時の化石

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『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-』を読んで。驚きのウィルスと生物の関係性。どうやら、先は長そうだ。 

どーも、ShiShaです。

また、暑さがぶり返しましたね。昨日は本当に暑かったです。このところ、外部発表資料を作ったり、特許を書く仕事で忙しく、なかなかブロクを書く時間が取れません。特許書くのは、かなり集中力が必要となるので、僕の小さい脳はものすごく消耗します。新しい技術を世に出して、少しでも、世の中の役に立ちたいと思っています。特許書くのはしんどいので、もうこれが最後かな。確か、前回書いた時も同じこと考えてたな。

今日は、「コロナ後の世界がどうなっていくか?」というテーマについて、内外の識者が書いた本を採り上げてブログを書きます。現在の僕らには、この課題は最も重要です。この本の書評をこれから、3〜4回にわたって書くつもりです。現在、半分ほど本を読んでいますが、非常に興味深い、おすすめの本です。

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『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-』朝日新書

『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線- 』 第1章 人間とは 生命とは

この本は、4章に分かれており、22人の内外の識者がコロナ後の世界について執筆しています。主な執筆者は、養老孟司氏、ユヴァル・ノア・ハラリ氏、福岡伸一氏、おお、鎌田實先生も、坂本龍一氏も入っています。これは、面白そうですね。

今日は本書の中から、「第1章 人間とは 生命とは」について採り上げて、記事を書きます。

養老孟司「私の人生は不要不急なのか 根源的な問いを考える」

養老 孟司(ようろう たけし、1937年11月11日 - )は、日本の医学博士、解剖学者。東京大学名誉教授。神奈川県鎌倉市出身。2003年に出版された「バカの壁」は419万部を記録し、戦後日本の歴代ベストセラー4位となった。

引用:wikipedia

この本の最初に掲載されているのは、養老孟司氏の記事です。政治家の発した「不要不急」という言葉が、養老氏の、にがい経験を思い起こさせます。大学の解剖学助手として、働き初めて1年目、大学紛争事件が起きました。養老氏は、覆面、ヘルメット、ゲバ棒の学生20人に「この非常時に研究とは何事か」と研究室を追い出され、研究棟には入れなくなってしまった。お前の仕事なんか、要するに不要不急だろ、と実力行使されたのだ。

大学紛争が終わっても、解剖学にはどういう意味があるのかが、筆者の大きな問題として残りました。そして、夏目漱石がロンドン留学後に、学問の意義に悩んで神経症になったことを知り、すべては自分で考えるしかないという結論にたどり着きました

この記事では、次に、人とウィルスは不要不急の深い関係にあることに及ぶ。ヒトゲノムの解析が進み、現在では、この4割がウィルス由来だと言われている。この4割がどのような機能をもつか、まったく分かっていない。ヒトゲノムの中で機能が分かっているのはわずか2%に過ぎない。ヒトゲノムをとっても、そのほとんどが不要不急のジャンクDNAが占めている。むしろ、要であり急であることが、生物学的には例外ではないかと考察する。

そして、養老氏は記事の最後に、人生は本来、不要不急ではないか、老いるとはそうことではないかと結んでいる。

養老さんらしい、医学者としての視点を交えた素晴らしい記事ですね。ゲノムの4割がウィルス由来というのは驚きです。次の記事にも関係しますが、おそらく、ヒトという種を残すために、ウィルスから取り込まれた情報なんですね。生物も、世の中も、ほとんどが不要不急の森羅万象から成り立っています。
ポストコロナの時代では、自分の人生とは何か?、根源的な問いについて考えていくことが重要となる、と養老孟司氏は書いています。しかし、もう一方では、全ては不要不急なのだと、温かい知恵の言葉を教えてくれます。世の中は何が起こるかわからない。いつ不要が要になり、不急が急に変わるか誰にも分からないのである。

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不要不急
tatsuzinさんによる写真ACからの写真

福岡伸一「ウィルスは撲滅できない。共に動的平衡を生きよ」

福岡 伸一(ふくおか しんいち、1959年9月29日 - )は、日本の生物学者青山学院大学教授。ロックフェラー大学客員教授。専攻は分子生物学。農学博士(京都大学、1987年)。東京都出身。

狂牛病問題などで新聞・雑誌に頻繁に登場している。雑誌の随筆や新聞の文化面、読書面の常連筆者でもある。また、一般に向けた科学書の翻訳・執筆を行っている。2007年の「生物と無生物のあいだ」は65万部を超えるベストセラーとなった。

引用:wikipedia

分子生物学者である福岡氏は、この記事で、先ずウィルスとはどういうものか説明しています。

ウィルスは電子顕微鏡でしか見えない極小の粒子であり、生物と無生物との間に漂う奇妙な存在だ。生命を「自己複製を唯一無二の目的とするシステムである」と定義すれば、ウィルスは生命体と呼べるだろう。しかし、別の定義では、代謝も呼吸などもしないウィルスは、生物だと呼べないことになる。

このへんの知識は、僕は持っていました。しかし、こういう生物が、どうして生き延びていけるのかが、僕の疑問の一つでした。だって、細胞もないし、栄養も取らない、息もしない、そんな変な奴がどうして存在できるのか? つづけて、記事の中の重も要部分を引用します。詳細を知りたい方は、本の購入リンクをクリックして下さいね(笑)。

ウィルスの振る舞いをよく見ると、ウィルスは自己複製だけしている利己的な存在ではない。むしろウィルスは利他的な存在である。
今、世界中を混乱に陥れている新型コロナウィルス は目に見えないテロリストのように恐れられているが、一方的に襲撃してくるものではない。

(略)

かくして、ウィルスは宿主(感染する人間のこと)の細胞内に感染するわけだが、それは宿主側が極めて積極的に、ウィルスを招き入れているとさえいえる挙動をした結果である。

ずいぶん気になる部分です。人間がウィルス積極的に招き入れる? これは、どういうことでしょうか。ウィルスが来ると、怖くて、ビビってしまうのでしょうかねぇ。

ウィルスは構造の単純さから生物発生の時代から存在したかといえばそうではない。高等生物が登場した後に、はじめてウィルスは現れた。
高等生物の遺伝子の一部が、外部に飛び出したものとして。つまり、ウィルスはもともと私たちのものだった。それが家出し、また、どこかから流れてきた家出人を宿主は優しく迎え入れているのだ。

ウィルスはもともと、高等生物の遺伝子の一部だった。それが外に出て、様々情報をもって帰ってくる。高等生物はそれを優しく迎え入れる。どういうことなのか???

ウィルスこそが、進化を加速してくれる役割を果たしているからだ。親から子に遺伝する情報は垂直にしか伝わらない。しかし、ウィルスのような存在があれば、情報は水平報告に、場合によっては種を超えてまで伝達しうるのだと。それゆえにウィルスという存在が進化の中で温存されたのだ。

つまり、ウィルスは、人間を含む高等生物が生き残っていくために、様々な遺伝情報を収集する必要な存在であるということです。だから、飯も食えない、息もできない、ウィルスが、生物の中に入り込んで、生き残ることができるのだ。

そして、筆者は、記事の最後にこう書いています。

一方、新型コロナウィルス の方も、やがて新型でなくなり、常在的な風邪ウィルスと化してしまうだろう。宿主の側が免疫を獲得するにつれ、ほどほどに宿主と均衡をとるウィルスだけが選択されて残るからだ。
明日にでも、ワクチンや特効薬が開発され、ウィルスに打ち克ち、祝祭的な開放感に包まれるような未来がくるかといえば、くるわけがないことは明らかである。
長い時間軸をもって、リスクを需要しつつ、ウィルスとの動的平衡を目指すしかない。

私はウィルスをAIやデータサイエンスでアンダーコントロール置こうとするすべての試みに反対する、無駄な抵抗はやめよと。

私は、この記事を読んで非常に感動をしたのです。そして、前の記事のヒトゲノムの4割がウィルス由来という情報にも納得できたのです。かたや、人間には抗体という、ウィルスを無効化するシステムももっている。すごい、システムですねぇ。

感動ばかりしていられない。この記事には、分子生物学者からの重大な指摘があります。我々はリスクを取りつつ、新型コロナウィルス と共存していくしかない。これは、生物のシステムの一つなのだ。コントロールも、ワクチン開発も無駄な抵抗だと。

キーワードである動的平衡について説明しておきますね。

動的平衡について福岡氏は、「生命とは動的平衡にある流れである」と表現している。動的平衡とは、絶え間ない流れの中で一種のバランスが取れた状態のことである。崩壊してゆく生命の構成成分を先回りして分解し、乱雑さによって崩壊していく速度よりも早く再構成され続けることでバランスが保たれる。

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covid 19

まとめ

結局、今日も長文になってしまいました。今日採り上げた記事、理科系の私にはものすごく面白かったのですが、皆さんはいかがでしたか。うまく伝えることができたか、不安です。

こうして、ウィルスと人間の深い関係性について知ってしまうと、福岡先生の意見に賛同するしかなくなってしまいます。長い時間軸の中で、リスクを受け入れつつ、ウィルスと共存する揺れ動く平衡を取りつつ進む、これは長い勝負になりそうだ。

今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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