どうもShinShaです。
今回はイヤホンから音を出すデバイス、ドライバーに関する記事です。
ちょっと専門的になってしまいますがお許しください。
イヤホンから音を出すデバイスには、ダイナミック・ドライバー(DD)、バランスド・アーマチュア (BA)・ドライバーなどがあります。
僕はSONY、Shureなどの高級BA型イヤホンを聴いてもぜんぜん魅力を感じないのです。
今回の記事では、その仕組みについて調べながら、なぜ僕がBA型イヤホンに違和感を感じるのか考えてみました。
記事ではDD、BAの2つのイヤホンを用意して、同じ音源の音楽を聴き比べてみました。
BA型イヤホンの低域、高域の音の特徴、音の歪みが違和感に影響していますね。
やっぱり僕はダイナミック・ドライバーの音の方が数段好きだなぁ。
数日間、BA型イヤホンで音楽を聴きながらそう感じました。
最後にエントリーモデルからミドルモデルまで、オススメするイヤホンを2点ご紹介いたします。
イヤホンに使われているドライバーについて
ダイナミック・ドライバー
ダイナミック・ドライバー(DD)は1930年代にドイツで発明されました。
ダイナミック・ドライバーは現在でももっとも一般的に使用されているドライバーです。
コストが安価で低電力量で作動する特徴があります。
構造は一般的なオーディオスピーカーと一緒です。
また、ボーカルの録音などに使われるダイナミックマイクも同じ構造なのです。
ダイナミックドライバーでは、ボイスコイルは直接、振動板(diaphragm)に接続され、永久磁石の内部に配置されています。
電気信号がコイルを通ると、電磁気により永久磁石とボイスコイルの間で引き寄せと反発が生じ、コイルを急速に振動させます。
この振動により振動板が動き、周囲の空気分子が乱れ、音波が生成されます。
振動板には通常、飲料ボトルなどに使われる樹脂PETが使用されています。
しかし各メーカは音質を改善するため、振動板を硬度の高い素材でコーティングするという手法を取っています。
コーティング素材は、DLC (Diamond Like Carbon)、グラフェン、チタン、タングステン、医療用樹脂、木など様々です。
イヤホンに用いられるダイナミックドライバーの直径は5〜16mmの範囲です。
ダイナミックドライバーが大きいほど、音圧が高く迫力ある音が出ます。
サイズが小さいと、低域の音の音圧が得られません。
ドライバーが大きくなりすぎるとイヤホンへの搭載が困難となり、歪みが発生しやすくなります。
ダイナミックドライバーはできるだけ大きい方が音質が良いに決まっています。
大きなダイナミックドライバーイヤホンの音を聞くと、6mm程度の製品ではまったく物足りなくなります。
音質が本質的に違うのです。
このほか、ドライバーの種類には平面ドライバーがあります。
この音が出る仕組みはダイナミックドライバーと似ています。
しかし、平面ドライバーのイヤホンって音に感動したことはないなぁ。
バランスド・アーマチュア
バランスド・アーマチュア(BA)は補聴用のデバイスとして1940年代に発明されました。
人間の頭につけても十分なほど小型で低電力で作動します。
たしかに素晴らしい発明です。
バランスド・アーマチュア (BA)ドライバーは小さなエンクロージャ内の2つの磁石の間に配置されたアーマチュア(ワイヤーのコイルで覆われてiいる)があります。
コイルに電子信号が流れると電磁気作用により、2つの磁石の間でアーマチュアが振動します。
さらに、アーマチュアの末端に付いているドライブピンにより振動板(Diaphragm)が動き、それにより周囲の空気分子が移動し、BAドライバーハウジングの端にある小さな「ノズル」から出る仕組みです。
BAドライバーは、小さくて精密な振動板を使用しており、入力に対する反応のよさ、高域側の繊細な再現性に定評があるといわれています。
振動板の素材は一般的にはアルミニウム、最近では金属マグネシウムなどを採用したモデルもあります。
BAドライバーは一般的に再生周波数領域が狭く、低域の音を発生しにくいに傾向があります。
このため、DDドライバーと組合せたイヤホンが多く販売されています。
また、BAドライバーのみのイヤホンでは、複数のBAを組み合わせて使用されることが多いです。
例えばShureのSE846では(低域 2基+中域 1基+高域 1基)という4つのBAドライバーを組み合わせて使用しています。
中華イヤホンKZには20個以上BAドライバーを積んでいる製品もあります。
さすが中国、20個も積むとは💦
セラミックツィーター VST(Vertical Suport Tweeter)
ここでは僕が大好きなドライバーのー種、セラミックツィーターVSTについてご紹介します。
VSTはオーツェイド社の独自技術です。
同社のイヤホンはダイナミック・ドライバーとVSTを組み合わせたハイブリッド構造となっており、intime(アンティーム)等のブランドを通じてイヤホン製品を供給しています。
VSTは主に10kHZ以上の高域、超高域の音を再生するドライバーです。
楽器の音は、基音とともに倍音からなっています。
VSTの再生する倍音の響きを一度聴くと、虜になってしまうほどです。
ピアノ、弦楽器、シンセサイザー...本当に素晴らしい音なんです。
VSTはセラミック薄板の両面に電極を付け、電流を流すと振動する性質を利用して音を出します。
0.14mmの厚さに5層のセラミックス板、電極はミクロンサイズの薄さ、すごい技術です。
セラミックツィータVSTはこんな構造になっているのですね。
ここから、あの素晴らしい高音が生まれるんだ。
僕は、過去にいくつかDD型ドライバー + BA型ドライバーイヤホンもっていました。
しかし音に感動したことはなかったな。
いまはオーツェイドのDD型ドライバー + VSTイヤホンが一番のお気に入りの組み合わせです。
なぜBA型イヤホンの音に違和感があるのか
ここまでイヤホンから音を出すドライバーの構造、仕組みについて紹介してきました。
BA型ドライバーはShure、SONYなどの大手メーカーの高級機種に採用されており、シングルBA、マルチBAイヤホンが販売されています。
ところが僕はどうしてもこの音が好きになれないのです。
eイヤホンの秋葉原本店で何回か高級モデルを試聴しても魅力を感じない。
正直に書くと、数分BAの音を聴いていると気分が悪くなる。
WEB検索してみると価格.comの掲示板にも同じようなことが書いてありました。
僕だけではなかった、少し安心しました。
しかし、一方でBA型ドライバーが好きな人もいるようです。
いろんな好みがあるから、様々な製品が販売されている。
まず、僕らが聴く音楽の音はスピーカから流れる音が一般的です。
多くの人は楽器などの生の音を聴く機会は少ないです。
ライブに行っても、テレビを見てもそこで鳴っている音はスピーカの音です。
僕らの耳はスピーカの音に慣れ親しんでいます。
スピーカとダイナミックドライバーは同じ仕組みでできている。
狭い金属の箱の中で小さな金属板が振動して発生する音は普段聞いていないのです。
不自然に感じても当然だと思うんですね。
違和感の原因を調べるために、BA型ドライバーだけを積んでいるイヤホンを購入しようと思いました。
Amazonを探すと、安価で比較的評判の良いシングルBAの中華イヤホンがありました。
レビューをみるとSONY、Etymotic Research社のユーザーからも一定の評価をされています。
今回の記事を書くにあたり、サイズ、価格も近いDDイヤホン 水月雨(Moondrop)Quarksと音を聴き比べることにしました。
写真見ると、本当にサイズ感ぴったりでしょう。
2つの製品のスペックは下記のとおりです。
NICEHCK X49
形式:シングルBA
再生周波数帯域:20-20kHZ
インピーダンス:22Ω、感度:110 dB/mW
水月雨Quarks
形式:φ6mm ダイナミックドライバー
再生周波数帯域:4Hz~43KHz
インピーダンス:16 Ω、感度:116 dB/mW
試聴曲は、Apple Music ロスレスフォーマット、宇多田ヒカル、中島美嘉、伊勢正三、ビリー・アイリッシュ、ビートルズなどpop音源です。
数時間音楽を聴いていると次第に違和感の理由が分かってきました。
当然どっちが好みの音かも、はっきりと認識しました。
2つのイヤホンで音楽を聴いて、まず気がついたことは、BAドライバーの低域、高域の音の音圧の低さです。
BAは明らかにカマボコ型の音質ですね。
さらに、低域の音はブーミーで締まりがなく、高域の音は刺さり気味の金属的な音が出ます。
アコースティックギターの高音弦は細い針金が鳴っているような印象です。
低音のだらしなさは致命的だなぁ。
リズム、音楽のノリと直結するベースライン、ドラムの音が弱いのは曲の魅力が半減しますね。
イコライザーを使って低域の音圧を上げると、BA型イヤホンからは独特の歪み音が聴こえます。
また、音量を上げて聴くとボーカルなど中域にも音の歪みを感じます。
WEBを調べるとBAには全域にわたって音の歪みがあるようです。
BA型ドライバーの再生音に揺れるような違和感を覚えるのはこのせいかもしれません。
シングルBAの安価な中華イヤホンの音をもって、すべてのBA型イヤホンを断じるつもりはありません。
しかし違和感の原因の多くは上記にあるはずです。
高級機を試聴しても、音に魅力を感じない理由が分かった気がします。
今回購入したNICEHCK X49はスペックどおりの音が鳴っていました。
値段も安いし悪い製品ではないと思いした。
やはり、BAの音は僕の好みには合いませんね。
少なくとも低域、高域の音がじゃんじゃん鳴るジャズやロックは聴くべきでないと感じました。
オススメのイヤホン
今回の記事を書きながら、数日間BA型イヤホンの音を聴いていました。
その間、僕が好きなのはダイナミック・ドライバー型イヤホン、できればそれにVSTを加えたハイブリッドがもっとも好きなのだと再確認しました。
評価を終わって3日ぶりに普段愛用しているイヤホンの音を聞いた時の喜び(^O^)/
感動しましたね。
はい、それではオススメのエントリー〜ミドルクラスイヤホンを紹介しますね!
⚫️ ASHDAVOX EA-HF1
Φ15mmの大口径ダイナミックドライバーが再生する低域〜中域の音が美しいです。
低域、中低域音の量感は多め、 低域から高域までバランスの良い音を再生します。
このイヤホンでボーカル曲を聴くと素晴らしいです。
また、スネアドラム、ベースなど低域の音の響きが素晴らしいので、ジャズ、ヒップ・ホップなどの音楽を楽しく聴けます。
A5000円のベストバイイヤホンです。
価格設定が間違っていると思うほど魅力があり、コストパフォーマンスが高い製品です。
⚫️ intime 雅 MarkⅡ
低域〜高域まで音のバランスがよく、どんなジャンルの音楽でも楽しむことができます。
目の前で歌っているような艶のあるボーカル、リアルで解像度が高い楽器の音を再生します。
特にピアノ、ギター、管楽器、シンセサイザーの音の響きが素晴らしいです。
クラシック、ジャズなどの音楽愛好家にとって最良の製品です。
セラミックツィータVSTが再生する高域・超高域の音の響き、溺れてしまうほど美しいです。
この音を一度聴いたら、手に入れたくなってしまう。
これ以上何も要らないと思うほど素晴らしいイヤホンです。
おわりに
天下のSONY、Shure様に物を申すつもりはありませんが、どうしてもBAの音は好きになれそうにありません。
えっ、ちゃんと数万円以上投資して、何ヶ月もじっくり聞かなくちゃ良さは分からないって?
いやあ、好きでもないものにそんな投資する元気ありません💦
音の感じ方は、匂い・香り、味覚と同じで脳の機能「官能」に関係しているため、単純に技術のみでは割り切れないところがあります。
これがオーディオの世界が不思議で深いところです。
イヤホンひとつをとらえても、そこはワンダーランドです。
少し前にケーブルの話を書きました。
マニアの間には純銀線は高音が伸びるとか、希土類元素の混入したケーブルがあったり、長さ1mちょっとで数万円のケーブルが売られていたり、なんだか錬金術みたいな世界でもあります。
それがたまらなく面白いところです。
僕は音楽好きのエンジニアです。
少し無駄遣いをしながらも、できるだけ科学的にイヤホンを楽しんでいきたいと思います。
ShinSha