どーも ShinShaです。
大人の科学5回目の記事はヒトとウィルスの関係がテーマです。
ウィルスは元々生物の遺伝子の一部が外に出たもの。
進化のためには、なくてはならない存在なのです。
ヒトとウィルスのただならぬ関係。
ヒトゲノム30億個のうち40%はウィルス由来のもの。
これは恐ろしい数字ですね💦
ウィルスは人間にとって必要不可欠かつアブナイ存在。
奇跡のような自然界の仕組みに、ただただ驚きです。
ウィルスの起源
まず最初にウィルスの起源、つまりウイルスがどうやって誕生したか勉強してみましょう。
現在の代表的なウィルスの起源を仮説は3つです。
それぞれの仮説の概要は下記のとおり。
仮説①は生物から飛び出した細胞が、細胞膜や代謝機能などを失って、タンパク質の殻に核酸だけが入っている構造になったというもの。
仮説②は細胞の中にあるプラスミドが外に飛び出して、ウイルスに変化した。
単細胞生物は細胞の中に環状のDNAでできたプラスミドをもつことが多く、これが外に飛び出したものがウィルスに変化したという説です。
仮説③は最初にRNAがあって、その一部がタンパク質の殻を獲得してウィルスになった。 別の進化ではDNAをもつ細胞に進化した。
引用:武村政春「新しいウイルス入門 単なる病原体でなく生物進化の立役者? (ブルーバックス)」、講談社
仮説①、②は元々細胞があって、そこからウィルスが生まれたとするものです。
これらの説では、ウィルスが生物の細胞の内部に入って増殖する、細胞依存性の説明がしやすい特徴があります。
仮説③は、元々あったRNAがタンパク質で覆われてウイルスができたというシンプルな説ですが、細胞依存性の性質を説明することが難しいのです。
ウィルスの起源については、このほか諸説があります。
いずれにしてもウィルスの起源は生命の起源とも関係し、簡単に解明できるようなものではないそうです。
しかし、問題はなぜこんな呼吸も代謝もしないモノが、厳しい自然界の中で存続していけるかです。
だって自分では動けもしないし、食べ物も取らないのですよ。
どこかのヒモくんみたいに、養ってあげるおネエさんがいないと、彼らは生きていけないハズです。
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ヒトとウィルスのただならぬ関係
福岡伸一さんの気になるエッセイ
じつは昨年の夏に読んだ『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』 (朝日新書)に福岡さんが気になる話が書いていたのです。
ウィルスの振る舞いをよく見ると、ウィルスは自己複製だけしている利己的な存在ではない。
むしろウィルスは利他的な存在である。
今、世界中を混乱に陥れている新型コロナウィルス は目に見えないテロリストのように恐れられているが、一方的に襲撃してくるものではない。
(略)
ウィルスは宿主(感染する人間のこと)の細胞内に感染するわけだが、それは宿主側が極めて積極的に、ウィルスを招き入れているとさえいえる挙動をした結果である。
引用:『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』
うーん、「ウィルスは利他的?」、「宿主側が極めて積極的に、ウィルスを招き入れている?」。
どういう意味だろうか?
この部分が非常に気になるのでした。
さらに、さらに同じ本の中の、養老孟司さんの記事にも気になる文がありました。
ヒトゲノムの解析が進み、現在では、この4割がウィルス由来だと言われている。
この4割がどのような機能をもつか、まったく分かっていない。
ヒトゲノムの中で機能が分かっているのはわずか2%に過ぎない。
大人の科学(2)で、ヒトのゲノムは30億個だと勉強しましたね。
機能が分かっていないゲノムは、ジャンクDNAと呼ばれていますが、そのうちの4割がウィルス由来?
これもびっくりする情報です。
ヒトとウィルスはどういう関係なのでしょうか?
じつは、僕はここに大きな興味を感じて、関連の勉強を始めたのです。
"Discovery of monoclonal antibodies that inhibit new coronavirus(Wuhan virus)" by 葉 正道 Ben(busy) is licensed under CC BY-SA 2.0
ヒトとウィルスの驚きの関係
続けて、福岡伸一さんの文章から引用します。
ここにすべての答えが書いてありました。
ウィルスは構造の単純さから生物発生の時代から存在したかといえばそうではない。
高等生物が登場した後に、はじめてウィルスは現れた。
高等生物の遺伝子の一部が、外部に飛び出したものとして。
つまり、ウィルスはもともと私たちのものだった。
それが家出し、また、どこかから流れてきた家出人を宿主は優しく迎え入れているのだ。
ウィルスこそが、進化を加速してくれる役割を果たしているからだ。
親から子に遺伝する情報は垂直にしか伝わらない。
しかし、ウィルスのような存在があれば、情報は水平方向に、場合によっては種を超えてまで伝達しうるのだと。
それゆえにウィルスという存在が進化の中で温存されたのだ。
引用:『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』
ヒトでは親から子に遺伝情報を伝えるのは、とても時間がかかります。
最低でも15年くらいはかかってしまう。
ウィルスは、環境の中にある遺伝情報を、水平方向にたえず集めてヒトに伝える。
これによって、ヒトは進化を加速することができる。
ウィルスの持ち込む遺伝情報で、たとえ何万人のヒトが死んだとしても、生き残るものが出れば、種の進化のために意味はあるのです。
ウイルスは生物の進化に役立つモノであるために、生物は迎え入れてヤツラを温存をしている。
ヒトや生物がウィルスを養っているのです。
一方でヒトは免疫という、ウィルスを駆除する仕組みも持っています。
あまりに変わりすぎたモノは危険だと判断して排除するのです。
何とよくできたシステムなんでしょうか。
ただひたすらに感動するのです。
いかん、また変態だと思われる💦💦
"Coronavirus Toy" by jurvetson is licensed under CC BY 2.0
さらに、別の本 中屋敷均「ウイルスは生きている」(講談社)に、ウィルスについて興味深い話が書いてありました。
子宮で子供を育てるという戦略は、哺乳類が繁栄できているキモだと言われています。
胎盤の中にある「合胞体性栄養膜」という膜構造は、酸素や栄養を通過させるが、リンパ球などの有害なものは通過させない働きをもっています。
この膜が子宮の中の胎児を守る大事な役目を果たしいるのです。
最近の研究により、この膜を作るために重要な「シンシチン」というタンパク質がヒトのゲノムに潜むウィルスがもつ遺伝子に由来することが分かったのです。
さらに、同じ哺乳類のマウス、ウシでも同様のことが確認された。
我々の遠い祖先は「シンシチン」を提供するウイルスに感染した。
哺乳類は、いつしかその働きを利用して、胎盤を作り子孫を生み出すようになった。
そのウィルスがいなければ、現在の哺乳類はなかったのです。
大きな驚きですね。
ウイルスは、生物の進化のために必要不可欠なモノなんですね。
ヒトゲノムの4割がウィルス由来。
重要な胎児を育てる仕組みにもウィルスを利用している。
まさに、ヒトとはウィルスと一体化した生き物なのです。
ウィルスの増殖
ウィルスはセントラルドグマの仕組みを使って、宿主の細胞の中で増殖します。
この様子はまるでエイリアンみたいで、かなり恐ろしいです。
下の図はウィルスが細胞の中で増殖するサイクルを簡単に示したものです。
引用:理化学研究所計算化学研究センター https://www.r-ccs.riken.jp/fugaku/history/corona/projects/okuno/
①細胞表面のレセプタータンパク質にウイルスのタンパク質が結合する。
ウィルスの外側にあるタンパク質は、宿主の細胞表面のタンパク質と鍵と、鍵穴の関係をもっています。
②結合したウイルスが細胞に取り込まれる。
③細胞内に放出されたウイルスRNAが、コピーされると同時に細胞の機能を乗っ取り、ウイルスタンパク質を合成する。
(このタンパク質合成の過程で作られたウイルスの酵素が、仕上げのトリミングを行う)
④生成されたウイルス粒子が細胞から放出される。
ウィルスのRNAを細胞の中でコピーするとともに、リゾームーに移動して殻のタンパク質まで作らせる。
何とずうずうしいヤツらでしょうか。
ウィルスの放出には2つの種類があります。
一つは、細胞が破裂して出ていくものや、殺して出ていくものがいます。
もう一つは、静かに出ていき、この「ウイウィルス工場」をしばらく使うものもいます。
いずれにしても、恐ろしいです。
参考図書
今回の記事は下記の本を参考にして書きました。
いずれもウィルスについてやさしく解説する良書です。
また『コロナ後の世界を語る』には、各界の識者からの投稿記事が特集いてあります。
非常に勉強になります。
お時間がありましら、ぜひ読んでみてください。
- 作者:養老孟司,ユヴァル・ノア・ハラリ,福岡伸一,ブレイディ みかこ
- 発売日: 2020/08/11
- メディア: 新書
- 作者:武村 政春
- 発売日: 2013/01/18
- メディア: 新書
- 作者:中屋敷 均
- 発売日: 2016/03/16
- メディア: 新書
あとがき
ウィルスはヒトや生物が環境に適合し、進化するためになくてはならないのもの。
ウィルスに感染することは、生物にとって必然的なんですね。
生物が進化のために利用している、この仕組みを知って大変驚きました。
ヒトゲノムの30億のうちの10億個以上が、ウイルス由来だなんて、命がいくつあっても足らないような気がします💦
今日も最後までブログを読んでいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
ShinSha
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