時の化石

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大人の科学(6)PCRとは何か

どーも、ShinShaです。
新型コロナの流行で、最近では毎日「PCR」という言葉を聞きます。
PCR」って何だか知っていますか?

PCR」はDNAをコピーする技術なのです。
その原理は極めてシンプル。
生物の体内でDNAをコピーする仕組みを利用したものなんです。

発明者キャリーマリス氏は1993年にノーべル化学賞を受賞しました。
PCRは現在でも臨床検査、犯罪捜査などにも利用されている重要な技術なのです。

PCRとは

新型コロナウイルス感染で、最近、いつも「PCR検査」という言葉を聞きます。
皆さんは「PCR」って何だか知っていましたか?

PCR」はDNAをコピーする方法なんですね。
正式にはポリメラーゼ・チェイン・アクション(ポリメラーゼ連鎖反応)を意味します。

PCRを使うと、わずか数分子のDNAから、短時間で何十億倍(数ミリグラム)のDNAに増やすことができます。
これによって、我々は知りたい対象の遺伝子情報を調べることができるようになります。

PCRは、新型コロナウィルスの感染検査以外にも、臨床検査、犯罪捜査にも利用されています。
この技術は遺伝子に関わるあらゆる研究で利用されており、理科系の大学や生物系の研究機関にはどこにでも装置があります。
発明以来、生物学、医学などの様々な分野の学問の発展に大きく貢献してきた技術なのです。

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pcr processing
"pcr processing" by estherase is licensed with CC BY-NC-SA 2.0. To view a copy of this license, visit https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.0/
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PCRの発明 「サーファー・ゲッツ・ノーベル・プライズ」 

PCRを発明したのは、アメリカ西海岸の風変わりな天才研究者キャリー・マリスです。
マリスはサーファーで、LSDをやり、あらゆる職場で女性問題を起こす。
講演会では好き勝手な話をして降壇させられることもしばしば。
いわば自由奔放の人なのです。

彼が、PCRを発明したのが恋人とドライブ中のこと。
wikipediaから引用します。

当時の同僚で交際相手のジェニファーを乗せてのドライブ中(車種ホンダ・シビック)、現在PCRと呼ばれるDNAの増幅方法のアイデアがマリスの頭の中で突然ともいえる形で組み上がる。
この閃きに自分でも驚き車を路肩に寄せて、手元にある紙片に化学式を書き留める。

発見の興奮の中「自分が思いつく位なら、他の者が既に発表してるはずだ」と過去の論文を片っ端からあたってみるものの、未発表と判明した。
一方で彼のアイディアを正しく評価する同僚はいなかった。

マリス氏はこの発明で1993年にノーベル化学賞を受賞しました。
一瞬のひらめきから生まれた偉大なる発明。
すごいなぁ。

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PCR法を発見したキャリー・マリス氏
"File:Kary Mullis.jpg" by Dona Mapston is licensed under CC BY-SA 3.0

PCRの基本原理

PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の基本原理を下の図に示します。
この原理はじつにシンプル。
簡単に理解できますよ。
図を見ながら勉強しましょう。

PCRでは、目的とするDNAの一部を切り取ったプライマー 、A・T・G・Cのヌクレオチド、ポリメラーゼという酵素を入れて、温度を上げ下げするだけでDNAを大量にコピーすることができます。

(1)熱変性(denaturation)
あなたの唾液から採取したDNAをPCR装置にセットし、約100℃に温度を上げる。
するとDNAの二重らせんはほぐれていきます。

(2)アニーリング(annealing)
ここに新型コロナウィルス に一致するDNAからできたプライマー2種類と、DNAの4つの要素A・T・G・Cのヌクレオチド、ポリメラーゼという酵素を入れ、温度を50℃くらいまでに下げる。
そうすると、プライマーは自分とマッチするDNAの配列を探しそこに落ち着く。

(3)伸長 (extention)
次に温度を70℃付近にあげると、DNAにくっついたプライマー を起点として、ポリメラーゼ反応で、A・T・G・Cのヌクレオチドを取り込みながら、鎖のようにDNAは合成されて伸びていく。
もう一つのプライマー は、ほどけた反対側のDNAに落ち着き、同様にDNA合成をして伸びていく。

これを1回繰り返すとDNAの数は2対となります。
20回繰り返すとDNAは2の20乗、100万倍になり、30回繰り返すと10億倍に増えていきます。

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PCRの原理
引用:https://www.flickr.com/photos/135558908@N04/

※ 新型コロナウィルス はRNAウィルスなので、実際には逆転写酵素を使ってcDNAに転換する前処理が必要です。ここでは省略しました。

※ プライマーは、新型コロナウイルスに特異的なDNA配列の領域(300塩基程度になるように設計されている)の両端に結合します。


あなたが、もし新型コロナウィルス に感染してれば、PCRマシンで新型コロナウィルスに一致するDNAが増幅され、感染してなければDNAは増えない。
PCRから出てきた検体を調べれば感染が判明するのです。

PCRはDNAの二本鎖の相補的な特性を用いてDNAを増幅する技術です。
PCRマシンの基本的な原理は温度の上げ下げを繰り返すだけ。
専門家なら誰でも知っていた生物の仕組みを組合わせて、この方法を考えついたマリスは天才ですね。

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参考図書 

今回の記事は 福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』などを参考にして書きました。
この本には、DNAの謎の解明と研究者たちの感動の物語が詳細に書かれています。
さらに、本書にはウィルス、狂牛病、生命の動的平衡という驚異のメカニズムに関しても書かれています。

DNAの世紀の大発見は、ある女性研究者のX線データを盗み見たからできたのだという、ダークサイドの話が本書に書かれています。
このミステリーの詳細は、『生物と無生物のあいだ』で、じっくりとお読みくださいね。

福岡伸一
生物学者青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授
1959年東京都生まれ。京都大学卒。
米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。
著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。
引用:https://dot.asahi.com/columnist/profile/?author_id=hukuoka_s

あとがき

福岡伸一先生はキャリー・マリス氏は「化学界唯一の一発屋」と評しています。 1953年のワトソン・クリックによるDNAの発見から1983年PCRの発明まで30年。
こういうシンプルな技術は、意外と発明できないものなのです。

「チャンスは準備された心に降り立つ」

これは福岡先生の著作『生物と無生物のあいだ』に書かれた印象的な言葉です。
イノベーションを起こすには、一瞬のひらめきを形にする準備した心を持っていなければならないのです。

今日も最後までブログを読んでいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

ShinSha

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