時の化石

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曽野綾子『人間の義務』を読んで。ダメ人間にも生きる価値がある。

どーも、ShinShaです。

このところ、結構、重いテーマに突っ込んでいって、抜けられなくなってしまいます。ずっと経済が落ち込んでいく日本に、危機感あるのでしょうね。書いている間は止めることができないのです。そして翌日になって、反省するのですが後の祭りです。めんどくさいブログを読んでいただいた皆様に感謝です。

今日は、曽野綾子さんが、今年6月末に出された本を読んで、書評やら考えたことを書きます。

曽野綾子さんは、1931年生まれ、何と89歳です。彼女は、私の親の世代です。この世代の人が作家をしていること自体が驚きです。しかし、本を読んでみると。やはり素晴らしい。本書のあちこちに、様々な魅力的な物語と、老成した知恵が書かれています。

皆さんは、この世代の作家が、人生について何を考えているか、興味がありませんか?

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曽野綾子『人間の義務』 新潮新書

曽野綾子さんについて

僕は、曽野さんの小説は一作も読んだことがありません(ごめんなさい)。日本財団の理事長(1995年−2005年)をされていたことはよく知っていました。日本財団の活動原資は、ボートレースの売り上げの一部です。彼女は、あの笹川良一氏の後、理事長となり様々な福祉事業を展開していった。今でも、日本財団が寄付した福祉車両をよく見ますね。最近、日本財団は、コロナウィルス 対策として、「船の科学館」ほかで、250床の施設を提供するといった話題もありましたね。やはり、国士の団体ですね。

この人はクリスチャンです。キリスト教に関する本も書いています。

Wikipediaには、亡命したフジモリ大統領を私邸にかくまった話が、書いてあります。この人は信念の人ですね。世の中には、なかなか、笹川良一氏の後を継げる人はいません(笑)。

曽野綾子プロフィール

小説家。本名/三浦 知壽子(みうら ちずこ)。1931年9月17日~

東京都葛飾区出身。幼稚園から聖心女子学院に通い、聖心女子大学卒業。戦時中は金沢に疎開、1946年東京に戻り聖心女子学院に復学。

1951年5月、中河与一主宰の同人誌「ラマンチャ」に載った『裾野』が臼井吉見の目にとまり、臼井の紹介でのちの夫・三浦朱門らの第十五次「新思潮」に加わる。山川方夫の紹介で「三田文学」に書いた『遠来の客たち』が芥川賞候補となり23歳で文壇デビュー。以後、次々に重厚な問題作を発表していく。近年は評論が数多く出版され、ほとんどがベストセラーとなっている。1979年ローマ法王庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章、2003年に文化功労者。1995年から2005年まで日本財団会長を務めた。

引用:P+D MAGAZINE https://pdmagazine.jp/author/sonoayako/

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三浦朱門氏 と 曽野綾子氏 引用:P+D MAGAZINE

曽野綾子『人間の義務』第一部

この本は二部に分かれています。「第一部 人間の義務」、「第二部 人生の光景」。今日は、第一部について、記事を書いていきます。89歳の女流作家が書く、『人間の義務』とは何でしょうか?

人間は神に操られる「木偶」である

第1部で、印象的だったのはこの章でした。ここでは、障害のある人と一緒に、女性グループが、海外旅行に行くエピソードが語られます。障害者が混じっている海外旅行は、困難が大きくなるように見えるが、多くの場合、信じられないような助け合いが生まれ、貴重な思い出を残す。それは、一致して守るべき中心的な存在があるためで、障害者が立派にその役目を果たしてくれる、と書いております。素晴らしい話です。

そして、その団体が、坂の下や困難な階段の登りに難渋していると、必ず見知らぬ人が突然現れて手助けをしてくれて、お礼を言う前に消えていく。この続き部分を、本から引用します。

実に私たちが感動すべき物語や奇遇として、あとあとまで語り継がれるのは、小さな事故や不幸の時に、現れてくる運命の担い手のような人々のことなのである。

その役目を誰がいつどう果たすかは、ことが起こる前には決して見ることはできない。

(略)

その背後には、神の存在や、人間の深い知恵の証を見ることが多いのである。

人間は、一つの操り人形で、そこから人間は「神の木偶」であるという表現が、私にはしっくり心にしみる。

こうした感動的な話が、書かれたかと思うと、この章の最後には、私が一生に少し良いことをしても、卑怯なことをしても、それは決して私の本質ではなかった、とするりと逃げる。

頭のいい人だ。この人のレトリックは、なかなか一筋縄ではいかないようです。

人間の義務

作者は「人間の義務の最低限は、とにかく働いて、泥棒以外のことで、自分や家族のことを養っていくべきだ」と思っていたそうです。しかし、この文脈に続けて、彼女の一族と知人に、一生職業につかなないのに、立派に食べていた人が数人いることが書かれます。そのうちの、一人は美術品の売り買い、もう一人は妻以外の数人の女性に養ってもらった人だという。おお、すごい。

「生きつづける」ことだって難しい。辛い思いも生きている証。ダメ人間にも価値がある。

この本では、人生に関する様々な言葉がつづられています。

そして、最後に書いてあるのは、「成功も出世も、本当はいらないのだ。只、あまり騒ぎ立てず、穏やかな笑顔で一生を終わる。これだけが人間の義務なのかもしれない。」という言葉です。これは、キリスト教の教えなのか、老成した作家が至った境地なのか。

僕は、この言葉を噛みしめたいと思います。

人間の義務 (新潮新書)

人間の義務 (新潮新書)

あとがき

今日は、曽野綾子さんの本を紹介しました。結構、この本、売れているそうです。読んでみると、なるほど素晴らしい本ですね。

この本には、本の中で死にたいという、ご主人の作家三浦朱門氏を看取るエピソードも書かれています。感動的なお話です。

今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
最近、取り上げるテーマが、老成し過ぎているのではないか、とふと思いました。 今さらですか? 少し軌道修正していきたいと思います。 今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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