今回は国産ヘッドホン オーディオテクニカ ATH M50x のレビューです。密閉型の音質が良いヘッドホンを探していました。日本製の良い製品はないのかな? そんな中、web情報から見つけたのがオーディオテクニカ ATH-M50xでした。
このヘッドホンは、どちらかといえば日本国内より海外で有名。Amazonレビューは33,000超、満足度レーティング4.5。とにかく海外からのレビューがとても多いのです。アメリカの多くのスタジオで定番となっているモニター製品でもあります。
全体の音質のバランスが取れていながら低域が豊かで、ベースラインの聴こえ方が秀逸です。価格は1万円台。間違いなくこのクラスピカイチのヘッドホン。ジャズ、ポップス、ロックなどの音楽を愛する人に強くオススメするヘッドホンです。
オーディオテクニカ ATHーM50x
オーディオテクニカ について
オーディオテクニカって非上場の企業だったのですね。今回調べるまで知りませんでした。同社は国内では2020年頃までヘッドホン販売台数No.1を誇っていた。しかし、近年はワイヤレス製品の販売増加により優位性は崩れました。
もはやヘッドホンの70%がワイヤレス製品となってしまったのです。そしてAppleのような新しい企業が大きなシェアを占めるようになりました。しかし、オーディオテクニカは世界に誇る音響機器メーカーであることは変わりません。
オーディオテクニカは東京都町田市に本社をおく非上場の音響機器・映像機器メーカー。ブリヂストン美術館のスタッフとしてレコードコンサートの運営などをしていた松下秀雄 氏が、レコードプレーヤー用の自作カートリッジを製作販売するため独立、1962年(昭和37年)に設立。
当初はカートリッジの専業メーカーとしてスタートし、その後は放送局向けの業務用製品、民生用のステレオセットやレコードプレーヤーで幅広く手掛ける。
ヘッドフォンは幅広いラインナップを展開し、オープンエア構造やウイングサポート構造など音質・装着感を向上させるための機構を積極的に取り入れる進取の姿勢で知られている。
同社はこのほか、マイクロフォン、AVアクセサリーなどの製造販売を手掛けている。また、AUTECブランドによる寿司、おにぎり等製造機など食品加工機器の事業も行っている。
引用:Wikipedia(かなり省略)
オーディオテクニカ ATH M50x
今回紹介するATHーM50xはオーディオテクニカの大ヒット商品です。なんとシリーズの出荷台数累計250万台!この製品は日本国内より、アメリカの方が評価が高いです。オーディオテクニカにこんなに素晴らしい製品があるのをつい最近まで知りませんでした。
Webの情報を読むとこの製品がアメリカのスタジオでレコーディング、ミキシング用ヘッドホンの定番となっていることが分かりました。日本国内のスタジオはSONY CD900STが定番ですが、アメリカではオーディオテクニカの製品が高い評価を得ているのです。
先日、レディ・ガガとトニーベネットのデュエット曲”Love for Sale”のYouTubeムービーを見ていると、オーディオテクニカのヘッドホンが写っていました。じっくり見るとその製品はATH-M50xとは違いました。調べてみると下位モデルのM-20Xでした。
いずれにしても、オーディオテクニカの製品がアメリカで高い評価を受けていて、とても嬉しいです。ATH-M50xの音質については下に詳しく書きますが、自分の好きな海外アーティストがスタジオで使っているから、この製品を購入した人も多いのです。
製品仕様
オーディオテクニカ ATH-M50x
形式:密閉型、ダイナミックドライバー φ45mm、CCAWボイスコイル
再生周波数帯域:15 HZ - 28 KHZ
筐体素材 : ハウジング:プラスチック、イヤーパッド:レザー
インピーダンス: 38 Ω、感度:98 dB/mW
接続プラグ :3.5mm(ミニ)、6.3mm(標準)アダプター付属
コード:OFCリッツ線1.2mカールコード(伸長時約3m)、OFCリッツ線3mストレートコード、OFCリッツ線1.2mストレートコード
質量:285g(ケーブル、コネクターを含まず)
ケーブルが3本付属しています。いずれも無酸素銅のリッツ線。これは嬉しいですね。
購入ヘッドホンの写真
購入した製品の写真を掲載します。製品パッケージはシンプルな紙の包装です。海外向けの環境を配慮した仕様になっていますね。日本製品のパッケージはまだプラスチックだらけです。見習ってほしいです。
付属品、ヘッドホンを箱から取り出しました。スイーベルが付いていてハウジングが90°回転するからこんな形に変形できます。このタイプのヘッドホンは初めて。ごめんなさい。僕はバランスケーブルを購入してこのヘッドホン聴いてるので付属ケーブル3本は紙に包まれてます。
ヘッドバンドの内側にも折りたたむことができコンパクトに変形できます。持ち歩く時に便利ですね。付属ケーブルは本、至れり尽くせり。
製品レビュー
総合評価
オーディオテクニカ ATHーM50x
総合 :☆☆☆☆☆
デザイン・質感:☆☆☆☆☆
装着感 :☆☆☆☆
サウンド :☆☆☆☆☆
定位・空間表現:☆☆☆☆
<音質バランス>
[コメント]
最近1ヶ月ほど、このヘッドホンでジャズ、ポップスを聴いていますが良い音です。ベースラインが明瞭に聴こえ、リズムがしっかり伝わってくる。中音域〜高域にかけてもじつにバランスが良い音質です。ジャズ、ポップス、ロック、ヒップホップなどの楽曲を聴くのにぴったりです。
時々訪問する海外のオーディオサイトRTINGS.com にこのヘッドホンの周波数応答が掲載されていました。青い線はATH-M50xの測定値、黒の破線はハーマン・カーブの周波数応答を示しています。
RTINGS.comによるATH-M50xの音質分析は以下のとおりです。
この製品はヘッドホンの科学的音質基準であるハーマン・カーブに全体的によく一致したフラットな周波数応答となっています。ハーマン・カーブと大きく異なる70-250Hzの低域の強調は音楽にパンチと力強さを与える効果をもたらしています。
さらに高域の4−5kHZに強調があり、この特性はビートを強く印象付けています。8kHz以上の周波数では全体的にハーマン・カーブと一致しながら不均一で主に強調されているため明るい音質を示しています。
ハーマン・カーブに一致した優れた周波数応答をもつこと。そして、低域の強調がジャズやロックを聴くファンにはたまらない魅力をもたらします。海外のエンジニアから高い評価を得ている理由がよく分かります。
また、ATHーM50xは解像度が高く、音楽の中でいろいろな楽器の音、ボーカル、コーラスなどを聴き分けることができます。また、密閉型(クローズドバック)のヘッドホンにも関わらず、音場もそこそこ広く、定位も正確に感じ取ることができます。モニターヘッドホンとして十分な性能をもっていると感じます。
最後に本製品はインピーダンスが低く、スマートホンに接続して聴くことができます。ドングルDACに接続すると、さらによい音で音楽を楽しむことができると思います。
サウンド・インプレッション
以下にATH-M50xで聴いたポップス、ジャズ、クラシックの印象を書いてみます。
最初はポップスの楽曲から。イヤホン、ヘッドホンの音を確認する時に基準としていている、中島美嘉“ORION with ensemble”をじっくり聴いてみた。
ボーカルは艶かしく美しい。ストリングスの弦の細かな響きまで再生してくれる。重なる音の中にピアノの音が美しく響く。ステージの広がりを見事に再現した感動的な美しさでした。
King Gnu “硝子窓”。ベース、ドラムが刻むビート。ピアノ、キーボード、ストリングス、井口のハイトーンボイスが奏でる美しいメロディ。重ねられた解像度の低いコーラス音と電子音のノイズ。モダンで複雑な構造をもつ、この曲のさまざま音を切なく美しく鳴らしてくれました。
続いて、ザ・ビートルズのアルバム”Abbey Road”、ジョン・レノンの名曲”Come Together”。ベース、バスドラムの低く深いリズムが躍動的。タイトなリズムに脚も腰も自然に動きだしてくる。
”Here Come The Sun”ではアコースティックギターが美しく、また、ベースとドラムのビートもが伝わってくる。ハイトーンの美しい曲を気持ちよく楽しめます。
ジャズではキース・ジャレットを聴いてみた。チャーリー・ヘイデンとのデュエット ”フォー・オール・ウィ・ノウ” “月とてもなく”。ベースの深い響きとピアノの軽やかな響き。ベースは音楽のリズムを支え、ソロパートでは低く歌う。ジャズはやっぱりベース音が要だと感じます。キースのピアノの響きはリアリティがあり美しい。じっくり聞き込んでいると、このヘッドホンの素晴らしさを実感します。
クラシックでは坂本龍一 Opus “BB” “Solitude” を聴きました。倍音と美しい響きを見事に再現し、ピアノの音にすごくリアリティがあります。やはりこのヘッドホンは音が良い。価格的にさすがにゼンハイザーほどの解像度は望めないものの、ピアノ曲などクラシックの楽曲を十分に楽しむことができます。
試聴曲
[Pops]
中島美嘉: ”ORION with ensemble”、King Gnu: “硝子窓” “ねっこ”、ザ・ビートルズ: Abbey Road “Come Together” “Here Come the Sun”
[Jazz]
Keith Jarrett & Charlie Haden: Jasmine “フォー・オール・ウィ・ノウ” “月とてもなく”
[Classic]
坂本龍一: Opus “BB” “Solitude”
[試聴環境]:
音源:Apple Music (ロスレス、ハイレゾロスレス)、DAC: S.M.S.L DO 400
デザイン・製品の質感
プラスチック、レザーでできていますが、質感はあまり高くない。しかしスイーベル構造を採用したメカニカルな構造は魅力的。遮音性も高いので外に持ち出して音楽を聴くこともできます。そんな時にコンパクトにおりたためるのは便利です。
装着感
少し小さめのオーバーイヤータイプのヘッドホン。耳の大きな人はちょっと辛いかもしれませんね。圧迫感は強めですが、イヤーパッドのやわらかさが和らげており、長時間着けていられます。そのおかげで遮音性も高いです。
音場・定位感
密閉型(クローズドバック)構造にもかかわらず、音場は広めです。スタジオ程度の大きさの音場を再現できます。定位は正確で音の分離性も高い。やはりモニターとして採用されるだけの性能を備えています。
記事で採り上げた製品のリンク
僕は付属ケーブルを使用しないで、下の中華製バランスケーブルでこのヘッドホンを聴いています。 バランス化しても音は変わりませんが、出力を増加させて使えるメリットが大きいです。ケーブルは銅製の構造が良いもので十分。高価なものを買う必要なんてありません。
おわりに
日本国内のショップでは、海外製品がセールス上位を占め、目立っています。今回リサーチするまで、オーディオテクニカにこんなに良いヘッドホンがあるとは知りませんでした。いつも試聴していた製品の少し横に並んでいたのですが、これまで手に取ることはありませんでした。
ATHーM50xは本当に良い製品です。このヘッドホンでリラックスしてジャズボーカルを聴くのは至福のひととき。音質がよく値段も手頃。さらにとても頑丈にできている。さすがアメリカで高評価の訳です。1本もっていて絶対に後悔しない製品です。
オーディオテクニカは柳の下のドジョウを狙ったのか、Mシリーズとして5つの製品を発売しています。この製品の上位機種としてM60x、M70xがあります。最上位機種M70xを何回か視聴しましたがM50xほどの魅力がないのです。面白いですね。コストをかけて上位機種を開発しても前のモデルを超えられない。こういうところが、M50xが名機たる所以だと思います。
昨年仕事を頑張ったので、ご褒美として手持ちのヘッドホンを入れ替えました。サブタイトルに”手放せない名機”と書きながら...ゼンハイザーHD600も下取りに(^^;;
今回記事を書いたのは年末に購入したうちの一本。次回は新しいゼンハイザーのヘッドホンを紹介します。ヘッドホン・イヤホン道の道は果てしない。
ShinSha