時の化石

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ヘッドホンレビュー SENNHEISER HD25 - 発売以来37年生き延びたモニターはやはり怪物だった

どうもShinShaです。今回はゼンハイザーのヘッドホンHD25のレビューです。発売以来30年以上も世界中のDJブースやスタジオで使用されているモニターヘッドホンです。また、一般のユーザにも長い間愛されている製品です。

最近、密閉型ヘッドホンを探していました。店舗でHD25を見かけて、webのレビューを調べるととても評価が高い。ある種カルト的な人気があるこのヘッドホンに興味を持ちました。購入して家でじっくり2週間聴きました。やはりゼンハイザーはすごい!このヘッドホンの強いビート感、カラフルなサウンドにハートを撃ち抜かれました。

以下にゼンハイザーHD25について詳細にレビューします。

SENNHEISER HD25

SENNHEISER社 について

ゼンハイザー社は Fritz Sennheiser 博士によって1945年に設立されました。創業以来、3世代80年にわたって家族経営によるオーディオ製品の開発と製造販売を行っています。音楽のデジタル化によって歴史ある数々の音響製品メーカーが勢いを失う中、ゼンハイザー社はブランド価値を保ち続けてきている企業です。

ゼンハイザー本社(ドイツ,Wedemark)、https://newsroom.sennheiser.com/ から転載

ところが、2022年にゼンハイザー社はスイスのSonova(ソノヴァ)社にコンシューマー製品部門を譲渡したました。ソノヴァ社はスイスに本社を置く補聴器、聴覚機器などの分野で世界トップの企業です。譲渡対象となったのは、ワイヤレスイヤホンやヘッドフォンなどの機器です。

これは大きな驚きでした。ゼンハイザーでさえコンシューマー部門は苦戦しているんだ。ブランド価値は保ってきたけれど内実は厳しかったのでしょう。おそらく安価な中国製品進出の影響ですね。

ソノヴァ社に譲渡した製品にはHD 800やHD 600などのヘッドホン製品、インイヤーモニターIE 800、IE 300などが含まれています。一方、HD 25などのスタジオモニター、製品名に”PRO”が付くヘッドホン・IEM、マイク製品は譲渡の対象外であり、ゼンハイザー社プロ部門が引き続き製品を製造・販売します。今回購入したHD 25はゼンハイザーが引き続き製造販売しているスタジオモニターです。

久しぶりにゼンハイザー社のwebをみましたが、ヘッドホンとして情報掲載されているのはHD490PROとHD25だけです。モニターはIE100PRO CLEARのみでした。IE100PROもカラーがCLEAR(透明)だけとは知らなかった。ということはREDとBLACKはソノーヴァ社ということなのか・・・(汗)
ゼンハイザー本社全景(ドイツ,Wedemark)、https://www.soundhouse.co.jp/ から転載

SENNHEISER HD25

ゼンハイザーH25の歴史を調べてみました。1988年製品が発売。当初は航空機内での使用を想定したモデルであったそうです。その後、放送・録音現場やライブサウンド業界、クラブDJの間で急速に普及。

2000年代に製品のマイナーチェンジが行われ、そして2016年にヘッドバンド、コードなどが改良され現在に至っています。ドライバーについては、どうやら1988年からほとんど変えていないようですね。これはこれでスゴイな。

ゼンハイザー社によるHD25の製品説明を下に引用します。

HD 25 は非常に軽量で、長時間の装着も快適。DJ ヘッドホンとして「業界のスタンダード」となったこのヘッドホンは、大小を問わず世界中の DJ ブースでその姿を見ることができます。

軽量であること、そして片耳で使用できることから、HD 25 のヘッドホンは動きながらのモニタリングには欠かせません。密閉型の HD 25 は周囲の雑音を高度に減衰する、プロに最適なモニタリング用ヘッドホンです。

非常に高い音圧レベルにも対応でき、作りも頑丈なため、たとえば ENG 、SR 環境、スタジオ内でのモニタリングやオーディオ機器テストなど、騒音に囲まれた場所で大いに活躍します。カメラマンや DJ に最適なこのモニタリングヘッドホンは、音響を生業とするプロのためのヘッドホンです。


ゼンハイザーHD25、https://www.amazon.co.jp/ から転載

製品仕様

SENNHEISER HD25
形式:ダイナミックドライバ φ27 mm・密閉型 
再生周波数帯域:16Hz〜22KHz
筐体素材   : 樹脂
インピーダンス: 70 Ω、感度:120 dB/mW
接続プラグ  :3.5mm(ミニ)、6.3mm(標準)変換アダプター付属
ケーブル:1.5 m ストレート ( 片出し右側 )、1.5m カールコード
質量:166g(ケーブル、プラグ含む)
付属品:6.3mm変換アダプター,接続ケーブル ( 2タイプ ),ベロアイヤーパッド,キャリングポーチ

ゼンハイザーHD25、https://www.amazon.co.jp/ から転載

製品レビュー

総合評価

SENNHEISER HD25
総合     :☆☆☆☆☆
デザイン・質感:☆☆☆☆☆
装着感    :☆☆☆☆
サウンド   :☆☆☆☆☆
定位・空間表現:☆☆☆☆

<音質バランス>

購入ヘッドホンの写真

HD25がやってきた。外箱のデザインはこんな感じです。僕はカールケーブル、ファブリックパッドの付属したHD25 PLUSの方を購入しました。

パッケージ

箱に入っていたものすべて写真に撮りました。ストレートケーブル、カールケーブル、交換用パッド、巾着袋。袋は別に欲しくないけど。

箱の中身をすべて

HD25の写真を2枚UPしますね。

ゼンハイザーHD25

ゼンハイザーHD25

僕はHD490PROのユーザーです。もっているHD490PROと大きさの比較をしてみました。こんなに大きさが違う。ハウジングを比べるとHD25がいかに小さいか分かります。

HD490PROと大きさの比較。左:HD25、右:HD490PRO
HD490PROとハウジングの大きさがこんなに違う

[コメント]
ゼンハイザーHD25はデビュー以来37年、世界中のスタジオ、DJブースで使われている怪物ヘッドホンです。小さくて軽いオンイヤー型のヘッドホン。華奢だけど頑丈で壊れない構造、まさに現場で使うことを優先して設計されたモデルです。

このヘッドホンが長寿モデルである理由として、chatGPTは4つの点を挙げました。それは、「高い耐久性」「軽量・高遮音性能」「音質バランス」「ブランドの信頼性」です。それに加えて、コストパーフォーマンスの高さも理由の一つでしょう。

外見からは本当にこれで良い音がでるの?と思ってしまいますが、そこはゼンハイザー。この製品は小さなボディからは想像できないほどエネルギーに満ちた音を出します。再生音は歪みや音割れもなく、浮かび上がる音像はクリアです。

HD25の音質は低域を強調しているので、ビートを強く感じる特徴があります。マニアの間では「弾む低音」「中毒性のある音」といわれています。こんな話が耳に入ると興味津々。「中毒性のある音」ってどんなんだろう?その秘密を知りたいと思いました。海外サイトにHD25の周波数応答曲線が掲載されていたので転載します。

HD25の周波数応答、RTINGS.comから転載

まずHD25の周波数応答をみると全体的にフラットでバランスが良い音質だということが分かります。しかし低域と高域にかなり特徴があります。

このヘッドホンの低域・中低域は100〜400 Hzの音域がハーマンカーブより音圧がかなり高いのです。つまり低域の高域寄りの音域が強調されている。「中毒性のある音」の正体は、この特徴によるものです。また、全体的には低域のボリュームは少なくなっています。

この周波数応答パターンはどこかで見たことがあるなぁ。思い浮かんだのは、オーディオテクニカATH-M50xでした。ATH-M50xも豊かな低域の音の評価が高く、米国の多くのスタジオで採用されている製品です。この周波数応答パターンはビートを強調するためのテクニックなのでしょう。

次にHD25の中高域・高域については中高域4〜6kHzの音域がドロップ、高域8〜10kHzがかなり強調されています。これにより、楽曲によってはボーカルの一部が聞き取りにくくなったり、倍音が強調されて聴こえるでしょう。また長時間聴くと耳が疲れるかもしれません。聴き込んでいくうち、低域を強調しているゆえに高域を強調するのだと感じました。そうしないとHD25のサウンドは成立しないのだと。
周波数応答からは以上の特徴が読み取れます。

初めてHD25をじっくり聴いた時、少し面くらいました。低域のボリュームが少なく、いつも聴いているジャズの曲がかなり違って聴こえたのです。しかしポップスを聞いてみると実に良い。ビートルズ、米津玄師、Vaundy なんかめちゃくちゃ良い!

さらに大好きな伊勢正三山下達郎竹内まりやの楽曲を聴いてみるとこれも素晴らしい。HD25はポップス、ビートが聴いた音楽のリスニングに適したヘッドホンだと思いました。音楽のジャンルでは、ロック、ヒップホップ、EDMなどが非常に合うヘッドホンです。ジャズはアコースティックよりエレクトリックかな。ボサノヴァなんかはとてもよく合います。

加えて、HD25はゼンハイザーのヘッドホンの魅力をもっています。それは解像度の高さです。重ねられたすべての音を細部まで聴き取ることができるような気さえするのです。音楽を聴いていると色とりどり、カラフルな音が本当に心地良いんです。さすがに世界中のクリエーターが30年以上も使ってきたモニターだと思いました。

僕が聴いたHD25の音の印象について以下に詳しくレポートします。


ゼンハイザーHD25を装着してレコーディング、https://www.amazon.co.jp/ から転載

サウンド・インプレッション

最初はポップスの楽曲を聴きました。僕の中ではこのヘッドホンは「ビートルズ・ホン」なのです。HD25でビートルズの楽曲を聴くと、何度も聴いた名曲が驚くほど新鮮に響いてきます。キレのあるビート、解像度の高い音が曲の印象を作り変え、新しい感動があるのです。

アルバムAbbey Roadから先ず ”Come Together” 。バスドラ、ベース、ギターが生み出す、独特のリフがカッコいい。強いビートに反応して身体が自然に踊り出す。ジョンが歌う ”一緒にいこう”。この強いビートに乗れば一緒に行ける気がする。

続いて” Something”。ジョージが書いた美しいチューン。強いビートに乗ってジョージのギターとボーカルが美しいメロディを奏でる。いろんな音が重ねられている。ベース、ギター、ドラムス、コーラスにストリングス、オルガン、ハーモニカ・・・。このアルバムはビートルズが初めて8トラックで録音した作品だ。とにかくいろんな音が聞き取れる。やはりゼンハイザーのモニターはスゴイ。

"Abbey Road- The Beatles" by beatles maniac11 is licensed under CC BY 2.0.

続いて日本のポップスを聴いてみた。米津玄師 ”Looser”。このイントロは凄まじいほど迫力があってカッコいい。スピード感ある音が気持ち良いです。続く ”アイネクライネ” では一転して、アコースティックギターの美しい響きと瑞々しいボーカルを聴かせてくれる。

世界中でヒットしたシティポップの名曲、竹内まりや “プラスティック・ラブ ”。おそらく、これまで数百回聴いてきた曲ですが、HD25で聴くと本当に素晴らしい。まりや様のボーカルが瑞々しい。ここでこういう音が聞こえるはずと思いながら聴いていると、ストリングス、ブラス、ギターが気持ちよく良く耳に入ってくる。何というか音が新鮮でカラフルなのだ。もう最高です!

ジャズの楽曲では、アコーステックよりエレクトリックが似合います。久しぶりにPMGのアルバムを聴いてみる。”Slip Away”。ラテンのリズムに乗ったメセニーのギター、メイズのピアノが素晴らしい。続く “Letter from Home”では一転して、ピアノとアコーステックギターの美しいメロディが印象的。

このヘッドホンの音の魅力はビート感、音のキレ、そして高い解像度が作る豊かなサウンドです。クラシックでは少しピアノ交響曲を聴いてみましたが、解像度の高い弦楽器の響きがなかなか良かったです。やはりこのヘッドホン只者ではない。素晴らしい製品だと実感しました。

試聴曲

[Pops]
The Beatles : Abbey Road  ”Come Together” “Something”、 竹内まりや : Expressions “プラスティック・ラブ ” “駅” 、米津玄師 : BOOTLEG “Looser” 、YANKEE “アイネクライネ”、Vaundy “風神”
[Jazz]
Pat Metheny Group :Letter from Home “Slip Away” “Letter from Home”
[試聴環境]
音源:Apple Music (ロスレスハイレゾロスレス)、DAC: S.M.S.L DO 400

デザイン・製品の質感

材質はすべてプラスティックで出来ていて一部ケーブルも剥き出しです。一見オモチャのようですがチープ感はありません。とても機能的なデザインです。ヘッドホン自体は100g程度と最軽量の製品です。小さく軽量だけど頑丈に作られていて、さまざまな試行錯誤から生み出されたデザインだと感じます。

ハウジングも上下移動だけでなく、前後にも180度回転させられる仕様 となっており、左右の耳の位置の微調整はもちろん、DJには嬉しい片耳だけでのモニターにも対応しています。とにかく現場で使いやすいように様々な工夫がされています。

装着感

ヘッドホンは軽量で、ヘッドバンド180° 開くため3次元的に頭部にフィットします。本製品の装着感は好みが分かれるところです。イヤーカップで耳をしっかりホールドし外部騒音を低減するために側圧が高めです。このため、本製品は音漏れが少ないです。製品改良がされており、側圧は思ったほどではなかったけど、長時間の着用が難しい人もいるかもしれません。

個人的には夏場にこのヘッドホンを使いたいと考えています。この製品は耳を覆わない構造だしパッドは感触がよい合成皮革製なので、夏用ヘッドホンとしてはベストだと感じています。

音場・定位感

定位は正確です。音場はスタジオ程度のそこそこの広さを感じます。小さなオンイヤータイプの製品なのに、音場や定位をきっちり作り上げる。さすがはゼンハイザーだと感じました。

記事で採り上げた商品のリンク


HD25にはお値打ちなLIGTバージョンもあります。オリジナルモデルよりヘッドバンド、ケーブルなど変更されています。音質の傾向は同じですがドライバーが違うようです。HD25よりこちらの音が好みという人もいらっしゃいます。

おわりに

エージングのために、他のヘッドホンの利用を止めて、ひたすらHD25で音楽を聴きはじたのですが、次第にポップスやロックを聴くようになりました。このヘッドホンに合う、心地よい音楽を自然に選んでいます。そういえば最近はヘッドホンでこういう音楽をあまり聴いてなかったなぁ。

最初は戸惑いを感じたものの、少しずつHD25にハマってきています。気分がいい夜中にVandy ”風神”やビートルズ ”Back in USSSR” を大音量で聴いて踊ったりしても、家族から苦情がこない(笑)といのうは実に素晴らしい。そしてこのヘッドホンなら、きっと夏場も我慢して使えそうだ。

今回の結論。HD25は激しくオススメな一本。ポップス、ロック、ヒップホップ好きには間違い なく最高のヘッドホンになります。
ShinSha