どーも、ShinShaです。
フェルメール、ベラスケスなど、優れた画家の絵をもっと楽しみたい。絵が好きな人は誰もが考えることです。今日は高階先生の本を読みながら、一緒に絵の勉強をしませんか。
絵に関心を持ってから、最初に読んだ本は高階秀爾(しゅうじ)先生の本でした。今回、数年ぶりに先生の本を読みましたが、その鋭い分析力、絵に関する深い造詣に圧倒されました。
今回の記事には幅1000pxの絵画の画像が貼ってあります。ぜひ、拡大してして鑑賞くださいね。
著者 高階 秀爾さんのプロフィール
著者のプロフィールを下に掲載します。高階先生、現在もご活躍されているんですね。すごいです。高階先生は東大教授、国立西洋美術館館長、京都造形芸術大学大学院長を務められ、美術界では神のようなお人です。
学生時代、田舎から出てきた僕に、都会の進学校出身の友人が「絵を知りたいんなら、これ読んどけよ」と貸してくれた本が、高階先生の『名画を見る眼』(岩波新書)でした。初めて高階先生の本を読んだときに、こんな絵の見方があるのかと驚きました。今回ご紹介する本も、本文に書いたとおりすばらしい内容です。
高階 秀爾(たかしなしゅうじ)
1932年生まれ。1953年東京大学教養学部卒業。パリ大学付属美術研究所、ルーブル学院に留学。東京大学教授、国立西洋美術館館長、京都造形芸術大学大学院長などを歴任。2012年文化勲章受章。現在、美術史学者、東京大学名誉教授、大原美術館館長、秋田県立美術館顧問、日本藝術院会員
『誰も知らない名画の見方』を読む
オススメのポイント
この本は、絵の鑑賞と理解のために必要となる重要な視点から「絵の見方」を8つのテーマに分けて解説しています。掲載されている画家は24人、カラー印刷の本です。フェルメール、ファンアイク、ベラスケス、ゴヤ、ミレー、ピカソ、ゴーギャン、ボッティチェリ、クリムト、ルノワールなどなど、有名な作品はちゃんと押さえています。
この本には当代第一の美術評論家の視点からの解説が、初心者にも分かりやすく書かれています。絵を勉強したい人には、激しくオススメの本です。
もっともらしさの追求
本書の最初の章では、現実にはない不自然な光、歪み、無造作な描写で、現実以上の効果を演出する画家たちのテクニックについて書かれています。優れた画家は独自の手法を用いて、リアリズムを超える絵の魅力を創り出しているのです、僕らはこんな視点から、絵を見ることはありません。とても勉強になりますね。
フェルメール『真珠の耳飾りの少女』
絵を好きな方は、フェルメールをご存知でしょう。
ヤン・フェルメール(1632ー1675)は、オランダを代表とする画家のひとりです。フェルメーはの生涯は謎に包まれており、残された作品はわずか35点です。十九世紀後半にフランスの美術評論家が再評価をするまで、フェルメールは歴史の闇に埋もれていた画家なのです。
シュールレアリズムの画家、サルバドル・ダリは、アトリエで仕事するフェルメールを10分間見られるならば、右手を切り落としてもいいと言ったそうです。それほど魅力のある画家なのです。
筆者はフェルメールの絵について解説しています。
精緻な写実の画家というのはフェルメールの一般的な評価であろう。
たしかにその描写は、ひじょうに繊細である。
しかし、彼の作品をよく見ると、画家がけっして事物の質感表現を極めようとしていたわけではないことがわかる。
むしろフェルメールが追求したのは、事物を照らし出し事物にまつわりつく光の効果なのだ。
下の絵は、フェルメールの代表作です。筆者は、この絵の不思議な魅力は、少女の瞳に描き込まれた白い点にあると指摘をしています。その不自然で人為的な光の効果が、振り向きざまの少女に見つめられているような効果を与え、見るものは心を奪われるのです。
なるほど、この絵をじっくり見ると確かにそのとおりですね。恐れ入りました。
現代の写真家は、生き生きした表情を作り出すために、しばしば、モデルの目の中に人為的な光を加える手法を使います。それは400年前にフェルメールが作り出した手法なのですね。
"Johannes Vermeer" by glen.dahlman is licensed under CC BY-SA 2.0
ファン・エイク 「アルノルフィーニ夫婦の肖像」
つぎにご紹介する絵は、ファン・エイク(1390−1441)、15世記フランドル(現在のベルギー)の画家の絵です。ファン・エイクはブルゴーニュ公国のフィリップ善良公の侍従画家に任命された、優れた才能をもった画家でした。
ファン・エイクは、フェルメール以上に細密で繊細な質感を表現するテクニックをもった画家です。確かにこの絵、すごいですね。拡大して見てください。びっくりしますよ。ぜんぜんフェルメールより絵が細密です。
筆者の解説によると、この絵の中央にある鏡に描き込まれた夫妻の背後から訪問者の姿までの奥行きのある空間を表現し、さらに下部の床の空間を歪めて広げることで、見るものをこの絵に招き入れる仕掛けがしてあるというのです。
じっくり作品を見ましょう。鑑賞者を引入れる精密なだまし絵。絵の世界に取り込まれそうです。これは恐ろしい作品ですね。
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ベラスケス「青いドレスのマルガリータ王女」
最後にご紹介するのは、僕の大好きなスペインの画家、ディエゴ・ベラスケス(1621−1665)の絵です。ベラスケスはスペインの国王フェリペ4世の肖像画を描くことが許されたただ一人の宮廷画家でした。
ベラスケスの絵は、フェルメール、ファンエイクのように現実に即した描写ではなく、画家の目に写った印象をそのままタッチとして画面上に残されているが特徴だと解説されています。
じつは、王女マルガリータの絵(この絵ではないですが)を美術展で観たことがあります。この絵と同じように、ドレスの陰影、シルクの光沢、アクセサリーのきらめき、透き通るような髪の質感が素晴らしい作品でした。
何と美しい絵だろう。興味をもって、接近して絵を観察すると、そこにはラフな筆のタッチしか見えないのです。狐につままれたような体験でした。しかし、絵から距離をもって観ると、そこには手に取れるように美しい質感もきらめきもある。ベラスケスは魔法の画家だと思いました。
人の本質を描くことに誇りをもっていたベラスケスは、事実に即して描くのではなく、自分の感じた印象を描くことで、現実を超える美しさを生み出したと筆者は書いています。さらに、ベラスケスはルネッサンス以降の遠近法を用いず、絵に影の表現を加えることで、奥行きを与える手法を確立したともあります。本当に偉大な画家でした。

Art 1 誰も知らない「名画の見方」 (小学館101ビジュアル新書)
- 作者:高階 秀爾
- 発売日: 2010/10/01
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あとがき
今日は久しぶりに、アートの記事を書きました。高階先生の書かれた本はすごいですね。解説が鋭く、強い説得力があります。今回、記事を書きながら何箇所も感動しました。また、先生の解説から、あらためて絵のすばらさを感じる取ることができました。
やはり絵を観ることはすばらしい。
今回はご紹介できませんでしたが、高階秀爾先生の「名画を見る眼」、「続 名画を見る眼」(岩波新書)も名著です。絵の好きな方は、年末年始の、長くなりそうな期間に読まれたらいかがでしょうか。
今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
ShinSha
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