時の化石

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【ジャズ スタンダード ノート】 ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ You Don’t Know What Love Is

どうもShinShaです。前回に続いてジャズ・スタンダードの記事です。もの淋しい秋の夜には、ブルーなジャズを聴きたい。今回は1941年に作曲されたスタンダードナンバー「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」。失恋の歌、ブルースです。

「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」はリリース直後にはヒットしませんでしたが、1950年代からモダンジャズの大物アーティストが好んで演奏したことから、掛け値なしの名曲となっていきました。インストの楽曲には名演が多くて、選曲にずいぶん苦労しました。

「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」 You Don’t Know What Love Is

楽曲について

この歌は1941年代にジーン・デ・ポールが作曲し、ドン・レイによって歌詞がつけられました。映画『凸凹空中の巻』で使われ、その後ベニー・グッドマンエラ・フィッツジェラルドなどが録音しましたが、ヒットしませんでした。曲が暗いですからねぇ。

1954年にマイルス・ディビスがアルバム『ウォーキン』で「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」を演奏した後に、有名アーティストが次々とカバーするようになりました。マイルスの演奏が多くのアーティストを刺激したのでしょうね。

歌詞

歌詞は失恋の恨み節。愛を失った者が味わう孤独や未練を歌っています。
「あなたは愛を知らない。ブルースの意味が分かるまで」「唇は涙の味がして キスの味を失っていく」

誰もが感情移入がしやすい、リアルな歌詞だと感じます。だから名演が多いのかな。誰しもが失恋の傷をずっと抱えて生きるから。

You don't know what love

You don't know what love is
Until you've learned the meaning of the blues
Until you've loved a love you've had to lose
You don't know what love is

あなたは愛を知らないわ
ブルースの意味を分かって
失ってしまう愛を愛するまで
あなたは愛を知らないわ

You don't know how lips hurt
Until you've kissed and had to pay the cost
Until you've flipped your heart and you have lost
You don't know what love is

あなたは唇がどんなに痛いのか分からない
キスをして 代償を払って
心をひっくり返して失くしてしまうまで
あなたは愛を知らないわ

Do you know how a lost heart feels?
The thought of reminiscing
Oh, how lips that taste of tears
Lose their taste for kissing

心を失ったらどんな感じだかわかる?
あなたとの思い出に浸って
ああ唇は涙の味がして
キスの味を失っていく

You don't know how hearts burn
For love that cannot live yet never dies
Until you've faced the dawn with sleepless eyes
You don't know what love is

あなはた心がどんなに燃えるか分からない
生きられずに もう死んでいく愛のた​​めに
眠れない目で夜明けを迎えるまでは
あなたは愛を知らないわ

翻訳:ShinSha

"Billie Holiday singing at the Downbeat Club in New York, 1947, photo by William P Gottlieb" by jbuddenh is licensed under CC BY 2.0.

「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」の名唱・名演奏

ジャズ・スタンダードを聴く楽しみは、アーティストの演奏の聴き比べです。この曲にはどんな名演があるのだろうか?今回も新旧織り交ぜて素晴らしい演奏を紹介します。

ご機嫌な「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」を聴くことができるジャズアルバム、https://www.amazon.com の画像を加工

[ボーカル曲]
🔳 チェット・ベイカー
チェット・ベイカーのお箱、ファルセット(裏声)ボーカル。甘くて淋しげなトーンがこの曲にぴったりです。この人には失恋の歌がよく似合う。エモーショナルなトランペットのプレイも良いです。

Chet Baker “Sings and Plays” 1955
Bass – Carson Smith, Red Mitchell, Drums - Bob Neel, Flute - Bud Shank, Harp - Corky Hale, Piano - Russ Freeman, Trumpet, Vocals - Chet Baker

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🔳 ビリー・ホリディ
亡くなる前年のレコーディング。声が衰えて音程もうまく合わせられなくなっている。痛々しいまでの歌ですが、ここには逃れられない魅力があるのです。歌が彼女の人生に重なるのだろうか。曲は流麗なストリングスに包まれた美しいアレンジですが、強い哀しみを感じます。

Billy Holiday “Lady in Satin” 1958
Alto Saxophone – Gene Quill, Double Bass [String Bass] – Milt Hinton, Drums – Osie Johnson, Guitar – Barry Galbraith, Piano – Hank Jones, Trumpet – Bernie Glow, Billie Butterfield, Mel Davis, Vocals – Billie Holiday

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🔳 メロデイ・ガルドー
ビリー・ホリディの曲が重いので少し気分を変えたい(笑)。この曲の新しいボーカルチューンがないかと探すと、メロディ・ガルドーのライブ音源がありました。無機質でカッコいいアレンジです。80年前の曲がみごとに現代的に再構築されている。ガルドーのボーカルはいつ聴いても艶っぽくて良いです。

Melody Gardot “Live in Europe - Bonus Edition -“ 2019
Drums – Chuck Staab, Guitar – Mitchell Long, Keyboards – Devin Greenwood, Trumpet – Shareef Clayton, Vocals – Melody Gardot

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"Melody Gardot Berlin 2010" by Stefanie Meynberg is licensed under CC BY 2.0.

インストルメンタル
🔳 ソニー・ロリンズ
この曲には様々な名演がありますが、僕にはロリンズの演奏が一番です。ジャズを聴き始めた頃、繰り返し”セント・トーマス”とこの曲を聴いていました。

ロリンズのアドリブが圧巻です。なんと豊かで歌うテナーだろう。テナーは男性的に伸び伸びと歌い、次々とメロディックなアドリブを繰り出してくる。ジャズという音楽の素晴らしさがこの一曲に凝縮していると感じます。

Sonny Rollins “Saxophone Colossus” 1956
Bass – Doug Watkins, Drums – Max Roach, Piano – Tommy Flanagan, Tenor Saxophone – Sonny Rollins

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🔳 アート・ブレイキー
トランペット、テナーサックス、トロンボーン3管による演奏。3管の分厚いハーモニーはカッコいいです。中盤からのリー・モーガンウェイン・ショーターの演奏はすごくエモーショナル。続くカーティス・フラートロンボーンも味がある。ほかのアーティストの演奏とはまったく違うアレンジは見事というしかない。

Art Blakey “Art Blakey!!!!! Jazz Messengers!!!!!” 1961
Bass – Jymie Merritt, Drums – Art Blakey, Piano – Bobby Timmons, Tenor Saxophone – Wayne Shorter, Trombone – Curtis Fuller, Trumpet – Lee Morgan

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"Lee Morgan Jymie Merritt and Wayne Shorter" by Herbert Behrens / Anefo is marked with CC0 1.0.


🔳 エリック・ドルフィー
凄まじいまでの演奏です。彼はこの時、死を予感していたのだろうか。この録音の少し後にドルフィは36歳という若さで世を去っています。死因は糖尿病による心臓発作。

美しい音楽です。ドルフィは心と技で曲に没入している。波のように醸し出されるアドリブ。ジャズという音楽の奥深さを教えてくれる至高の一曲だといえるでしょう。

Eric Dolphy “Last Date” 1965
Bass – Jacques Schols, Drums – Han Bennink, Flute, Bass Clarinet, Alto Saxophone – Eric Dolphy, Piano – Misja Mengelberg*

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おわりに

これまでの記事とは違って、今回は暗くてディープな曲を紹介しました。失恋を歌ったこのブルースには山ほど名演があるのです。紹介した曲以外にも、マイルス・ディビス、ジョン・コルトレーンパット・マルティーノなどなど。この曲が名スタンダードといわれる所以です。

明るく楽しい音楽より、悲しげでブルーな曲ほど心に深く残ります。この曲はメロディも美しいですね。個人的には今回選んだインストルメンタルの3曲はどれも捨てがたいです。

生きていく中ではいろんなことに出会う。こんな世の中だから、むしろ上手くいかないことばかりだ。手痛い失恋をするし、仕事で立ち直れないような失敗もする。明かりを落として独り音楽に浸りたい夜もある。そんな夜にはジャズが深く深く心に染みてくるのです。
ShinSha