どうもShinShaです。今回はAustrian Audio社ヘッドホンのレビューです。ウィーンで作られた、魅力的なサウンドを再生する密閉型ヘッドホンです。価格は20Kとコストパフォーマンスがとても高い。
マンション住まいなので、音楽はヘッドホン、イヤホンで聴いています。昼間は仕事しているので音楽を聴くのは夜。どうしても密閉型ヘッドホンが必要になります。お気に入りのSennheizer 開放型ヘッドホンを持っていますが、家族からは「ヘッドホンなのに何であんなに音が漏れるの?訳わかんない」と手ひどいクレーム。音の良い密閉型ヘッドホンを探すことが個人的な急務でした。
そんな時、ショップで出会ったのがAustrian Audio Hi-X20です。密閉型で音のバランスが良く、高域の響きが美しく音のキレが良い。意外と知られていないけれども魅力的なヘッドホンなのです。
Austrian Audio X20
Austrian Audio社について
Austrian Audio社は2016年にウィーンで設立されたブランドです。1994年に有名なオーディオメーカーAKG社がアメリカのハーマン・インターナショナル・インダストリーズに買収されました。同社のウィーン工場が閉鎖され、本拠地が米国カリフォルニア州に移された時に、22名のスタッフはウィーンに残りました。
現地に残った22名のスタッフは経営、音響、エレクトロニクス、テスト・測定、メカニカルデザイン、RF/ワイヤレス、ソフトウェア・ファームウェアといった分野のプロフェッショナルでした。彼らは協力して自分達のブランドを立ち上げ、マイクロホンとヘッドホンの製造を始めました。それがAustrian Audio社です。Austrian Audioは創設から未だ10年に満たない企業ですが、同社にはAKGが長年に渡って培った技術が継承されています。


オーディオ業界の国際的な再編はまだまだ続きます。ハーマン・インターナショナル・インダストリーズ はAKGのほかにもハーマン/カードン、JBLなどのオーディオ企業を傘下に収める巨大企業です。しかしハーマン・インターナショナル自体も2017年に韓国サムスン電子に買収されます。
オーディ業界の動きは本当に激しいなぁ。ちなみに日本のデノンなんかも、今はサムスン電子〜ハーマン・インターナショナルの傘下企業となっています。彼らが狙っているのオーディオで最もボリュームがあるカーオーディオのフレーム。ゼンハイザーもコンシューマ向け製品部門をスイスの補聴器メーカーに売却してしまった。オーディオファン向けに良いヘッドホン製品を作る企業がどんどん無くなっていきますね。
そしてなんと、2025年1月に Austrian Auduio社はデンマークのDPA Microphonesにより買収されました。同社のCEOはAustrian Audioのブランドはそのままでウィーンで製造を続けると話しています。DPA Microphonesはマイクロホンが主力の企業であるため、これまで開発してきたヘッドホンなどの製品はそのまま残るように思います。良い製品を作っているので、今後も事業を継続してして欲しいと思います。

Austrian Audio X20
Austrian Audioのヘッドホンの魅力はHi-Xドライバーの生み出すサウンドです。Hi-Xドライバーの主な特徴は下のとおりです。様々な新しい改良が加えられています。
(1)高い空気移動量と強力な磁力
44 mmという比較的大きめのドライバーに、高度なリング磁石システム を採用しており、ドライバー内の磁界が非常に強い設計になっています。これにより効率よく空気を動かせるような設計をしていいます。
(2)軽量かつレスポンスに優れた構造
銅被覆アルミニウムボイスコイル と組み合わせることで、ダイアフラム+ボイスコイル全体の重量を軽減。これが高速な動きにつながり、トランジェント(音の立ち上がり)の鋭さ や繊細さを高めています。

(3) 高精度・低歪のサウンド
大口径ドライバーは多くの空気を振動させられる一方、独自の設計で ダイアフラムのぐらつきを抑制。さらに膜の剛性を高めて不要な共振を減らすことで、クリアでフラットな音再生を実現しています。
Austrian AudioのXシリーズヘッドホンにはHi-X1〜x65まで6種類の製品があり、価格帯は10k 〜55Kと開きがあります。しかし驚くことに使っているドライバーはすべて同じ。もちろんパーツやチューニングは異なるのでしょうが、ちょっと信じられないことです。おそらく新しい企業なので資金的に多くのドライバーを開発する訳にはいかないのでしょう。従って下位モデルも十分な性能をもつおトクな製品だといえます。
僕がX20を選んだのは、X15〜X60の5種類の密閉型ヘッドホンを試聴して一番音が気にいったから。上位モデルは確かに素晴らしいですが、モニター特有の中高域を強調したチューニングになっている。これだと聴き疲れをしてしまうのでリスニングには向きません。僕にはX20の音のバランスがちょうど良かった。このヘッドホンは中高域〜高域の音が美しく、またキレの良いサウンドを楽しめる点が気に入っています。下位モデルのX15が結構売れているようですが、聴き比べてみるとX20の方が低域の量感があり、また全体にブラッシュアップされた音だと感じます。
製品仕様
Austrian Audio X20
形式:密閉型、44 mm ダイナミックドライバー
再生周波数帯域:12Hz〜24KHz
筐体素材 :アルミニウム、樹脂、スチール
インピーダンス: 25 Ω、感度:113 dB/mW
接続プラグ :3.5mm(ミニ)、6.3mm(標準)アダプター付属
質量:255g(ケーブルなし)
付属品:キャリングポーチ、標準変換プラグ、ケーブル(3m)

購入ヘッドホンの写真
Austrian Audio Hi-X20がやってきた。シンプルな外箱です。箱の中味はヘッドホンポーチとケーブル。余分な付属品は必要ないですね。


シンプルで機能的なデザインは美しいです。Hi-X20はスタジオモニターであるため、小さくたたむことができ持ち運びは容易です。製品のビルドアップは良好で、長期間の使用に耐えるようヒンジ部分には金属製パーツを採用しています。

ハウジングの中にLRの文字が大きく表示されています。老眼の僕にはLRの判別に迷うヘッドホン製品がほとんど。使いやすく設計されていますね。


製品レビュー
総合評価
Austrian Audio Hi-X20
総合 :☆☆☆☆☆
デザイン・質感:☆☆☆☆
装着感 :☆☆☆☆☆
サウンド :☆☆☆☆☆
定位・空間表現:☆☆☆☆
<音質バランス>

[コメント]
Austrian AudioのHi-Xドライバーの再生音は軽量化とネオジウム磁石を採用した強い磁界により、トランジェントの鋭さと繊細さを合わせもっています。これにより音楽の豊かな表現力、スピード感あふれたサウンドを生み出すことができるのです。
ヨーロッパのヘッドホンやイヤホン製品はクラシック音楽を美しく再生する性能をもっています。ゼンハイザーie 100 PROを聴いた時にそう感じました。ほかのジャンルの音楽をいろいろ聴いてもパッとしない印象だけど、ピアノ協奏曲を聴いてハッとした。求める基本性能はそこにあるのです。
Austrian Audio Hi-X20はクラシック音楽の都、ウィーンで作られた製品です。AKG社で培われた技術がベースにあって、その上に新しい個性が載せられている。ピアノの音の美しさ、オーケストラの奏でる音の解像度と音の広がりにそういった伝統を感じます。その上に現代的なポップミュージック再生に求められるスピード感、アタック感、ノリをうまく再生する性能が加えられている。だからジャズ、ポップスを聴いても素晴らしいです。音楽を聴いていると20kという価格が信じられません。コストパフォーマンスが極めて高いヘッドホンです。
サウンド・インプレッション
最初に米津玄師 “KICK BACK”を聴きました。アニメ『チェンソーマン』のテーマ、世界中でヒットしたチューンです。高速ドラムビートとうねる様なベース音が重なるドラムンベース。その上に電子音、ノイズを重ねた作りになっています。この曲をヘッドホンで再生するのはとても難しい。リズムの変化が激しく色々な音が重なっているので、ハウジングの中で干渉し合って音がつぶれてしまう。特に密閉型ヘッドホンで聴くと音が団子状になってしまう。
Hi-X20で聴いた “KICK BACK”は感動的でした。スピード感と迫力にあふれ、さらにミックスされた複雑な音を解きほぐすように聴き取ることができる。際立った解像度がある。これまでヘッドホンで聴いた中では1番のサウンドです。Austrian Audio の実力に驚きました。
続いて、女性ボーカル。お気に入りのレイヴェイの ”Bewitched”。豊かなオーケストラのサウンドと彼女のシルキーなボーカルが溶け合ってうっとりするほど美しい。サウンドの中にストリングス、フルートなど重ねられた色々な音が聴こえてくる。
次にジャズを聴きました。メロディ・ガルドー ”ファースト ソング”。最初のベースの響きから素晴らしい音。ベースはチャーリー・ヘイデン自身の演奏なのですね。深く沈むベースと美しいピアノの響き。倍音いっぱいのガルドーのやわらかなボーカルが艶かしい。素晴らしいジャズを表現してくれます。
最後にクラシック。グラムフォンに移籍して演奏にますます凄みが増している辻井君の新しいライブ録音。聴いたのはベートーヴェンピアノソナタ No.14 「月光」。ピアノのハイトーンがきらめくように美しい。Hi-X20は音の陰影、繊細な響きを見事に表現してくれます。第3楽章の凄まじいばかりの高速アルペジオを余裕を持って再生してしまう。このヘッドホンのスピード感は素晴らしい。音場はコンサートの会場にいるような自然な印象です。

試聴曲
[Pops]
米津玄師 : LOST CONER “KICK BACK”、Laufey : Bewitched ”Bewitched”
[Jazz]
メロディ・ガルドー: The Essential Melody Gardot “ファースト・ソング”
[Classic]
辻井伸行:ヴェルビエ音楽祭デビュー・リサイタル “ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調《月光》”
[試聴環境]:
音源:Apple Music (ロスレス、ハイレゾロスレス)、DAC: S.M.S.L DO 400
デザイン・製品の質感
スタジオで使用するために開発されたシンプルかつ機能的なデザインです。ビルドアップクオリティも良好です。
装着感
本体は軽量、低反発イヤーパッドを採用しており装着感は良好です。長時間着けていていもストレスは感じません。
音場・定位感
Hi-X20の定位は正確です。密閉型としては音場が広め、適度な左右の分離感を感じます。
記事で採り上げた商品のリンク
おわりに
ヘッドホンはやはりヨーロッパの製品が一番。ゼンハイザー、beyerdynamic、AKG、Meze オーディオなどのブランドに数々の素晴らしい製品があります。この分野も中国製品の台頭が著しいけど、基本的にヘッドホンはまだまだ。(HIFIMANは確かにスゴイけどね)今回紹介したAustrian Audio Hi-X20はAKG社の正統的な血筋を引き、さらに現代的な性能が加わった製品です。こういう隠された良品を見つけることもオーディオを趣味とする楽しみです。
このクラスは競合ひしめくゾーンですが、その中でもHi-X20 の美しい高音、スピード感あるサウンドは魅力的な個性だと感じます。あなたのヘッドホン購入の参考となれば幸いです。
ああ、サボりぐせが抜けなくていけない。しばらく前からAmazonのインフルエンサー・プログラムに登録されたので、オーディオ記事がそれなりの収益を生むようになりました。もっと記事を書かなければといけないのですが、なかなか執筆が進みません。何だか書くコツを忘れてしまったような。と思っていたらもう年末 (^^;;
少し前から大きな波に巻き込まれていて、来年は仕事がさらに忙しくなります。そして春までに神奈川県に引っ越すので、これから準備が大変です。来年もぼちぼち記事を書いていきたいと思います。時々、行方不明になると思いますが、今後ともよろしくお願いします。
ShinSha
