時の化石

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あなたと夜と音楽と - 「マイ ファニー バレンタイン」 My Funny Valentine -

どうもShinShaです。今回はジャズスタンダードの記事です。もうすぐバレンタイン・ディですね。今回のスタンダードは「マイ ファニー バレンタイン」。


「マイ・ファニー・バレンタイン」は1937年にミュージカルのために作られました。曲のタイトルの“バレンタイン”は歌の主人公である女性が熱を上げている男性の名前です。この曲は1950年代からずっと、ジャズファンやミュージシャンに愛されてきたスタンダードです。

「マイ・ファニー・バレンタイン」の名演には、マイルス・デイヴィススタン・ゲッツの演奏があります。ボーカル曲としてはシナトラや永遠の名曲チェット・ベイカーの1954年録音が特に有名です。今回もオススメの新しいボーカル曲やピアノ演奏についてもご紹介します。

マイ ファニー バレンタイン “My Funny Valentine”

楽曲について

「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は、1937年にリチャード・ロジャースとロレンツ・ハートによって作詞・作曲され、ミュージカル『ベイブス・イン・アームス』で初めて発表された楽曲です。その後も映画「青春一座」「紳士はブルーネット娘と結婚する」「夜の豹」などの作品でも、この曲が使用されました。

この曲は押しも押されぬ名曲ですが、残念ながら大きなヒット曲にはなりませんでした。それでも、この曲はミュージシャンたちによって愛されました。1950年代からマイルス・デイヴィスビル・エヴァンスチェット・ベイカーキース・ジャレットデューク・エリントンなど、多くのアーティストによって演奏されてきました。素晴らしいボーカル曲、演奏が数多く存在します。

"Charming Valentine's Red Rose Flower #4 (Happy Rose Day)" by Jangra Works is licensed under CC BY 2.0.

曲の歌詞

曲のタイトルの“バレンタイン”は、歌の主人公である彼女が熱を上げている男性の名前です。イタリア系であれば”バレンチノ”になるのかな。歌詞の最後には、彼氏の名前をバレンタイン・ディにかけています。あなたを愛する毎日はバレンタイン・ディ...なかなか洒落ていますね。

‌My funny valentine
My funny valentine
Sweet comic valentine
You make me smile with my heart
Your looks are laughable
Unphotographable
Yet you're my favorite work of art

私のおかしな バレンタイン
可愛らしくて コミカルな恋人
あなたは私を 心から微笑ませる
笑っちゃうようなルックス
ちっとも写真に向いていない
でも あなたは私の大好きな芸術作品

Is your figure less than Greek
Is your mouth a little weak
When you open it to speak
Are you smart?

あなたの姿ってギリシャ人には敵わない
話すことは弱気だし
あなたが話している時って 賢く見える?

But don't change a hair for me
Not if you care for me
Stay, little valentine, stay
Each day is Valentine's Day

でも 私のために髪一本 変えないでいて
私を大切に思うのなら そのままでいて
可愛い人 ずっとそのままで
毎日がバレンタイン・デーなの
ShinSha 訳


"caramel marshmallow chocolate pops in a glass mason jar with chocolate covered pretzel sticks and Oreo cookies on a white table and multicolored tulips in a vase conversation heart brownie pops champagne and pink lemonade for Valentine's Day" by Berries.com is licensed under CC BY 2.0.

「マイ ファニー バレンタイン」の名演奏

ジャズ・スタンダードを聴く楽しみは、いろんなアーティストの演奏を聴き比べ。この曲にはどんな名演があるのでしょうか?今回も新旧織り交ぜて素晴らしい演奏をご紹介いたします。

ご機嫌な「マイ ファニー バレンタイン」を聴くことができるジャズの名盤、https://www.amazon.com の画像を加工

インストゥルメンタル
シナトラが1953年のアルバム”Swing Easy”で採り上げてから、いろんなアーティストがこの曲を演奏するようになりました。名演がいっぱいありすぎて、選ぶのが大変でした。

最後は、結局、個人的な好みになりました。今回は選曲しませんでしたが、ビル・エバンスジム・ホールマイルス・デイヴィスの1964年のライブバージョン、キース・ジャレットなど、素晴らしい演奏があります。もし機会がありましたら、そちらも聴いてみてくださいね。

⚫️マイルス・デイビス
1957年の名盤”クッキン”収録曲。資料を見るとこのアルバムの演奏が初演だとあります。最高のバンドメンバーによる録音です。マイルスには64年の素晴らしいライブバージョンもありますが、ちょっと凄すぎる演奏なので今回はこちらを選びました。

この曲では、マイルスのミュートソロが素晴らしいですね。フレージング、テクニックとも最高のプレイです。そして、リリカルで軽快なタッチのガーランドのピアノもやっぱり好きだな。チェンバーズとジョーンズのリズムセクションもいい。ずっと聴いていたい演奏です。あ、ちなみにこの曲ではコルトレーンは演奏していないです。

Miles Davis “Cookin’”1956
Bass: Paul Chambers, Drums: “Philly" Joe Jones, Piano: Red Garland, Tenor Saxophone: John Coltrane, Trumpet: Miles Davis

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⚫️ スタン・ゲッツ & J.J. ジョンソン
1957年すごいメンバーのライブ盤です。オスカー・ピーターソンレイ・ブラウンにコニー・ケイまで。この曲を選んだのはゲッツのテナー・サックスの演奏が素晴らしいからです。

村上春樹氏が言うように、スタン・ゲッツにハズレなし。ジョンソンのプレイも良いのですが、とにかくゲッツのイメージ豊かで歌心あふれたサックスの演奏が素晴らしいです。次から次へと、スウィングするアドリブを繰り出しています。以前はゲッツのアルバムをほとんど持っていたんです。久しぶりにゲッツを聴いて興奮しました。

Stan Getz And J.J. Johnson “At The Opera House” 1957
Bass: Ray Brown, Drums: Connie Kay, Guitar: Herb Ellis, Piano: Oscar Peterson, Tenor Saxophone: Stan Getz, Trombone – J.J. Johnson

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⚫️ エディー・ヒギンズ
ヒギンズは、アメリカでは知る人ぞ知るサイドプレイヤーでした。しかし、彼が人生の晩年になって日本のヴィーナス・レーベルに多くのリーダー作を残しました。彼のリリカルな演奏が日本の好みに合っていたのでしょう。1990年代には、スウィング・ジャーナル誌のゴールド・ディスクを何枚も受賞しています。

この曲はアルバムタイトルどおりのヒギンズのロマンチックなピアノソロです。曲の美しさが際立つ演奏です。ぜひ、女性に聴いてもらいたいな。Amazonのレビューを見たら、筒美京平さんの晩年の愛聴盤だったと書いてありました。

Eddie Higgins “Romantic Higgins” 2011

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"Miles Davis Quintet -The Unissued Japanese Concerts" by comunicom.es is licensed under CC BY-SA 2.0.

[ボーカル曲]
「マイ・ファニー・バレンタイン」はスタンダードの名曲なので、ボーカルバージョンも非常に多く存在します。チェットとシナトラの曲は確かに定番ですが、最後の1曲を選ぶのに迷いました。
エラ・フィッツジェラルドやサラ・ボーン、ダイナ・シュアなど、素晴らしい録音がたくさんあります。今回聴いた中では、ジェーン・モンハイトの新しい録音もとても素敵でした。

⚫️ チェット・ベイカー
あまりに有名なチェット・ベイカーの1954年録音。この曲はチェットの中性的なボーカルが大きな魅力です。当時のチェットは二十代で青春のまっただ中。まだ少し少年の匂いが残っています。若さゆえの妖しさや危うさが、人を惹きつけるのかもしれません。これは永遠の名曲です。

Chet BakerChet Baker Sings” 1954
Bass: Carson Smith, Jimmy Bond, Drums: Bob Neel, Lawrence Marable, Peter Littman, Piano: Russ Freeman, Trumpet, Vocals: Chet Baker

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⚫️ フランク・シナトラ
古い本には「マイ・ファニー・バレンタイン」には大きなヒットはなく、シナトラのこのヒットアルバムで世の中に定着したと書いてあります。チェットの録音に対して、シナトラのボーカルは大人の魅力ですね。

シナトラの”マイ ファニー バレンタイン”、いいですね。メロディと歌詞を真っ直ぐに歌い上げていて本当に素晴らしい。声質なのかな、テクニックなのだろうか? 細かなビブラートからエモーションが伝わってきます。

Frank Sinatra “Swing Easy”(captol) 1955

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⚫️ ジェーン・モンハイト
2021年の新しい録音。6分を超える大作です。曲のバース(導入部)から切々と歌い上げるモンハイトのボーカルが素晴らしいです。ストリングスが入ったアレンジが哀しくて美しいなぁ。

イントロから2分も聴いていると、悲しさで胸がいっぱいになってくる。この曲の歌詞は少しコミカルで、あなたが大好きという内容で、失恋ではないんだけど。ジェーンはこういう解釈をぶつけてくる。ジャズって表現が人それぞれなんだな。いかん、泣きそうになってきた。


Jane Monheit "Come What May" 2021

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"File:'Chet Baker'.jpeg" by Erzsebet Nagy SAAR is licensed under CC BY-SA 4.0.

サブスクミュージックでジャズを聴こう

サブスクミュージックでジャズを聴きましょう。今回のスタンダードの名演、名曲はすべてサブスクで聴くことができます。しかも音質も素晴らしい。

Apple Musicではジャズ名盤のハイレゾ化が進んできています。素晴らしい音質で名曲を聴きましょう ♪( ´θ`)ノ

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記事で採り上げたアルバムのamazonリンク

Chet Baker Sings

Chet Baker Sings

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Come What May

Come What May

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おわりに

今回の記事を書くにあたって、いろんなアーティストの演奏と歌を50曲以上聴きました。どの曲にもそれぞれの深い味わいがあって、決して飽きることはありませんでした。「マイ・ファニー・バレンタイン」は、やはり素晴らしいスタンダードなのだ。

この曲は歌詞も素晴らしいですね。”私のために髪一本も変えないでいて...” なんて彼女から言われたらクラッとしますね。何だか2月になるとそわそわした若かった頃を思い出しました。青春は遠かりし日々になってしまったけど、この曲を聴くと懐かしい思い出がよみがえります。

Happy Valentine's Day!

ShinSha