どうもShinShaです。ジャズ・スタンダードをご紹介する記事です。今回は1930年に作曲された古いスタンダードナンバー、「ボディ・アンド・ソウル (身も心も)」です。
この曲の歌詞は、片思いの切ない気持ちを歌っています。「身も心もすべてあなたに捧げた。でも、あなたはこの愛に背を向けている。どうして分かってくれないの」。これは男の妄想が入った歌詞じゃないだろうか?ふと、そんな感じがしました。
メロディが美しい曲です。このスタンダードの歌ものは、やはりビリー・ホリディですね。古い録音だけど初々しくて端正な歌が素晴らしい。インスト曲はバド・パウエルなど、今回も新旧織り交ぜて素晴らしいチューンを選曲しました。ぜひ、全曲聴いてみて下さい。
- 「ボディ・アンド・ソウル (身も心も) 」 Body and Soul
- 「ボディ・アンド・ソウル (身も心も) 」の名唱・名演奏
- サブスクミュージックでジャズを聴こう
- 記事で採り上げたアルバムのamazonリンク
- おわりに
「ボディ・アンド・ソウル (身も心も) 」 Body and Soul
楽曲について
「ボディ・アンド・ソウル (身も心も)」(Body and Soul)は、ジョニー・グリーンが英国の女優・歌手 ガートルード・ローレンスのために1930年に作曲。英国でヒットした後にアメリカに逆輸入されました。
グリーンはミュージカル映画で何度もアカデミー賞を受賞しており、ほかにも「コケット」「ユーアー・マイン・ユー」「アウト・オブ・ノーウェア」などのスタンダード曲を書いている。
この曲はとにかく多くの歌手が歌い、幅広く演奏されている名曲だから名唱、名演は数限りなく多い。歌ではやはりビリー・ホリディの録音が有名です。ほかにもサラ・ヴォーン、アニタ・オディ、メル・トーメなどが素晴らしいチューンを残しています。
インスト曲では、コールマン・ホーキンスの録音が有名ですが、さすがに古すぎる。古い演奏では、1950年のバド・パウエルのピアノが素晴らしい。ホーンではアート・ペッパーの1957年の録音を選びました。スタン・ゲッツもすごい演奏を残しているけど、僕には少しうるさすぎる。
歌詞
この曲の歌詞は、片思いの切ない気持ちを歌っています。「私は身も心も、すべてあなたに捧げてる。でも、あなたはこの愛に背を向けている。どうして分かってくれないの」。詞を読んでいると、ちょっと胸が苦しくなってくる。
この歌詞には男の願望が含まれているのではないだろうか。女性には、一途な愛を持ってほしいという。確かにこういう一面もあるけれど、僕の知っている女性たちはもっと逞しくて現実主義者だ。
Body and Soul
My heart is sad and lonely!
For you I sigh, for you dear only
Why haven't you seen it?
I'm all for you, Body and Soul
私の心は悲しく寂しいの!
あなたのために ため息をつく
どうしてわかってくれないの
すべてをあなたに捧げているのに 身も心も
I spend my days in longing,
And wondering why it's me you're wronging.
I tell you, I mean it,
I'm all for you, Body and Soul!
毎日を恋い焦がれて過ごすの
なぜ私を苦しめるのか 不思議に思う
あなたに言うわ 本気なのよ
すべてをあなたに捧げているの 身も心も!
I can't believe it,
Its hard to conceive it
That you'd turn away romance.
Are you pretending?
It looks like the ending!--
Unless, I can have
One more chance to prove dear..
信じられない
とても理解できない
あなたが愛に背を向けてしまうなんて
それとも ふりをしているの?
もう終わりが見えているみたい
でも もう一度だけ
証明するチャンスをください 親愛なる人
My life a wreck you're making!
You know I'm yours
For just the taking
I'd gladly surrender
Myself to you, Body and Soul!
あなたは私の人生を台無しにしているの!
私はあなたのものだと 知っているでしょう
ただ受け取るだけでいいのよ
喜んであなたに捧げるわ 身も心も!
訳:ShinSha
「ボディ・アンド・ソウル (身も心も) 」の名唱・名演奏
ジャズ・スタンダードを聴く楽しみは、いろんなアーティストの演奏の聴き比べにある。この曲にはどんな名演があるのだろうか?今回も新旧織り交ぜて素晴らしい演奏を紹介します。
[インストゥルメンタル]
⚫️ バド・パウエル
古い録音だが、いま聴いても素晴らしい。ピアノならでは美しさと魅力にあふれた演奏です。原曲のメロディからはみ出していないけど、独特のフレージング、タッチで見事に美しい曲に仕上げてしまう。まさしく天才。パウエルはほかにも何曲も、そんな演奏を残しています。
Bud Powell “Jazz Giant” 1950
Bass – Curly Russell, Drums – Max Roach, Piano – Bud Powell
⚫️ アート・ペッパー
全盛期のペッパーの演奏。美しいメロディを歌うペッパーのアルトが素晴らしい。淋しげな音色と独特なフレージングが印象的。バックでカール・パーキンスが演奏するピアノのフレーズがとても良い。右手だけで弾いているとはとても思えない。心に残る深いブルーの演奏です。
Art Pepper “The Art of Pepper“ 1957
Alto Saxophone – Art Pepper, Bass – Ben Tucker, Drums – Chuck Flores, Piano – Carl Perkins
⚫️ キース・ジャレット&チャーリー・ヘイデン
最初はゆったりしたリズムで入ってくる。美しい演奏です。キースのプレイの聴きどころは、やはりあのハミングが聴こえ始めてから。キースならではの美しい音楽が展開しはじめる。リズムをサポートするチャーリーのいぶし銀のベースも素晴らしい。エンディングも素晴らしく美しいなぁ。
Keith Jarrett & Charlie Haden ”Jasmine” 2010
Double Bass – Charlie Haden, Piano – Keith Jarrett
[ボーカル曲]
⚫️ ビリー・ホリディ
この曲ではやっぱりビリー・ホリディは外せない。彼女は何度もこの曲を録音しているけれど、やはり初期の録音が素晴らしいと思う。初々しい端正な歌声が、真っ直ぐ胸に響いてきます。
ビリー・ホリディにはエラのようなテクニックはないけれど、彼女の歌にはディープな魅力がある。エモーションが胸奥深く届いてきます。
Billie Holiday ”Lady Day: the Complete Billie Holiday on Columbia 1933-1944”
⚫️ アニタ・オディ
楽しいチューンです。最初はしっとりしたバラードでなかなか素敵。しかし中盤から演奏がアップテンポに変わり、そして最後は”シャバダバダ”で終わる (^^;; わずか3分の曲なのに、ジャズならでは楽しさが味わえます。
Anita O’day “Sings the Winners” 1958
⚫️ トニー・ベネット & エイミー・ワインハウス
トニーの歌はいつものように良いのだけれど、このチューンはエイミーが素晴らしすぎる。彼女の歌に強いエモーションを感じる。そこはビリー・ホリディとよく似ていると思います。
この曲は彼女が亡くなる4ヶ月前、ロンドンのアビー・ロード・スタジオでレコーディングされた。アルコール中毒でボロボロになった後、再起を目指していた時期でした。
そんな時に、憧れのヒーロー、トニーがロンドンまで来てくれて共演。彼女は本当に嬉しかったのでしょう。最初のパートを思いどおりに歌えたのだろう。歌った後に、神に感謝してペンダントにキスする仕草がいじらしい。胸が熱くなってきます。
Tony Bennett “Duets Ⅱ” 2011
サブスクミュージックでジャズを聴こう
サブスクミュージックでジャズを聴きましょう。今回のスタンダードの名演、名曲はすべてサブスクで聴くことができます。しかも音質も素晴らしい。
Apple Musicではジャズ名盤のハイレゾ化が進んできています。
素晴らしい音質で名曲を聴きましょう ♪( ´θ`)ノ
記事で採り上げたアルバムのamazonリンク
おわりに
今回も6曲を選曲しましたが、素晴らしいチューンばかりでした。特に、ビリー・ホリディ、エイミー・ワインハウスの歌が強く心に残りました。インスト曲ではバド・パウエル、アート・ペッパーの演奏が素晴らしかった。
こうしてスタンダードを聴いていると、ハッピーな曲より儚(はかな)く、淋しいものほど心に残るのはなぜだろう。エモーショナルな演奏や歌には、心を強く動かされるからだろうか。
ジャズの世界では演奏テクニックがいくら凄くても、ハートを感じない演奏は評価されない。だから、ウィントン・マルサリスやハービー・ハンコックはあまり評価されていない。エモーションとは?歌心とは何だろう?エイミーの歌を聴きながら、そんなことを考えました。
ShinSha