どうもShinShaです。今回は森永卓郎 著『ザイム真理教』を読んだ感想と最近考えていることを加えて記事を書こうと思います。
僕が社会に出た1980年代の日本は希望に満ちていました。個人的にも未来に向かって大きな夢を描いていました。出張で長期滞在したシンガポール、マレーシアの人たちからも日本は羨望の目で見られていました。それがどうしてこうなってしまったのか。
何故、日本はここまで落ちてしまったのか。この数年間、答えを探していました。その答えを知るために、森永卓郎さんの書いた本『ザイム真理教』を読みました。
『ザイム真理教』の概要
財務省が日本経済凋落の元凶だと考える森永さんは、カルト教団である統一教会になぞらえて「ザイム真理教」と名付けて本書を出版しました。
本書を書こうと思ったのは生活が厳しくなる一方の日本国民に、財政の真実を知ったもらい、財政均衡主義からの脱却が、国民世界を改善するために絶対に必要だということを理解してほしいと思ったからだ。
ただそれと同時に、いくら頑張って書いても、世間の常識を変えることはできないではないか、という懸念も同時に持っている。本当は国民が立ち上がって、ザイム真理教を打倒してくれれば、皆が幸せになれると思うのだが、それは難しいかもしれない。
一般に「脱洗脳」には、洗脳がなされたのと同じ時間が必要だとされる。ザイム真理教が頭角を現してから40年が経過しており、いまなお続いているどころか、勢力を増している現実があるからだ。
消費税を5%まで下げることの財政負担は14兆円にすぎないから、その税収不足を国債発行でまかない、しれを永遠に続けることはまったく問題はないことがわかる。私にとっては、とても簡単な仕掛けなのだが、なぜか多くの人に伝わらない。
いったいなぜなのか。私は、最大の原因は、旧大蔵省時代を含めて、財務省が40年間布教を続けてきた「財政均衡主義」という教義が、国民やマスメディアや政治家に至るまで、深く浸透してしまったしまったためだと考えている。国民全体が財務省に洗脳されてしまったのだ。
森永さんの主張を裏付けるデータがありました。下の2つの図はアジア・オセアニア諸国の政府総支出と名目GDPの推移を示したものです。政府総支出とは、中央政府と地方政府、社会保障基金が支出した金額の合計です。
財務省が財政均衡主義を採っているから、日本は他国とくらべて格段に政府総支出が少ないのです。データを見ると日本の貧弱な政府総支出がGDPの成長に影響しています。政府支出を増加させている他国は順調にGDPも成長しています。
それに比べて日本のGDPの成長は地を這うような変化です。これらの国と比べて、日本の産業が劣っているからGDPの成長が止まっているとは考えられません。やはり政治が悪いのだ。森永さんが書いているとおり、ザイム真理教のためにこうなったのだと思います。
経済成長が止まり国民の所得も増えない中、政府は増税を繰り返し、すでに日本の税負担は48%、まさに”五公五民”ともいえる状況になっています。江戸時代では”五公五民”の年貢をとると、農民は一揆を起こすか、逃散(ちょうさん)、つまり逃げ出すかのどちらかだった。もはや日本の国民生活はそこまで厳しいレベルにきているのです。
この本を読むと、彼がなぜ財務省を「ザイム真理教」と呼ぶのか理由が分かります。政治家やメディアに出る影響力のある人物には財務省から説明に出向き、自分たちの政策方針を洗脳して信者にする。財務省を批判するマスコミ、知識人には税務調査で嫌がらせをする。
だから自民党も立憲民主党など野党の大半も主流は緊縮財政派なのです。大手新聞もテレビ局も財務省のサポーターとなってしまった。財務省を批判する学者や評論家はTVに出ることすらできなくなったのです。森永さんはTVからは出禁をくらっているので、ラジオで本音の話を語ってくれます。
財政均衡主義は間違っている
財務省の主張は正しいか
まず最初に財務省がいうように日本は財政破綻状態にあるのか、自分なりに検討してみようと思いました。財務省主張は、日本の負債は他国に比べて異常に多い、このままいけば債務不履行になっていまう。だから財政緊縮が必要だ。さらなる税収が必要だという論理です。
日本のバランスシートのデータを調べてみました。経営者や投資をする人には常識だと思いますが、バランスシートの負債総額(1441兆円)を取り上げて、財務省は日本は借金が多い、このままでは「孫子の世代までツケを回す」とか何とか言ってます。しかし常識として問題となるのは資産・負債の差額ですよね。
さらに負債の内訳についても調べてみました。米国のGDPは日本の6倍だから日本の資産・負債の差額の対GDP比はほぼ同じ(森永さんの本では先進国の標準的な値と解説)。しかも中味を見ると約半分が日銀がもっているぞ。日本が財政破綻で潰れるなんて。絶対にありえない。
さらにデータから分かったのは、日本の資産はGDPが6倍のアメリカより多い。むしろこちらの方が問題だな。だから負債総額が増えているんだ。百歩譲って負債を返さなければならないのなら(そんな必要はない)、国民から税金を搾り取るよりまず、資産を売るべきですね。資産の中味は...官僚が天下りする...くわばらくわばら(^◇^;)
ちょっと調べれば分かる、こんな嘘をついてまで、財務省が税金を搾り取ろうとする理由は何でしょうか?官僚は国民の生活を守ろうとは考えないのだろうか?そんな疑問が湧いてきますが、森永さんがいうとおり、それがザイム真理教なのですね(汗)
森永康平 著『「国の借金は問題ない」って本当ですか?』を読んでみた
森永卓郎さんの本の内容をもう少し詳しく知りたいと思って、この数週間、マクロ経済学の基礎を勉強しました。YouTube動画を見たり、ご子息、森永康平氏の著作『「国の借金は問題ない」って本当ですか?』を図書館で借りて読んでみました。
MMT(現代貨幣理論:Modern Monetary Theory)の考え方は合理的で説得力があります。理系の僕にも分かりやすく読んでいて勉強になる。特に「政府の借金 = 貨幣の発行額 = 民間の貯蓄」という見方には目からウロコが落ちました。1971年の金・ドル本位制崩壊後は、時代の変化とともに貨幣の理論も大きく変わっているのです。
この本に書いてあったMMTのポイントを下に列挙します。
・日本政府の借金はすべて自国通貨(円)建ての国債である
・先進国は自国通貨建ての国債で破綻することはありえない。
(自国通貨を運用、十分な通貨供給能力、変動為替相場制採用)
・税収は国の財源ではない
・国の借金は貨幣発行と同義
・国の借金は民間の貯蓄
さらりと書きましたが「税収は国の財源ではない」という事実は、これまでの考え方と天と地ほど違います。こういう理論がないと金の保有量を大きく超えた、世界の経済拡大を説明することができないのだと考えます。財務省の財政均衡主義は金・ドル本位制時代のカビの生えた主張に思えてきます。
政府は2024年6月に、経済財政運営の指針「骨太方針」を閣議決定し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化させる財政再建の目標を明記しました。そんなことをすれば、ますます日本経済が萎んでしまうのは明らかです。ますます国民の暮らしが厳しくなってしまう。
なぜアベノミクスはうまくいかなかったか
話を『ザイム真理教』に戻します。
12年前から行われたアベノミクスに僕も大きな期待をした一人です。アベノミクスはなぜ失敗したのか、この本に書いてありました。
2012年から始まった第二次安倍政権の「アベノミクス」は①金融緩和、②財政出動、③成長戦略の3本の矢で、日本経済をデフレから脱却させようという壮大な社会実験だった。
「物価上昇率をマイナスからプラスに変え、労働市場も格段に改善するという効果は十分もたらされた。だが目標としていた消費者物価上昇率を2%にすることも、物価上昇と賃金上昇の好循環によって日本経済を成長軌道に復帰させるという政策も、うまくいかのかった。それは、なぜなのか。
私は、金融緩和は実現したけれど、財政出動をまったくできなかった、特に二度にわたる消費税引き上げが、経済の悪循環をもたらしてしまったからだと考えている。
経済政策というのは金融・財政一体となって行うから効果がある。どこの国でもそうやって経済政策を行っている。この国のエリート官僚のおそまつさに絶望したと、森永さんと親交がある産経新聞論説委員の田辺秀男氏はYouTubeの動画で語っていました。
日銀は目一杯アクセルを踏んだが、横にいる財務省はブレーキを踏んだ。それでアベノミクスはスピンした。これもザイム真理教の影響なのです(汗)
記事で取り上げた書籍のAmazonリンク
ご子息、森永康平氏の著作『「国の借金は問題ない」って本当ですか?』は分かりやすくMMTの基本が書いてあります。政治・経済を考えるための基礎知識として読んでおきたい本だと思いました。
おわりに
なぜこの国には希望がなくなってしまったのか。その答えを探して今年2冊の本を読みました。斎藤幸平「ゼロからの資本論」には、日本の企業が過去二十年にわたって売上が伸びていないのに、労働コストをカットすることで、収益を向上させてきたことが書いてありました。
そして本書『ザイム真理教』には財務省による緊縮財政が日本の経済成長を止めた原因であることが書いてありました。間違いなくこの2つが日本を凋落させた大きな要因だと考えます。2冊の本のおかげで、この数年考えてた問題の答えが得られたと思いました。
ああ、慣れない分野のことを書いていると疲れる。疑問に思うと情報を調べて理屈で納得できるまで考えないと終われない。エンジニアの性(さが)なので仕方がないです。
日本の景気を良くするには、これまでの財政緊縮から積極財政に転換することが必要です。幸いなことに先の衆議院選挙で、自民党は大敗し過半数を割り込みました。公明党も議席を落とし、いま国民民主党がキャスティングボードを握っています。
国民民主党は数少ない積極財政派の政党(ほかには、れいわ新撰組)。今回の選挙ではSNSを駆使した分かりやすい戦略が見事でした。玉木党首の不倫問題についても、若い世代には「倫理より手取り」と大目にみる意見が多いです。企業団体献金には反対だし原発はイヤだが、ここは国民民主党を応援するしかない。
森永卓郎さんは、大竹まことさんから「死ぬ死ぬ詐欺」と言われながら、その後も夜も寝ないで本を書いています。彼の生きざまには本当に胸を打たれます。幸いにも治療が上手くいき、最近は癌の活動が止まっているそうです。日本のためにもっと長生きして、楽しい話を聞かせてください。
ShinSha