どうもShinShaです。今回は1936年に作曲された、古いスタンダードナンバー「ジーズ・フーリッシュ・シングス」の記事です。90年も愛されてきた、切なく美しい失恋の歌です。
古い名曲だけあって良い演奏がいっぱい。今回は選曲がとても大変でした。いつものように、よりすぐりのジャズ演奏を6曲選びました。今回はブラッドメルドー、レイヴェイなど、新しいアーティストの演奏も選曲しています。ぜひ聴いてみてください。
- 「ジーズ・フーリッシュ・シングス」These Foolish Things
- 「ジーズ・フーリッシュ・シングス」の名唱・名演奏
- サブスクミュージックでジャズを聴こう
- 記事で採り上げたアルバムのamazonリンク
- おわりに
「ジーズ・フーリッシュ・シングス」These Foolish Things
楽曲について
この曲は英国で生まれ、BBCラジオ番組で放送されました。エリック・マシュウィッツは、若い頃に恋愛関係にあった女優をイメージして詞を書いたそうです。美しく切ない歌詞とメロディ。魅力ある楽曲です。だから90年も歌い継がれているのだと感じます。
“These Foolish Things (Remind Me of You)”は、エリック・マシュウィッツがホルト・マーベル名義で作詞し、ジャック・ストラチェイが作曲したスタンダード・ナンバーである。どちらもイギリス出身の作家である。マシュウィッツが若き日に恋愛関係にあったイギリスの歌手・女優である歌手ジーン・ロスを、この曲のミューズとして挙げている。
この曲は1936年のロンドンのレビュー「Spread it Abroad」に登場したものの、大きな注目を集めることはなかった。しかし、西インド諸島出身のピアニスト レスリー・ハッチンソンが、マシュウィッツのオフィスのピアノの上に置かれていたこの曲を見つけ、録音したことで世界的な成功へとつながった。
アメリカでは、1936年にベニー・グッドマン、テディ・ウィルソンとビリー・ホリデイなどによって人気を博した。特にビリー・ホリデイがテディ・ウィルソンのオーケストラとともに歌ったバージョンは、Billboardのポップ・ソング・チャートで最高5位を記録した。
引用:Wikipedia
歌詞
切なく美しい詞です。身の回りのありふれたもの、些細なことから別れたあの人を思い出してしまう。失恋の痛みが心に伝わってきます。
別れた直後なんですね。思い出の品がいろいろ部屋の中にある。口紅のついたタバコ、二人で行くはずだった旅行のエアチケット、おまけにストッキングまで (^^;; 男は別れた人への思いを引きずるものです。歌詞が胸に沁みます。
今回の歌詞の翻訳もほとんどChatGPTによるものです。本当に楽になりました。
These Foolish Things(Remind oh You)
Oh will you never let me be?
Oh will you never set me free?
The ties that bound us are still around us
There's no escape that I can see
And still those little things remain
That bring me happiness or pain
ああ、君は決して僕を解放してくれないのか?
ああ、君は決して僕を自由にしてくれないのか?
二人を結んでいた絆はまだここにあり
逃れる道は見つからない
そして些細なものがここに残っていて
僕に幸せや痛みをもたらすんだ
A cigarette that bares a lipstick's traces
An airline ticket to romantic places
And still my heart has wings
These foolish things remind me of you
A tinkling piano in the next apartment
Those stumblin'words That told you what my heart meant
A fairground's painted swings
These foolish things
Remind me of you
口紅の跡がついたタバコ
ロマンチックな場所への航空券
いまでも僕の心には翼がある
そんな些細なものが君を思い出させる
隣の部屋から聞こえるピアノの音
心を伝えた たどたどしい言葉
遊園地のカラフルなブランコ
そんな些細なものが君を思い出させる
You came
You saw
You conquered me
When you did that to me
I knew somehow this had to be
The winds of March That made my heart a dancer
A telephone that rings But who's to answer
Oh, how the ghost of you clings
These foolish things
Remind me of you
君はやって来て
僕を見て
君は僕を征服した
その瞬間に
これが運命だと分かっていた
三月の風が 僕の心を踊らせた
電話が鳴る でも誰が出るのだろう
ああ 君の幻はどれほど僕にまとわりつくのか
そんな些細なことが君を思い出させる
First daffodils
And long excited cables
And candle lights
On little corner tables
And still my heart has wings
These foolish things remind me of you
The park at evening
When the bell has sounded
The Isle de France
With all the gulls around it
The beauty that is spring
These foolish things
Remind me of you
最初に咲く水仙の花
長く興奮した電報
小さなテーブルに灯るキャンドル
いまでも僕の心には翼がある
そんな些細なものが君を思い出させる
夕暮れの公園
鐘の音が鳴り響く
カモメが舞うイル・ド・フランス
春という季節の美しさ
そんな些細なものが君を思い出させる
How strange
How sweet
To find you still
These things are dear to me
They seem to bring you near to me
The sigh of midnight trains
At empty stations
Silk stockings thrown aside
Dance invitations
Oh how the ghost of you clings
These foolish things
Remind me of you
Gardenia perfume
Lingering on a pillow
Wild strawberries
Only seven francs a kilo
And still my heart has wings
These foolish things
Remind me of you
なんて不思議
なんて甘美なのだろう
まだ君を見つけることができるなんて
これらのものは僕にとって大切で
君をそばに感じさせる
真夜中の駅に響く列車のため息
脱ぎ捨てられたシルクのストッキング
ダンスパーティーの招待状
ああ 君の幻はどれほど僕にまとわりつくのか
そんな些細なものが君を思い出させる
ガーデニアの香水が
枕にほのかに残る
野いちごが
1キロ7フランだったこと
それでも僕の心には翼がある
そんな些細なものが君を思い出させる
The smile of Garbo
And the scent of roses
The waiters whistling
As the last bar closes
The song that Crosby sings
These foolish things
Remind me of you
How strange
How sweet
To find you still
These things are dear to me
They seem to bring you near to me
The scent of smoldering leaves
The wail of steamers
Two lovers on the street
Who walk like dreamers
Oh how the ghost of you clings
These foolish things
Remind me of you
ガルボの微笑み
バラの香り
最後のバーが閉まる時のウェイターの口笛
クロスビーが歌うあの曲
そんな些細なものが君を思い出させる
なんて不思議で
なんて甘美なのだろう
まだ君を見つけることができるなんて
これらのものは僕にとって大切で
君をそばに感じさせる
くすぶる落ち葉の香り
蒸気船の汽笛の響き
夢見るように歩く恋人たち
ああ、君の幻はどれほど僕にまとわりつくのか
そんな些細なものが君を思い出させる

「ジーズ・フーリッシュ・シングス」の名唱・名演奏
ジャズ・スタンダードを聴く楽しみは、アーティストの演奏の聴き比べです。この曲にはどんな名演があるのだろうか?今回も新旧織り交ぜてとっておきの演奏を紹介します。

[ボーカル曲]
最初はビリー・ホリディの曲。可愛らしさを感じる歌声です。彼女の歌には独特の味があるなぁ。もろく崩れそうな魅力を感じる。曲のエモーションが胸に響いてきます。バックバンドは最高のメンバー。オスカー・ピーターソンのピアノが美しい。
エラの曲も素晴らしい。真っ直ぐに伸びる艶のある歌声。エモーションたっぷりの最高のボーカル。しかもこれがライブ録音なのだから驚きです。この曲がお気に入りだったのかな。エラはいくつも録音を残しています。バッキングはホリディの曲と同じ、レイ・ブラウンとオスカー・ピーターソン。最高のチューンです。
最後はYouTubeの音源から選曲。歌っているのはレイヴェイとクラウディアのピアノの弾き語りです。レイヴェイの声は美しいなぁ。彼女はクラシック音楽ではチェロのソリストだし、ギターもピアノも弾ける。こういう若くて才能あるアーティストがジャズを歌ってくれることは嬉しいですね。レイヴェイの歌に癒されるぅ〜
🔳 ビリー・ホリディ
Billie Holiday “Solitude” 1952
Bass – Ray Brown , Drums – Alvin Stoller , Guitar – Barney Kessel , Piano – Oscar Peterson, Vocals – Billie Holiday
🔳 エラ・フィッツジェラルド
Ella Fitzgerald “Ella Fitzgerald At The Opera House” 1956
Bass – Ray Brown, Drums – Jo Jones , Guitar – Herb Ellis , Piano – Oscar Peterson , Vocals – Ella Fitzgerald
🔳 レイヴェイ
最近のお気に入りレイヴェイが YouTubeでこの曲を歌っていたのでリンクを載せます。残念なことにこの曲、彼女のアルバムに入っていないのです。
These Foolish Things - Laufey + Claudia Nketia

[インストルメンタル]
スタン・ゲッツも素晴らしい演奏を残しているのだけど、今回もアート・ペッパーを選んでしまった。初期の短いけれど心に残る演奏です。中盤のソロはいかにもペッパーらしい歌心を感じます。この人の演奏は聴き終わるといつも寂しくなる。それが大きな魅力なのです。
続いての選曲はニールス・H・O・ベデルセンとミッシェル・ペトルチアーニのデュオ演奏。ペトルチアーの輪郭の際立ったピアノとベデルセンの深く美しいハーモニックス。二人のインタープレイが素晴らしい演奏です。
最後はブラッド・メルドートリオの演奏。曲をより自由に解釈してプレイしている。ゆったりしたオーソドックスな演奏の中にも、ハーモニーと音の響きが現代的ですね。後半のメロディを崩したプレイが印象的です。曲の美しさを強く感じます。この人は凄まじいテクニックに加えて歌心があります。
🔳 アート・ペッパー
Art Pepper “Surf Ride Master Takes” 1952
Alto Saxophone – Art Pepper, Bass – Joe Mondragon,
Drums – Larry Bunker , Piano – Hampton Hawes
🔳 ニールス・H・O・ベデルセン & ミッシェル・ペトルチアーニ
“Michel Petrucciani and Niels-Henning Orsted Pedersen” 2009
Bass – Niels-Henning Orsted Pedersen, Piano – Michel Petrucciani*
🔳 ブラッド・メルドー
Brad Mehldau “Blues and Ballads” 2016
Bass – Larry Grenadier, Drums – Jeff Ballard , Piano – Brad Mehldau

サブスクミュージックでジャズを聴こう
サブスクミュージックでジャズを聴きましょう。今回のスタンダードの名演、名曲はすべてApple Musicで聴くことができます。しかも音質も素晴らしい。
Apple Musicでロスレス、ハイレゾ音源のジャズ名盤を聴きましょう😊
記事で採り上げたアルバムのamazonリンク
おわりに
新しいヘッドホンを購入したので、このところエージングをしながら毎晩ジャズを聴いています。90年前に作られた美しい曲を世界中のアーティストがそれぞれの楽器、歌声を使って自由に表現しています。ジャズって素晴らしいですね。
今回紹介した演奏は、どれもすごく気に入っています。全曲を聴いていただけると嬉しいです。ジャズは最近人気がないけど、レイヴェイみたいな全世界でブレイクしたアーティストが歌ってくれると復活できるかな。それにしても彼女の歌には癒されます。
Googleディスカバーに記事が掲載されて先月からアクセスが急増し、すっかり怠けモードでした。しかし、最近になって急落(涙)。やはり人生は思うようにいかないようにできている。真面目に記事書かなきゃ、と感じている今日この頃です。
ShinSha



