どうもSinShaです。
今回はジャズスタンダードの記事です。
シリーズ4回目のテーマは「いそしぎ」。
この曲は1965年映画「いそしぎ」の主題歌です。
過ぎし日の恋を懐かしむ、エモーショナルで美しいバラード。
ジャズのスタンダードって、失恋の曲とか恋の思い出とか悲しい曲が多いですね。
でも、最近、そういう気持ちよく分かります。
今回はギター、ピアノ、ホーンのインスト曲、ボーカルはトニー・ベネット、僕の永遠の歌姫アストラッド・ジルベルトなど素晴らしいチューンをご紹介します。
いそしぎ “The Shadow of Your Smile”
楽曲について
1965年の映画『いそしぎ』のテーマ曲として書かれたポピュラー・ソング。
作曲はジョニー・マンデル、作詞はポール・フランシス・ウェブスターです。
ジョニー・マンデルはトランペット、トロンボーンの奏者で、作曲・編曲の能力が優れていたため、カウント・ベイシー楽団などで活躍していました。
「いそしぎ」は彼の生涯最大のヒット曲となりました。
映画はエリザベス・テイラーが演じる美しい女流画家と、妻子ある学校長との半年間の恋を描くメロドラマ。
「いそしぎ」はヒロインが海岸で保護した鳥の種名です。
映画のあらすじを下に引用します。
映画「いそしぎ」
海と空と絶望の大自然にリズとバートンのコンビが再び贈る愛の名篇
水鳥のイソシギが波と戯れる、美しい海岸沿いの一軒家に住む女流画家のローラ(エリザベス・テイラー)は、9歳の息子ダニーを学校に通わせず自由に暮らしていた。しかし判事の命令で、ダニーはミッション・スクールの聖シメオン学校に入学させられることになった。 校長のエドワード(リチャード・バートン)と妻のクレア(エヴァ・マリー・セイント)に対し、信仰心を持たないローラは反発するものの、結局ダニーはスクールの寄宿舎に預けられた。それ以来、ローラは孤独な日々を過ごしていた。
やがてエドワードはダニーの様子を知らせに幾度となく彼女の家を訪れる。エドワードは妻のいる身でありながら、自分とは全く異なる感性と信念を持つローラに惹かれ、ローラもまたエドワードとの許されぬ愛に身を投じてゆく。 『クレオパトラ』でコンビを組んだエリザベス・テイラーとリチャード・バートンが再び共演、名匠ヴィンセント・ミネリ監督が聖職者の不倫をテーマにしたメロドラマ。
映画の世界観を表現し、深く印象に残る主題歌「いそしぎ」は、1965年のアカデミー賞で歌曲賞を受賞し、この時代を代表する映画音楽となったばかりか、世界各国の多くの歌手に愛されて永遠のスタンダードとなった。
引用:https://www.amazon.co.jp/
曲の歌詞
The shadow of your smile
lyrics :Paul Francis Webster music : Johnny Mandel (1965)
[Verse]
One day we walked along the sand
One day in early spring
You held a piper in your hand
To mend its broken wing
Now I'll remember many a day
And many a lonely mile.
The echo of a piper's song.
The shadow of a smile.
[ヴァース](導入部)
ある日 私達は砂浜を歩いてた
春まだ浅いある日
あなたは手の中に「いそしぎ」のヒナを包み
傷ついた翼を手当しようとしてた
私はこれからずっと思い出すでしょう
孤独で長い道のりになるでしょう
いそしぎたちの歌の美引きと
あなたの微笑みの影を
[Theme]
The shadow of your smile
When you are gone
Will color all my dreams
And light the dawn
Look into my eyes
My love and see
All the lovely things
You are to me
Our wistful little star
Was far too high
A teardrop kissed your lips
And so did I
Now when I remember spring
All the joy that love can bring
I will be remembering
The shadow of your smile
あなたが去っていくときの微笑み
私の夢を彩り 夜明けを照らす
恋人よ、私の目を見て
そうしたら分かるわ
私にとって あなたがどれほど素敵な存在なのか
私たちの切ない小さな星は遠すぎた
一粒の涙があなたの唇にキスした
そして私もそうした
春を想うたびに
愛がもたらす全ての喜びを思い出すたびに
あなたの微笑の影を思い出すことでしょう
ShinSha 訳
「いそしぎ」の名演奏
ジャズ・スタンダードを聴く楽しみは、いろんなアーティストの演奏を聴き比べ。
「いそしぎ」にはどんな名演があるのでしょうか?
今回も新旧織り交ぜて素晴らしい演奏をご紹介いたします。
[インストゥルメンタル]
曲が比較的新しいせいかインストゥルメンタルの決定的な演奏はなかなかありません。
しかし原曲の美しさを活かした洒落た演奏はいっぱいあります。
今回はギター、ピアノ、ホーンがメインの名演奏を選曲しました。
ウェス・モンゴメリーのギター、オスカー・ピーターソンのギターはそれぞれの特徴が活かされている素晴らしい演奏です。
他のプレイヤーにはできない楽しい演奏です。
そして、デクスター・ゴードンがコペンハーゲンで行ったライブ演奏は、ヨーロッパで活躍するジャズマンたちが参加したスペシャルな一曲。
大好きなケニュー・ドリュー、ニールス=ヘニングが参加していて嬉しくなってしまいます。
同じ曲を演奏していても、ジャズの曲にはこれだけバリエーションがある。
ジャズの自由な楽しさをぜひ感じで欲しいです。
インストゥルメンタル曲では、このほか、昔ジャズ喫茶で大ヒットしたアート・ファーマーの1967年ライブ録音なども有名です。
⚫️ウェス・モンゴメリー
曲が大ヒットした65年の録音です。
少し聴いただけでウェスの演奏だって分かりますね。
この曲、ハープ、ストリングスが入った凝ったアレンジです。
歌心いっぱいのウェスのオクターブ奏法がご機嫌。
聴いていると身体が揺れてくる。
ギタリスト、バーニー・ケッセルもこの曲を演奏していますが、僕はウェスの曲が好きです。
Wes Montgomery “Bumpin’”1965
Wes Montgomery: guitar, Bob Cranshaw : bass, Candido Camero :bongos, congas, Charles McCracken, George Ricci :cello, Grady Tate, Helcio Milito: drums, Margaret Ross :harp, Roger Kellaway :piano, David Schwartz, Harold Coletta : viola, Arnold Eidus, Gene Orloff, Harry Lookofsky, Jos. Malignaggi, Julius Held, Lewis Eley, Louis Haber, Paul Gershman, Sol Shapiro : violin
⚫️ オスカー・ピーターソン
オスカーピーターソンのピアノってやっぱり素敵ですね。
彼しかできない独特の演奏になっています。
テクニックに優れていて、歌心にも溢れている。
彼の演奏はサービス精神があり過ぎて、時に過剰に思えるけど。
この演奏はジャズの楽しさに溢れている。
ダイナミックに、そしてエレガントに「いそしぎ」を歌い上げています。
とても楽しいなぁ。
Oscar Peterson "Blues Etude" 1966
Sam Jones : Bass Guitar, Louis Hayes: Drums, Oscar Peterson: Piano
⚫️ デクスター・ゴードン
デクスター・ゴードンのコペンハーゲンでのライブ演奏。
デクスターのプレイはエモーショナルで良いですね。
アドリブを混じえながらゆっくりメロディをなぞるサックスの音に心が溶けそうです。
ニールス=ヘニングの要所を抑えたベースがいい。
ケニュー・ドリューのピアノソロもリリカルで美しいですね。
素晴らしい演奏ですね。
Dextar Gordon “A Day in Copenhagen” 1969
Saxophone: Dexter Gordon, Trombone: Slide Hampton, Bass: Niels-Henning Ørsted Pedersen, Drums: Art Taylor, Piano: Kenny Drew, Trumpet: Dizzy Reece
[ボーカル曲]
「いそしぎ」は映画音楽なのでボーカルバージョンもあまりに数が多いのです。
ポピュラーの歌手も広田美枝子、スティーヴィー・ワンダー、アンディ・ウィリアムスとか、いろんな人が歌っています。
ジャズのヴォーカル曲では、1965年にヒットしたトニー・ベネットのヴォーカルが素晴らしいです。
また、個人的には「いそしぎ」では、僕の永遠の歌姫アストラッド・ジルベルトも外せない。
新しいところではニッキ・パロットの歌がなかなか良いですね。
アレンジも素晴らしいし、ちょっと色っぽい大人の歌です。
ボーカル曲では、このほか、アンバートン、カーメン・マクレエなど大御所のチューンも有名です。
⚫️ トニー・ベネット
トニーのヴォーカルは本当に素晴らしいですね。
バースから切々と歌詞を歌い上げています。
トニーは今年亡くなったのですが、本当に素晴らしいヴォーカリストでした。
伴奏のストリングス、ピアノの演奏もエモーショナルで素晴らしい。
聴きこんでいると心がブルーに染まっていきます。
アルバムのクレジットを見たら驚きです。
アレンジャーにクインシー・ジョンズが入っていたり、トミー・フラナガンなど凄腕ミュージシャンがバックを演奏しています。
Tony Bennett “The Movie Song Album” 1966
Tony Bennett: vocals, Neal Hefti, Quincy Jones, Johnny Mandel, David Rose – arranger, conductor, Larry Wilcox, Al Cohn – arranger, Tommy Flanagan, Lou Levy, Jimmy Rowles : piano
Luiz Bonfá: guitar
⚫️ アストラッド・ジルベルト
キュートなウィスパーボイス。
へたうま風の舌足らずの歌い方。
決して歌唱力がある訳ではないけれど彼女はグラミー賞歌手なのです。
彼女の歌のどこが良いのか誰にも説明できないけど、世界中に彼女のファンがいる。
スキャットがいいなぁ。
この曲もアストラッドによく合っていますね。
Astrud Gilberto “The Shadows your Smile” 1965
⚫️ ニッキ・パロット
ニッキはオーストラリア出身の歌手。
曲はヴィブラフォンのソロから始まります。
美しい演奏です。
しばらくするとニッキのボカールが入ってくる。
ちょっとハスキーで魅力的な声。
アルバムの解説には「甘いシルキー・ボイス」って書いてある。
耳もとで歌っているみたいで、イヤホンの耳がくすぐったくなってくる。
スキャットが色っぽくていいなぁ。
彼女はもともとベース弾きなんですが、ヴォーカルが魅力的だよね。
Nikki Parrot "The Look of Love" 2014
サブスクミュージックでジャズを聴こう
サブスクミュージックでジャズを聴きましょう。今回のスタンダードの名演、名曲はすべてサブスクで聴くことができます。しかも音質も素晴らしい。
Apple Musicではジャズ名盤のハイレゾ化が進んできています。素晴らしい音質で名曲を聴きましょう ♪( ´θ`)ノ
記事で採り上げたアルバムのamazonリンク
おわりに
今回の記事は6曲のYouTubeリンクを貼りました。
最近何を思ったか、ヘッドホンを買ったのです。
新しいヘッドホンで、今回の掲載曲すべてを3回以上聴いたけど楽しかったなぁ。
今回は初めて聴いたデクスター・ゴードンのライブ音源に感動しました。
エモーショナルで素晴らしい演奏です。
ケニュー・ドリューのピアノも本当に美しい。
このシリーズ、これまでちょっとポピュラーな曲を書きすぎていますね。
そろそろ真ん中のジャズ曲を書かなければ。
いろんな連載を立ち上げて挫折してきたけれど、このシリーズは続きそうな気がするなぁ。
ShinSha