時の化石

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連載記事『日本最古の歴史小説 古事記を読もう』(その13)天孫降臨(てんそんこうりん)の物語

どーも、ShinShaです。
今回は『古事記を読もう』第13回の記事。
アマテラスの孫ニニギが日向の高千穂に降臨(こうりん)します。
ここから古事記ではアマテラスの子孫が地上で繁栄する物語となります。
今回の物語では天皇家が継承する宝物、三種の神器のお話が登場します。

天皇家皇位継承の証である三種の神器古事記そのものなのですね。
今回の内容を読んで、そのことがよく分かりました。

古事記の面白さ

古事記は、およそ1500年前に書かれた現存する日本最古の歴史書です。
語り言葉を生かした漢文体で書かれています。
日本書紀は、古事記ができてから8年後に、本格的な歴史書を作ろうという動きの中で作られた正史です。
中国に習って漢文体で書かれています。

古事記の魅力は、正史である日本書紀には書いてないヤマトに生まれた王権によって日本列島が統一される以前の物語が書いてあることです。
ヤマト王権に、逆らい敗れた者たちの悲劇のドラマが生き生きと書かれているのです。
これこそ、大河小説ではないか。

しかも、全てが空想の物語ではなく、関連する遺跡が発見されていたり、縄文文化とも関わりがあるのです。
古事記とは何なのか。何が書かれているのか? 大きな興味を感じます。

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寛永版本 古事記國學院大學古事記学センター蔵) 引用:Wikipedia https://commons.wikimedia.org/wiki/Special:Search/しんぎんぐきゃっと


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古事記を読む(その13)

地上降臨

[テキスト]

そこで天照らす大神、高木の神のお言葉で、太子オシホミミ(忍穂耳)の命に仰せになるには、「今葦原の中心の国は平定し終つたと申すことである。
それ故、申しつけた通りに降つて行つてお治めなされるがよい」と仰せになりました。

そこで太子オシホミミの命が仰せになるには、「わたくしは降りようとして支度をしております間に子が生まれま した。
名はアメニギシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギ(天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸)の命と申します。
この子を降したいと思います」と申しました。

この 御子はオシホミミの命が高木の神の女ヨロヅハタトヨアキツシ姫の命と結婚されてお 生みになつた子がアメノホアカリの命・ヒコホノニニギの命のお二方なのでした。
かようなわけで申されたままにヒコホノニニのギ命に仰せ言があつて、「この葦原の水穗の国はあなたの治むべき国であると命令するのである。
依つて命令の通りにお降りなさい」と仰せられました。

ここにヒコホノニニギの命が天からお降りになろうとする時に、道の眞中にいて上は天を照らし、下は葦原の中心の国を照らす神がおります。
そこで天照らす大神・高木の神の御命令で、アメノウズメの神に仰せられるには、「あなたは女ではあるが出会つた神に向き合つて勝つ神である。
だからあなたが往つて尋ねることは、我が 御子のお降りなろうとする道をかようにしているのは誰であるかと問え」と仰せになりました。
そこで問われる時に答え申されるには、「わたくしは国の神でサルタ彦(猿田彦)の神という者です。
天の神の御子がお降りになると聞きましたので、御前にお仕え申そうとして出迎えております」と申しました。

かくてアメノコヤネの命・フトダマの命・アメノウズメの命・イシコリドメの命・タマノオヤの命、合わせて五部族の神を副えて天から降らせ申しました。
この時に 先に 天の石戸の前で天照らす大神をお迎えした大きな勾玉、鏡また草薙の劒、及びオモヒガネの神・タヂカラヲの神・アメノイハトワケの神をお副えになつて仰せになるには、「この鏡こそはもつぱらわたしの 魂 として、わたしの前を祭るようにお祭り申し上げよ。次にオモヒガネの神はわたしの御子の治められる種々のことを取り扱つてお仕え申せ」と仰せられました。

この二神は伊勢神宮にお祭り申し上げております。
なお伊勢神宮の外宮にはトヨウケの神を祭つてあります。
次にアメノイハトワケの神はまたの名はクシイハマドの神、またトヨイハマドの神といい、この神は御門の神です。
タヂカラヲの神はサナの地においでになります。

このアメノコヤネの命は 中臣の連等の祖先、フトダマの命は忌部の首等の祖先、ウズメの命は猿女の君等の祖先、イシコリドメの命は鏡 作の連等の祖先、タマノオヤの命は玉 祖の連等の祖先であります。

オオクニヌシの降伏によって地上は平定されました。
アマテラス、高木の神はオシホミミの神に、地上に降りて国を治めなさいと命じました。
しかし、オシホミミの神は、子が生まれたので、わが子アメニギシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギ(以下ヒコホノニニギ)を地上に降ろしますと答えました。

ヒコホノニニギの神が地上に降りる道中に光る神がいるので、アメノウズメに偵察に行かせました。
アメノウズメは女性の神ですが、相手に向き合うと必ず勝つ神です。

アメノウズメが偵察にいくと、その神は「自分は猿田彦の神である。天の神が地上に降りると聞いたので、これに仕えようとして待っています」と答えました。

道中の安全が確認されたので、アメノコヤネ・フトダマ・アメノウズメ・イシコリドメタマノオヤの五柱の神を一緒に天から降らせました。
この時、アマテラスは 天の岩戸の前に飾った大きな勾玉、鏡、草薙の剣をヒコホノニニギに渡しました。
さらに、オモヒガネの神・タヂカラヲの神・アメノイハトワケの神をお伴として地上に降ろしました。
「この鏡をわたしの魂 としてお祭り申し上げよ。オモヒガネの神には、種々のことを取り扱ってお仕えせよ」と話されました。

この鏡とオモヒガネの二神は伊勢神宮の内宮にお祀(まつ)りしてあります。
伊勢神宮の外宮にはトヨウケの神を祀つてあります。
アメノイハトワケの神は、またの名はクシイハマドの神、またトヨイハマドの神といい、この神は門の神となりました。

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アマテラスの系図

nnh - selfmade by MS-Paint, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=631078による

伊勢神宮の外宮には、アマテラスの食事を担当するトヨウケの神がおかれました。
一緒に降りてきたのは、祭礼に関わる神でありアマテラスが岩戸から引き出すのに功績があった神々です。

天の岩戸の前に飾った大きな勾玉、鏡、草薙の剣は、天皇家に代々伝わる三種の神器です。
うち二つはアマテラスを岩戸から誘い出すために飾り付けた、キラキラの鏡と宝石だったのですね。
そして、もうひとつの草薙の剣はヤマタノヲロチの尻尾から出てきた剣でした。
副読本の解説では、古事記には、伊勢神宮に鏡を安置した記述は、この文章以外にないと解説しています。

三種の神器は、皇位継承の際に「剣璽等承継の儀(けんじとうしょうけいのぎ)」で受け渡しをします。
この儀式では、皇位のしるしとされる「三種の神器」のうち剣と璽(じ)(勾玉(まがたま))を、国の印章の「国璽(こくじ)」と天皇の印の「御璽(ぎょじ)」とともに継承します。

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剣璽等承継の儀

首相官邸, CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0, via Wikimedia Commons

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三種の神器(想像)

Modifications made by PawełMM.

猿女の君

[テキスト]

そこでアマツヒコホノニニギの命に仰せになつて、天上の御座を離れ、 八重立つ雲を押し分けて勢いよく道を押し分け、天からの階段によつて、下の世界に浮洲があり、 それにお立ちになつて、遂に筑紫の東方なる高千穗の尊い峰にお降り申さしめました。

ここにアメノオシヒの命とアマツクメの命と二人が石の靫(うつぼ)を負い、頭が瘤になつている大刀を佩いて、強い弓を持ち立派な矢を挟んで、 御前に立つてお仕え申しました。
このアメノオシヒの命は 大伴の連等の祖先、アマツクメの命は 久米の直等の祖先であり ます。

ここに仰せになるには「この所は海外に向つて、カササの御崎に行き通つて、朝日の照り輝く国、夕日の輝く国である。此処(ここ)こそはたいへん吉い所である」と仰せられて、地の下の石根に宮柱を壯 大に立て、天上に千木を高く上げて宮殿を御造営あばされました。

ここにアメノウズメの命に仰せられるには、「この御前に立つてお仕え申し上げたサルタ彦の大神を、顕し申し上げたあなたがお送り申せ。またその神のお名前はあなたが受けてお仕え申せ」と仰せられました。

この故に猿女の君等はそのサルタ彦の男神の名を繋いで女を猿女の君というのです。
そのサルタ彦の神はアザカにおいでになつた時に、 漁 をしてヒラブ貝に手を咋い合わされて海水に溺れました。
その海底に沈んでおられる時の名を底につく御魂と申し、海水につぶつぶと泡が立つ時の名を粒立つ御魂と申し、水面に出て泡が開く時の名を泡咲く御魂と申します。

ウズメの命はサルタ彦の神を送つてから還つて来て、悉く大小樣々の魚どもを集めて、「お前たちは天の神の御子にお仕え申し上げるか、どうですか」と問う時に、魚どもは皆「お仕え申しましよう」と申しました中に、海鼠だけが申しませんでした。そこでウズメの命が海鼠に言うには、「この口は返事をしない口か」と言つて 小刀でその口を裂きました。
それで今でも海鼠の口は裂けております。
かようの次第で、御世ごとに志摩の国から魚類の貢物を 献る時に猿女の君等に下されるのです。

ヒコホノニニギは、天の階浮き橋に立って地上をながめた後で、筑紫の東にある高千穗の霊力のある峰に降りたのです。

地上に降りたヒコホノニニギは、「ここは韓の国に向かって、カササの御崎につながり、朝日の照り輝く国、夕日の輝く国である。ここはたいへんよい所である」と言って、立派な宮殿を建てて住むことになりました。

このようにして天孫降臨(てんそんこうりん)がおこなわれました。

天孫(てんそん)というのは、アマテラスの孫という意味なんですね。
今まで知らなかったです(汗)。

天孫降臨の高千穂の峰は、宮崎県と鹿児島県の2カ所有力地があります。
そういえば、坂本龍馬がお龍さんと日本人初のハネムーンに行ったのもこの場所でしたね。
大好きな『龍馬伝』を思い出します。

宮崎 vs 鹿児島の天孫降臨の地をめぐる争いでは、幕末以降は政治勢力が強い鹿児島説が有力となったそうです(笑)。
副読本では、古事記のストーリーとしては、辺境にある霧島連山の中にある鹿児島県の高千穂の方がふさわしいと記されています。
また、天空から高い山の頂上に降りてくる建国の物語は北方系の神話に共通するとも指摘をしています。
まあ、いずれにしても神話のことですからね。
ほどほどにしましょうね。

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宮崎県高千穂町の様子

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高千穂河原 古宮址、天孫降臨神籬斎場。 鹿児島県霧島市

663highland, CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/, via Wikimedia Commons

しかし、ここで疑問がでてきます。
これまでの古事記のストーリでは大きなボリュームを割いて出雲神話を書き、王であるオオクニヌシを攻略しました。
しかし神が降りた場所が、なぜ遠く離れた日向(ひゅうが)の高千穂なのか?
大きな違和感を感じました。

副読本にはその回答として、出雲を制圧する神話と天孫降臨の神話はもともと連続する物語ではなかったという主張が書かれています。
この説は説得力があると思います。
しかし、三種の神器の一つが、出雲神話の剣であることから、ヤマト王権の成立に出雲攻略が大きく関係していることが想像できます。

猿女君(さるめのきみ)は、古代より朝廷の祭祀(さいし)に携わってきた氏族の一つです。
この氏族の名は、アメノウズメが天孫降臨の際にサルタ彦が応対したことにより、その名を残すためにヒコホノニニギより名づけられたものです。

古事記には、サルタ彦が貝に手を挟まれて溺れ死んだと書かれています。
しかし暗殺説もあるようですね。
死に方が変だし、名を残すといういうのも、かなり怪しいです。
ちなみに、猿田彦は道ひらきの神様として、建設業界の人たちが信仰する神様です。
あっけない最後でしたが・・・

アメノウズメノがあらゆる魚類を追い集めて、「おまえたちは、天の御子の御膳(みけ)としてお仕え申しあげるか」と問いただしたとき、多くの魚がみな「お仕え申しましょう」と答えましたが、海鼠(なまこ)だけは答えなかった。
そこでアメノウズメノが海鼠に向かって、「この口は答えない口か」と言って、小刀でそのロを裂いた。
だから今でも海鼠(なまこ)の口は裂けている。

だいたい「料理の食材になってご奉仕しろ」といわれて「分かりました」と答える方がどうかしていると思いませんか。
でも、返事をしないと「この口は答えない口か」と言って裂かれちゃうのですね。
ナマコの写真を見ると穴が空いていますから、くり抜かれた感じですかね。
ナマコが気の毒です。

本ブログで古事記をご紹介する方法について

このブログでは、テキストとして、青空文庫古事記』現代語訳 武田祐吉を使用します。
この本は初版が1956年と古いので、副読本として三浦佑之著『読み解き古事記 神話編』朝日新聞出版を使用します。
副読本を使って、現代的な解釈を補ってもらうことにします。

ブログ記事の範囲は、個人的に興味がある、古事記の上巻、神話部分と致します。
全文を読むのは、大変な労力となりますので、独断と偏見で、「重要だ」、「面白い」と判断した部分のテキストを引用して、その解釈と感想について記事を書いていくことにします。
また、できるだけ、インターネットの特長であるビジュアルな記事としたいと思います。

少しずつ、古事記の勉強を進めていきたいと思います。興味のある方は、ぜひ、一緒にを勉強していきませんか。

三浦佑之著『読み解き古事記 神話編』は、古事記研究の第一人者の書いた本です。これまでの研究成果を踏まえて分かりやすく、現代的に古事記のすべてを解説してくれます。オススメの素晴らしい本です。ぜひ。

読み解き古事記 神話篇 (朝日新書)

読み解き古事記 神話篇 (朝日新書)

あとがき

今回からは天の神の地上への降臨の物語が展開します。
天孫降臨、そして古事記の物語は天皇家に深い関係があることが分かります。
極東の端に位置する日本では、独自の文化が長く育まれ継承されてきたことを実感することができました。

古事記では、これからアマテラスの子孫が日向で繁栄する物語となり、最初の天皇となる子が誕生したところで上巻は閉じます。
この連載も残すところ3回となりました。

今日もこのブログを読んでいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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