河原に神を集めて、「地上はわたしの子供が治めるべき国です。しかし乱暴の土着の神が多くいる。どの神を派遣して平定すべきだろうか」とオモヒガネ(思金神)の神を議長にして、神々に考えさせようと話したのです。

タカミムスビ古事記の最初に出てきた第一柱の神です。そして、オモヒガネは天岩戸(アマノイワド)で怒った隠れたアマテラスを戻すための作戦を考えさせた神。オモヒガネは知恵者なのですね。集まった場所が天安河原。この場所もおなじみですね。

オモヒガネはアメノホヒの神を派遣するのが良いと提案しました。

この案どおり、アメノホヒを派遣しましたが、オオクニヌシに丸め込まれて三年経っても天に報告をしなかったのです。

さすがオオクニヌシやるなあ。敵の大将を懐柔してしまったんですね。

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葦原の水穗の国

"Reed" by Nilsfried is licensed under CC BY-SA 2.0

困ったタカミムスビの神、アマテラスは、今度はどの神を派遣したら良いか、神々を集めて相談します。

オモヒカネ神は「今度はアマツクニダマの神の子の天若日子(アマノワカヒコ)を派遣しましょう」と応えました。

今度は威力がある弓矢、天の麻迦古弓(アマノマカコユミ)と天の波々矢(アマノハハヤ)を持たせて天若日子を派遣をしました。

天若日子はその国に地上に降りて、オオクニヌシの娘の下照る姫を妻として、地上を自分のものにしようと企んで8年たつても返事をしなかった。

今度は、強力な武器を持たせた。天の麻迦古弓と天の波々矢って、字からみると相当、パワーがありそうですね。

しかし、天若日子もきっとオオクニシに丸め込まれたんですね(笑)。オオクニヌシ頑張るなあ。
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天の波々矢(アマノハハヤ)の威力

[テキスト]

そこで天照らす大神、タカミムスビの神が大勢の神にお尋ねになつたのには、「天若日子が久しく返事をしないが、どの神を遣して天若日子の留まつている仔細を尋ねさせようか」とお尋ねになりました。

そこで大勢の神たちまたオモヒガネの神が申しますには、「キジの鳴女を遣りましよう」と申しました。

そこでそのキジに、「お前が 行つて天若日子に尋ねるには、あなたを葦原の中心の国に遣したわけはその国の乱暴な神たちを平定せよというためです。何故に八年たつても御返事申し上げないのかと問え」と仰せられました。

そこでキジの鳴女が天から降つて來て、天若日子の門にある貴い桂の木の上にいて詳しく天の神の仰せの通りに言いました。

ここに天の探女という女がいて、このキジの言うことを聞いて天若日子に「この鳥は鳴く聲がよくありませんから射殺しておしまいなさい」と勸めましたから、天若日子は天の神の下さつたりつぱな弓矢をもつてそのキジを射殺しました。

ところがその矢がキジの胸から通りぬけて逆樣に射上げられて天のヤスの河の河原においでになる天照らす大神 高木の神の御許

に到りました。

この高木の神というのはタカミムスビの神の別の名です。その高木の神が弓矢を取つて御覽になると矢の羽に血がついております。

そこで高木の神が「この矢は天若日子に与えた矢である」と仰せになつて、多くの神たちに見せて仰せられるには、「もし天若日子が命令通りに亂暴な神を射た矢が來たのなら、天若日子に当たることなかれ。そうでなくてもし不届きな心があるなら天若日子はこの矢で死んでしまえ」と仰せられて、その矢をお取りになつて、その矢の飛んで來た穴から衝き返してお下しになりましたら、天若日子が朝床に寢ている胸の上に当つて死にました。

困りはてたアマテラスとタカミムスビは、またもや神々を集めて相談し、今度はキジ(鳥のキジのこと)の鳴女(ナキメ)を派遣して天若日子の事情を調べさせることにしました。

キジの鳴女が天か降り、天若日子の門にある桂の木の上に止まって、命じられたとおりに話しました。

そこにいた天の探女(アマノサグメ)は、このキジの言うことを聞いて、「この鳥は鳴く声が悪いから、射殺しなさい」とそそのかしました。、天若日子は天の神から授かった威力ある弓矢でキジを射殺しました。

その矢はキジの胸から通りぬけて、逆樣に天に向かって、天安河原にいるアマテラスと 高木の神のとこまで飛んでいきました。この高木の神というのはタカミムスビの神の別名です。

タカミムスビは矢をじっくり調べて、「この矢は天若日子に与えたのものだ。もし天若日子が命令通りに乱暴な神を射た矢が飛んで來たのなら、天若日子に当たることはない。もし不届きな心があるなら天若日子はこの矢で死んでしまえ。」と、矢が飛んできた穴からはじき返したのです。

矢は戻り、寝ている胸の上に当たって天若日子は死にました。

なかなか、この節は面白いですね。

やはり渡した弓矢はただものではなかった。天まで飛んでいくのですね。そして、射った人間に邪心があれば、矢は戻ってその人間に当たる。

これは、ギリシャ神話に出てきそうなエピソードですね。1500年前に考えられたとは思えない創造力に満ちた物語です。

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Bow and Arrow

"Where Cupid Left His Bow and Arrow in San Francisco California USA" byWonderlane is licensed under CC BY 2.0


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[テキスト]

かくしてキジは還つて参りませんから、今でも 諺 に「行つたきりのキジのお使」というのです。

それで天若日子の妻、 下照る姫のお泣きになる聲が風のまにまに響いて天に聞えました。

そこで天にいた天若日子の父のアマツクニダマの神、また天若日子のもとの妻子たちが聞いて、下りて来て泣き悲しんで、そこに葬式の家を作つて、ガンを死人の食物を持つ役とし、サギを 箒を持つ役とし、カワセミを御料理人とし、スズメを碓を舂く女とし、キジを泣く役の女として、かように定めて八日八夜というもの遊んでさわぎました。

この時アヂシキタカヒコネの神がおいでになつて、天若日子の亡くなつたのを弔問される時に、天から降つて來た天若日子の父や妻が皆泣いて、「わたしの子は死ななかつた」「わたしの夫は死ななかつたのだ」と言つて手足に取りすがつて泣き悲しみました。

かように間違えた次第はこの御二方の神のお姿が非常によく似ていたからです。

それで間違えたのでした。ここにアヂシキタカヒコネの神が非常に怒つて言われるには、「わたしは親友だから弔問に來たのだ。何だつてわたしを穢い死人に比べるのか」 と言つて、お佩きになつている長い劒を拔いてその葬式の家を切り伏せ、足で蹴飛ばしてしまいました。

それは美濃の国のアヰミ河の河上の 喪山という山になりました。

その持つて切つた大刀の名はオホバカリといい、またカンドの劒ともいいます。

そこでアヂシキタカヒコネの神が怒つて飛び去つた時に、その妹の下照る姫が兄君のお名前を顕そうと思つて歌つた歌は、

天の世界の若い織姫の

首に懸けている珠の飾り、

その珠の飾りの大きい珠のような方、

谷 二つ一度にお渡りになる

アヂシキタカヒコネの神でございます。

と歌いました。この歌は夷振(ひなぶり)です。

天若日子の妻、 下照る姫が鳴く声は天まで聞えました。

天にいた天若日子の父のアマツクニダマの神、また天若日子のもとの妻子たちが聞いて、地上に下りて来て泣き悲しみました。

葬式を行う家を作って、ガン(雁)を死人の食物を持つ役とし、サギを 箒を持つ役とし、カワセミを御料理人とし、スズメを臼をつく女とし、キジを泣く役の女として、八日八夜というもの遊んで騒いだ。

アヂシキタカヒコネの神が来て、弔問される時、天若日子の父や妻が手足に取りすがって泣き悲しんだ。

二人の姿は非常によく似ていたのです。

アヂシキタカヒコネは激しく怒って、「わたしは親友だから弔問に來たのだ。どうしてわたしを汚ない死人と一緒にするのだ」 身に付けていた長い剣を拔いて、葬式の家を切り倒し、足で蹴飛ばしてしまったのです。

それは美濃の国のアイミ河の河上の 喪山(モヤマ)という山になりました。

切つた大刀の名はオホバカリ(大量)といい、別名カンドの剣(神戸剣)ともいいます。

怒って飛ぶように帰ったアヂシキタカヒコネ妹の下照る姫が兄君のお名前を顕そうと歌を詠みました。

古代の葬式は賑やかだったのかな。「遊び騒ぐ」と書いてあります。今でもそういう葬式を行う地方がありますよね。

親友でも間違えられると怒るのです。昔はやはり死は穢れ(けがれ)だったのですね。

最後の歌は何だか、かなり色っぽく感じるけど、気のせいだろうか(汗)。

webをググると夷振「ひなぶり」は日本版七夕ではないかという説も書いてあります。結構、奥深い世界かもしれません。

「ひなぶり」とは大歌所(おおうたどころ)に伝えられた宮中を代表する楽舞。 鼓吹に合せて奏楽し、朝会公儀等の時に用いられたらしい。

引用:望海波日記https://filologos.diarynote.jp/200902171949147334/

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神々の戦い

"Stone sculpture of Durga Mahishasuramardini in the British Museum, London" byPeter Rivera is licensed under CC BY 2.0

本ブログで古事記をご紹介する方法について

このブログでは、テキストとして、青空文庫古事記』現代語訳 武田祐吉を使用します。この本は初版が1956年と古いので、副読本として三浦佑之著『読み解き古事記 神話編』朝日新聞出版を使用します。副読本を使って、現代的な解釈を補ってもらうことにします。

ブログ記事の範囲は、個人的に興味がある、古事記の上巻、神話部分と致します。全文を読むのは、大変な労力となりますので、独断と偏見で、「重要だ」、「面白い」と判断した部分のテキストを引用して、その解釈と感想について記事を書いていくことにします。また、できるだけ、インターネットの特長であるビジュアルな記事としたいと思います。

少しずつ、古事記の勉強を進めていきたいと思います。興味のある方は、ぜひ、一緒にを勉強していきませんか。

三浦佑之著『読み解き古事記 神話編』は、古事記研究の第一人者の書いた本です。これまでの研究成果を踏まえて分かりやすく、現代的に古事記のすべてを解説してくれます。オススメの素晴らしい本です。ぜひ。

読み解き古事記 神話篇 (朝日新書)

読み解き古事記 神話篇 (朝日新書)

 あとがき

古事記イザナミの黄泉の物語、オオクニヌシが登場してからの物語は実に面白いですね。今回のストーリーも創造性に富んでいてとても面白かったですね。

これアニメとか、RPGにすると結構面白いと思います。

繰り返しになりますが、とても1500年前に書かれたとは思えない。というか、1500年経っても人間の脳のレベルはあまり進化していない気がしますね。

副読本の残りページは全体のボリュームの10%ぐらいになりました。残り5回ぐらいでエンディングでしょうか?相変わらずぶっつけ本番で書いていますがお許し下さい。

今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。

古事記の連載はまだまだ続きます。今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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