どーも、ShinShaです。
今回は表現主義とムンクの名画に関する記事です。
不安を塗り込めたムンクの『叫び』『マドンナ』...
目を背けられない美しさがある。
表現主義の作品にはゴッホ、ゴーギャンから影響を受けた、強烈な色彩とエモーションが描かれています。
この時代のアート作品もじつに美しいです。
表現主義とは
表現主義とはその名の通り、感情を表現に現す芸術、英語でいうと「エクスプレッショニズム」で、「インプレッショニズム」(印象主義)の対語です。
外界の対象が画家の内面に逢えた印象を描くのが印象主義で、画家の内部を外界の対象に投影するのが表現主義。
ポスト印象主義のゴッホやゴーギャンあたりから芽生えていた表現主義は、20世紀初頭のドイツで開花しました。
引用:山田五郎著『知識ゼロからの西洋絵画史入門』
表現主義の画家たちに強い影響を与えたのはゴッホでした。
たしかにゴッホの「星月夜」「カラスのいる麦畑」などの作品は、独特の色彩と彼の内面が強烈に描かれていて、表現主義の絵と言っても良いくらいですね。
表現主義が出現した時代は、繁栄と政情不安の時代でした。
1914年に始まった第1次世界大戦では、多くの画家達も従軍し戦死しました。
毒ガスや戦車、大量殺戮兵器が登場。
こうした時代背景の中、芸術に対する考え方も大きく変わりました。
ドイツ表現主義の画家としては下記の人達がいます。
- ワシリー・カンディンスキー
- エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー
- エゴン・シーレ
- オットー・ディクス
- エミール・ノルデ
- ルートヴィッヒ・マイトナー
- アウグスト・マッケ
- フランツ・マルク
- ガブリエーレ・ミュンター
- オットー・ミュラー
- パウラ・モーダーゾーン=ベッカー
- ハイム・スーチン
- エドヴァルド・ムンク
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表現主義の作品
表現主義の作品として最初にご紹介するのはエルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーの作品です。
ドイツドレスデン工科大学で出会ったキルヒナーとブライルらは、1905年に「ブリュッケ」を結成。
後に参加するノルでやミュラーらと共に強烈な色彩と大胆なでフォルマと荒々しいタッチで、それぞれの内面を表現していきました。
引用:山田五郎著 『知識ゼロからの近代絵画入門
第1次世界大戦に従軍し精神を病んだ。
療養先で描いた、月の光の下の冬のアルプスの風景。
強烈な色彩の絵です。
空に浮かぶ赤い月と照らし出された雲と樹木。
戦争に疲れ、不安な心を描いた美しい色彩の作品です。
この作品は後にナチス主催の退廃芸術展で、晒し者にされた。
キルヒナーは理知的で、ブルーな美しい作品を描く画家でしたが、売れない三流画家だったヒトラーは彼の作品を憎んだのでしょう。
1933年に政権掌握したナチス・ドイツにより自分の作品が「退廃芸術」とされ、「退廃芸術展」に作品が32点も出展されるなどしたことにもショックを受け、1938年にピストル自殺を遂げた。 引用:wikipedia
Ernst Ludwig Kirchner, Public domain, via Wikimedia Commons
ミュンヘン新芸術協会という表現主義団体をカンディンスキーとマルクが創刊した雑誌「青騎士」に共感した仲間たち。
激しい色彩は「ブリュッケ」と同じですが、形でもよい自由な表現を追求し抽象化していきました。
引用:山田五郎著 『知識ゼロからの近代絵画入門
ここではアーティゾン美術館所蔵のカンディンスキーの作品をご紹介します。
後に抽象主義で有名になったカンディンスキーも、こんな絵を描いた時代があったのですね。
3本の菩提樹のある美しい風景画です。
カンディンスキーが抽象画に向かう前の作品。
この強烈な色彩は、この少し前の表現主義の影響です。
この絵には独特の美しさがありますね。
すばらしいです。
エドヴァルド・ムンクの代表的名画
エドヴァルド・ムンクの作品にはどれも色濃い不安が立ち込めています。
それは彼の人生と深い関わりがあります。
幼少期に家族を失い、自らも病弱だったため、死を極端に恐れたムンク。
その不安がにじみ出た作品群を「生命のフリーズ(装飾帯)」と銘打ち1902年のベルリン分離派展に出品し、表現主義の誕生に貢献しました。
山田五郎著:「知識ゼロからの近代絵画入門」
最初に紹介するムンクの作品は『思春期』
絵のモデルは一説によると結核により15歳で世を去ったムンクの姉であると言われています。
美しい少女のヌードを描いています。
彼女は薄暗い部屋の中でベッドにぽつんと一人で座っています。
目も口元も緊張して、不安と向き合っているような表情です。
誰しも将来に対する大きな不安を感じる思春期を見事に表現した作品です。
彼女の左背面には不気味な黒い大きな影が存在しています。
まるで命が彼女から抜け出そうとしようとしてるようだ。
彼女の横には死が寄り添ってある。
思春期の女性の美、不安、そして死を描いた作品。
この作品も本当に美しい名画ですね。
Edvard Munch, Public domain, via Wikimedia Commons
次の作品は『マドンナ』。
美しい裸婦を描いた作品です。
作品のタイトルは、聖母マリアを意味しています。
ムンクは女流作家ダニエル・ユールを聖母に見立てて描いています。
しかし、彼女の背景には、まるでホラー映画のような、恐怖や不安に満ちたオーラが描き込まれています。
彼女の腕や下半身はオーラに溶け込んで消えています。
この作品は、健康的な女性の美を描くのではなく、死と隣り合わせのような美しさが描かれています。
ある意味、それは神々しいまでの美しさでもある。
ちなみにムンクは女性が怖くて結婚できないといいながら、恋多き人生を送ったそうです💦
見るたびに不安な気持ちが沸き起こってきますが、どうしても引き込まれてしまう。
強烈な美しさです。
Edvard Munch, Public domain, via Wikimedia Commons
ムンクの最も有名な作品はこの『叫び』です。
友人2人と夕暮れ時に歩いているときに、彼は不安に襲われたました。
この時を描いたのがこの作品です。
血のように赤く染まった夕暮れの空。
北欧独独の湾曲したフィヨルド海岸の風景。
画面全体が不安で歪み、塗り込められています。
この絵の登場人物(ムンク)は叫んでいるのではないのです。
ムンクは自然を貫くはげしい叫びを聞き、思わず耳を塞いだ。
不安に苦悩するデフォルメされた歪んだ顔。
最近ではスマホの絵文字に使われています。
ムンクはこの油彩意外に、4作の『叫び』を描いています。
それらの作品はパステル画2作品、リトグラフ1作品、テンペラ画1作品です。
Edvard Munch, Public domain, via Wikimedia Commons
この絵が社会で評価されたのは、時代の雰囲気を的確に評価した作品だったからでしょう。
ムンクもナチスドイツに作品を没収され、「退廃芸術」と酷評されました。
確かバウハウスもナチスに解体させられたのでしたね。
山田五郎さんの解説
今回も山田五郎さんのYouTube解説リンクを貼ります。
ムンク『叫び』の解説から、表現主義、ヒトラーの物語まで、博識でユーモアあふれる解説です。
楽しく勉強になる動画です。
www.youtube.com
参考図書
今回の記事、山田五郎さんの下記の3冊の著作を参考にして書きました。
どの本も入門書とあなどってはいけませんよ。
基本をしっかりおさえた上で、五郎さんらしい解説がなされています。
他のアート本には書いていない様々な知識を知ることができます。
楽しくアートを学ぶことができる最高の本です。
あとがき
久しぶりにアートの記事を書きました。
作品と向き合って文を書く作業は本当に楽しかったです。
表現主義はフォービズム、キュビズとほぼ同時代にドイツで開花した芸術様式です。
大好きな画家ゴッホ、ゴーギャンの絵画が、このように継承されていったかと考えると感慨深いですね。
しかしムンクの『思春期』『マドンナ』は本当に美しいですね。
今日も最後までブログを読んでいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
ShinSha
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