時の化石

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『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-』を読んで。 感染した若者に「ご苦労様」と言おう。鎌田實先生の言葉に心を動かされた。

どーも、ShiShaです。

今回の記事は、新書『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-』 「第3章 社会を問う」 から、印象に残った記事の内容を紹介します。前2回の記事では、ウィルス感染症に関する知識、政治、感染症の歴史などについてご紹介しました。今回の記事は、コロナ禍の中の、社会の課題に関する内容です。

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『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-』 朝日新書

『コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線- 』 「第3章 社会を問う」

今回の記事では、本書の「第3章 社会を問う」から、印象に残った二つの記事を採り上げて、内容をご紹介します。新型コロナウィルス禍の中、今、社会ではどんな問題が起きているのでしょうか?

ブレディ・みかこ『真の危機はウィルスではなくて 「無知」「恐れ」』

ブレイディ みかこ(Brady Mikako、1965年6月7日 - )はイギリス・ブライトン在住の保育士、ライター、コラムニスト。

福岡県立修猷館高等学校を卒業して上京&渡英。ロンドンやダブリンを転々とし、無一文となって日本に戻ったが、1996年に再び渡英し、ブライトンに住み、ロンドンの日系企業で数年間勤務。その後フリーとなり、翻訳や著述を行う。英国在住は20年を超える。

2017年、『子どもたちの階級闘争』で第16回新潮ドキュメント賞受賞。2018年、同作で第2回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞候補。2019年、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で第73回毎日出版文化賞特別賞受賞、第2回本屋大賞 ノンフィクション本大賞受賞。

引用:wikipedia(記載を要約しています)

この章の最初に掲載されているのは、ブレディ・みかこ氏が書いた記事です。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、書店で何回か黄色のカバーの本を見かけたのですが、残念ながら、僕は、まだ読んでいません。今回、初めて彼女の文章を読みましたが、非常に面白いです。印象に残るすばらしい内容でした。

「コロナを広めるな」といわれた息子

ブレディ・みかこさんの息子さんは、イギリスの公立中学校に通っています。ある日、息子さんは同級生から「コロナを広めるな」といわれた。その同級生は、誰かに注意されて、後になって謝りにきたそうです。息子さんが、経験したような日常が、今、世界中に広がっています。

  • フランスでは、アジア系の人々がSNS'で「私はコロナウィルス ではない」というハッシュタグを広めていた。地方紙では新型コロナウィルス感染拡大を「黄色い警報」「黄禍」と書いた。いつも政治的な正しさに慎重な、ヨーロッパのマスコミまでが人種的偏見のあるムードになっており、社会に影響を与えている。
  • 「無知」を「恐れ」で焚き付ければ、「ヘイト」が生まれる。こうした状況が、ヨーロッパのあちこちに広がっている。イタリア、フランスでは、右派ポピュリストが、移民とコロナ感染を関係付け、国境での移動制限を主張する政治家も出てきた。
  • 世界を真の危機に陥れるのは、新型コロナウィルスではなく、それに対する「恐れ」の方だろう。
  • 英国でも、パニック買いが始まっていて、衛生用品が品薄になっている。人は未知なものには弱い。
  • 新型コロナウィルス は、閉ざされた社会の正当性を証明するものではない。開かれた社会で他者と共存するために我々を成長させる機会なのだ。

恐怖をあおるメディアに、人々の心はどうしても影響を受ける。ヨーロッパでも日本でも、「無知」x 「恐れ」が差別や、分断を生み出しているのです。みんな、ストレスを抱え、心にも余裕がない。

これを防ぐためには、コロナウィルス 感染症に対する正しい知識をもつことが重要だと思います。自分の中にある、無知な部分、意味のない恐怖を、少しでも減らしていきたい。やはり、信頼できるメディアや本から、学ぶことが必要だ。

最後の文章、「開かれた社会で他者と共存するために我々を成長させる機会なのだ」は、素晴らしいですね。この、影響が大きい禍から少しでも前に進むために、今の問題点も前向きにとらえたい。

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ロンドン ナイツブリッジの街並み https://www.pakutaso.com/

「キーワーカー」を巡る分断

記事の後半では、筆者は社会を支える「キーワーカー」について書いています。次に、コロナ禍であぶり出された「ブルシット・ジョブ(どうでも良い仕事)」、「ブルシット・エコノミー」について話が及びます。

  • 人類学者デヴィット・グレーバーは、医療、教育、介護、保育など直接的に他者をケアする仕事をする人々を「ケア階級」と呼んだ。今日では、労働者の多くが、こういう産業で仕事に就いている。コロナ禍の中、「ケア階級」の人々がいなければ、地域社会が回らないことが明らかになった。
  • 「ケア階級」の人々はロックダウン中、「キーワーカー」と呼ばれ、英雄視された。毎週木曜日の8時には、家の外に出て彼らに拍手を贈る習慣が続いたし、メディアを通じて、彼らに対する感謝の言葉が贈られている。**
  • グレーバーは「ケア階級」に対する概念として「ブルシット・ジョブ(どうでも良い仕事)」という言葉を唱えた。英国の世論調査では、37%の人々が「自分の仕事は世の中に意義のある貢献をしていない」と答えた。意味のない会議のための書類を作り、資料を集め、整理に忙殺される仕事だ。
  • コロナ禍の中、「命か、経済か」という奇妙な問いが生まれてきたのも、現代の経済が、大量の「ブルシット・ジョブ」を作り出して回っているからだ。そのため、「ケア階級」の仕事は、経済とは別物のように考えられた。
  • 意義を感じられないどうでもいい仕事が経済の中心になれば、経済そのものが「ブルシット・エコノミー」になってしまう、とグレーバーはいう。無意味に思える仕事に限って高収入で、社会に必要な仕事ほど低賃金という倒錯した状況が明らかになった。

コロナウィルス 禍の中で、イギリスでは、様々な社会のゆがみがあぶり出されてきた。危機ほどいろんな問題が噴出してくる。

「ブルシット・ジョブ(どうでも良い仕事)」が37%もある、というのは、金融が進んだ英国だからなのか? 日本でも、同じではないかとも思います。

僕は、しばらく前に、「世界の実体経済の成長は、何年も前に止まっていて、その後の経済成長は、金融学によって生み出された過剰な流動性によるものだ。」という、説を呼んだことがあります。僕はトヨタは嫌いですが、古い頭には、どうしてTeslaやFacebookトヨタより、時価総額が上なのか理解できません。起きもしない期待値に、お金が集まっているのか。と書いているうちに、これこそが過剰の流動性だと気が付きました。

新型コロナウィルスは、まだまだ収束しそうもない。今後は、重要な「キーワーカー」の価値が上がっていくでしょう。金融に関わる人たちは、世のため人のために、こういう世の中を支える分野に投資を行ったら、いかがだろうか。

鎌田實『分断回避のために感染した若者に「ご苦労様」と言おう』

このブログでは、これまで数回にわたって、鎌田實先生の著作をご紹介してきています。

鎌田先生は、僕が尊敬する偉い医師なのです。つぶれかけた諏訪病院を再生したり、1965年脳卒中の死亡率が全国ワースト上位だった長野県を、長寿県に変えたキーパーソンとなったり。 その後は、ベラルーシイラクでの国際的人道支援活動をずっとされています。とにかく、他の人のために、東奔西走、世界中で活躍されている素晴らしい人物です。 鎌田先生は、新型コロナウィルス 感染の現状をどう考えていらっしゃるのでしょうか?

鎌田實氏のプロフィール

東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり、潰れかけた病院を再生させた。 「地域包括ケア」の先駆けを作り、長野県を長寿で医療費の安い地域へと導いた。   チェルノブイリ原発事故後の1991年より、ベラルーシ放射能汚染地帯へ100回を超える医師団を派遣し、約14億円の医薬品を支援(JCF)。
2004年からはイラクの4つの小児病院へ4億円を超える医療支援を実施、難民キャンプでの診察を続けている(JIM-NET)。  東北はもとより全国各地の被災地に足を運び、多方面で精力的に活動中。 ベストセラー「がんばらない」他、著書多数。

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鎌田實氏 オフィシャルウェブサイトから転載 

バッシングは「ストレス解消」

記事の前半で、鎌田實氏が書かれている内容をまとめると、下のとおりです。若い人は行動的かつ、エネルギーに溢れている。当然、我々より感染機会は多いはず。感染者の多くを若い人が占めているから、どうしても、彼らを批判しやすくなってしまうんですね。

  • 若者のみに風当たりが強まる理由は、多くの人が他者を避難することで、自らの恐れやストレスから逃れようとしているせいだ。
  • 政治家は頭ごなしに自粛の協力を要請している。メディアの向こう側の若者たちに「君たちの協力が必要だ」と訴えることはほとんどない。若者の悩みを受け止める努力をしているのだか?
  • 若者たちは誠実で悩んでいる。そのことを理解して一緒に考えれば、年配者では考えつかないようなウィルスとの戦い方、感染予防の方法を考える側になってくれる。

自分を振り返ると、若い頃は悩みが多かった。将来を思って、いつも不安を抱えていた。

しかし、今の若者はもっと深刻だ。大学にせっかく入っても、授業はオンライン。友人も恋人もできない。バイト先も減っている。多くの学生が、今、退学を考えているという情報をラジオで耳にしました。就職した若者も、コロナ禍の不況が広がってきて、務めている会社がどうなるのか分からない。思い描いた自分の将来はどうなっていくのか?皆、きっとそんな不安を抱えているはずだ。

鎌田先生の書かれているとおりだと思います。もう、若者の批判はやめよう。コロナウィルス は全世代の深刻な課題だ。

感染者に厳しい=感染に弱い社会

次に、鎌田實氏は、感染者に優しい社会を作ろうと呼びかけています。鎌田先生の視線はいつも温かい。そして、やわらかい答えを提示してくれます。この人は、きっと人間が好きなんだな。彼の考えの根底には、人間に対する信頼感があります。僕は、そこに大きな魅力を感じるのです。

  • 感染者が出た家庭と、そうでない家庭。感染を招きやすい業種に就く者と、そうでない者。このままでは、ひび割れができるのではと心配だ。
  • 感染した人に厳しい社会は、感染症に弱い社会。感染したと分かった人に、社会を守ることに協力したいという心境になってもらい、自主隔離を丁寧にやってもらう必要があるからだ。感染して抗体のできた人には、第2波、第3波が来た時に、医療を担ったり、物資を運んだり、ボランティアをする先遣隊になってもらわないといけない。
  • 感染した人に優しい社会にしよう。必要な時にPCR検査が受けられるようにした上で、軽症者には居心地の良い場所に滞在してもらうべき。そして、感染者に対し周囲は「ご苦労様」という姿勢で臨むことが大切。そうすれば、感染者は退院後に地域のために頑張ってくれるだろう。
  • 感染が判明していないのに、医療や輸送に携わる人たちの子供の登園・登校を拒否することは由々しきことだ。最前線で戦う仲間のおかげで、私たちの生活が守られていることを思い出さなければならない。ハンセン症、エイズウィルスの時に犯した過ちから、私たちは何を学んだのか。感染症に対するリテラシーを身につけて、差別を乗り越えていくしかない。
  • 新型コロナウィルス を指定感染症にしたことが、医療機関に負担をもたらした。制度設計の誤りだった。PCR検査の不足が、医療崩壊を加速させている。スピード感をもって、検査しないと、院内感染や介護崩壊は防げない。

前回の記事に書いたように、新型コロナウィルス 感染が収束するまで、まだまだ時間がかかりそうです。世界は、今、非常事態の中にあるのです。イギリスのように、感染リスクの高いところで、一所懸命、仕事をしてくれる人々に、今よりもっと感謝をしよう。
全ての世代、全ての人が、ビヨンドコロナのより良き未来を見据えて、協力し合う努力をしなければならないと考えます。

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https://www.photo-ac.com/ から転載

まとめ

またまた、今回も長文になってしまいました。今回も文章が多くて、ビジアルでもなくて、申し訳ありません。今回ご紹介した記事も示唆に富んでおり大変ためになるものです、是非、お時間がある時に読んでいただきたく思います。

ブレディ・みかこさんの記事では、今、イギリスで起きていることを、知ることができました。コロナを巡る差別と分断。ヨーロッパも日本も変わらないのですね。「無知」を「恐れ」で焚き付ければ、「ヘイト」が生まれる。こうならないように、正しい知識を身に付けたいと思います。

また、鎌田先生の記事では、僕自身も反省すべき点が沢山ありました。心のどこかで、若い世代が感染を感染を広げてると思っていた。僕らの若い頃より、今の彼らは、もっと深刻な悩みをもっているはずだ。新型コロナウィルス はあらゆる世代の大きな問題。若い人の知恵と協力をもらって、対応していくことが大事だと思いました。

感染した若者に「ご苦労様」と言おう。

今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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