今回はルーマニア製ヘッドホン Meze(メゼ) 99 Classics のレビューです。
前から気になっているヘッドホンがありました。とても評判の良い、ハウジングが木でできている密閉型ヘッドホン。これでジャズやクラシックを聴いたらどんな音が聴こえるだろう?想像しただけで胸がときめきます。
ウッドハウジングをもつヘッドホンは、わりと多く販売されています。最近は中国製品にも増えてきています。国内製品ではTAGO STUDIOの製品がとても有名です。しかし何度か試聴しましたが、ジャズをメインに聴く僕には低域のボリュームが少なく、購入には至りませんでした。
先日、ついにMeze 99 Classics を手に入れることができました。購入して3日目、このヘッドホンの虜になりました。Meze 99 Classics で聴くジャズは、まるでジャズクラブで聴くような臨場感がある音です。木でできた製品は良いですね。すごく愛着が湧いてくるのです。
このヘッドホンについて以下に詳しくレポートしていきます。
Meze 99 Classics
Meze Audio 社 について
Meze Audioは2011年に設立されました。5年間の研究成果を活かし、クラウドファンディングの力を借りて”99 Classics”を発売。これが著名なメディアのアワードを獲得し、Meze Audioの名は一躍、世界に知られるようになりました。
すべては、創業者Antonio MezeがFender Stratocasterギターと強い繋がりを感じたように、自分自身の共感できるヘッドホンを探していたことから始まりました。
音楽への情熱を注ぎ込み、個性と生命力に溢れ、ハイエンドテクノロジーの要素も取り入れた製品を自ら作るべく、Meze Audioはルーマニアのマラムレシュ地方で2011年に設立されました。
完璧なサウンドとフィーリングを求め、市場に出回っているできるだけ多くの部品を試し、適切な素材とエンジニアリングソリューションを探し研究することで知識を獲得し、小さなことから始めました。
長年にわたる研究開発の末、2015年遂に「99 Classics」が発売されました。Meze Audioのヘッドホンは、単なるオーディオ機器ではなく、芸術作品です。最高級の素材を使用し、熟練した職人によって丁寧に作られており、そのサウンドは、音楽の細部まで忠実に再現し、リスナーを魅了します。
Meze Audioは、音楽愛好家のためのヘッドホンブランドで、音楽を心から愛する人々に、最高のリスニング体験を提供することを目指しています。
引用:https://mezeaudio.jp/

現在のMeze Audioの製品ラインナップはヘッドホン8種、イヤホン2種。東欧的魅力があるウッドデザインをもつ高音質のヘッドホンを数多く販売するメーカになりました。フラグシップヘッドホンの価格は 500k円超え! しかし、Meze 99 Classics を聴いていると、上位機種も欲しくなってくる (^^;;

Meze 99 classics
Meze Audioのwebsiteに記載されている製品の特徴を下記の転載します。
今回初めて、木製のヘッドホンを手にしましたが手に馴染むものですね。さらに、この製品は唯一無二ともいえる響きを活かした素晴らしい音質をもっています。このヘッドホンは音楽を愛する人の生活に寄り添うパートナーとなる製品です。長く使いたいという気持ちが自然と芽生えてきます。
- その完璧なナチュラルサウンドと洗練されたデザインで、世界中の音楽愛好家から高い評価を受けています。柔らかなイヤーパッドとスプリングスチール製のヘッドバンドにより、長時間のリスニングでも快適な装着感を保ちます。99 Classicsは、単なるヘッドホンではなく、音楽を愛するあなたにとっての至高のパートナーとなるでしょう。
- 指紋と同様、木目も一つずつ微妙に異なり、99 Classicsは他に類を見ないヘッドホンになっています。 手に持ったときにやさしくなじむ感触もきっと気に入っていただけるでしょう。 頑丈な作りと正確な組み立て。 イヤーカップはサテン仕上げの木目調。上品なルックスの99 Classicsを装着し、椅子に座ってゆっくりとお気に入りのサウンドを楽しんでください。
- 全てのコンポーネントで完璧を目指しました。 手と目で楽しめる素材を厳選しプラスチックは一切使っていません。通常の保証に加えて、より長くお使いいただく為、交換部品をできるだけ長く保有する事を会社のポリシーとしております。


製品仕様
Meze 99 Classics
形式:密閉型、40 mm ダイナミックマイラードライバー
再生周波数帯域:15Hz〜25KHz
筐体素材 : ウォールナット、スチール、アルミニウム、樹脂
インピーダンス: 32 Ω、感度:103 dB/mW
接続プラグ :3.5mm(ミニ)、6.3mm(標準)アダプター付属
ケーブル:取り外し可能ケブラーOFCケーブルリモコン付きケーブル(1.2m)、取り外し可能ケブラーOFCケーブル(3m)
質量:290g(ケーブルなし)
付属品:収納ケース、標準変換プラグ、航空機内用アダプタ
購入ヘッドホンの写真
Meze 99 Classicsがやってきた。黒い外箱のデザインがカッコイイです。こんなにたくさんのアワードに選ばれているんですね。


外箱を開けると内箱が出てきた。そしていよいよ開封。なんじゃこりゃ。黒い物体はヘッドホンケースなのです。上に乗っているのが製品の保証書・説明書。


次にヘッドホンケースをオープン。次々箱が出てきてマトリョーシカみたい(笑)やっとヘッドホンが出てきた。ウッドハウジングのヘッドホンはやはり美しいですね。さらにケースの中に入っていたケーブルケースをオープン。ケーブルとプラグがぎっしり入っている。


やっと全部を取り出しました。これが箱の中に入っているものすべて。ケブラーOFCケーブルリモコン付きケーブル(1.2m)ケブラーOFCケーブル(3m)、変換プラグ(3.5 → 6.35mm)、航空機変換プラグ、そしてヘッドホン Meze 99 Classics。このヘッドホンを出して、飛行機の中で聴くんだ。

持ち上げて、ウッドハウジングを見てみましょう。ウオールナットの木目が美しいです。手に馴染む良いデザインの製品です。
中古で純正のバランスケーブルも手に入れました。音質の変化より、出力を増加させてアンプを使えるメリットが大きいのです。音圧の低い古いジャズなどの音源を聴く時に有効です。


製品レビュー
総合評価
Meze 99 Classics
総合 :☆☆☆☆☆
デザイン・質感:☆☆☆☆☆
装着感 :☆☆☆☆☆
サウンド :☆☆☆☆☆
定位・空間表現:☆☆☆☆☆
<音質バランス>

[コメント]
胡桃の木でできたハウジングもつ美しいヘッドホンです。ルーマニアの比較的新しいメーカの製品ですが、マニアの間では有名です。Amazonのレビュー数1,400超、レイティング4.6、世界中で数々の賞を受賞しています。
本製品は2015年、設立されてまもないMEZE AUDIOがクラウドファンディングで資金を得て製品化に至ったヘッドホン。これが大ヒット製品になりました。このヘッドホンはオーディオマニアというより、音楽を楽しむ人々から熱い支持を受けている製品だと感じます。その証拠にアメリカ有名オーディオサイトでは、本製品はまともなレビューさえ行われていません。周波数応答データを見てこの理由が分かりました。Audio Science Reviewの片隅にMeze 99 CLASSICSの周波数応答データが掲載されていましたので転載します。

周波数応答から分かるのは、このヘッドホンはハーマン・カーブから大きく離れた独特の音響特性をもっていることです。ハーマン・カーブと比較すると、低域〜中低域下部(20-400 Hz)は音圧が大きく上回り、中低域〜中域(400-1,500 Hz)はそこそこターゲットに近い。耳増幅のある中高域(2-4 kHz)は落ち込み、高域・超高域(5 kHz ー)では凹凸が激しく、ハーマンカーブを上回る領域がスパイク状に存在する。
低域〜中低域下部の音圧はドラム、ベースによるリズムを豊かに表現し、高域・超高域の音圧が豊かな音域ではピアノのハイノート、シンバル、パーカッションなど、音のきらめきを印象付ける効果がある。解析するとこんな感じになるのでしょう。
データを見るとこのヘッドホンは職人的なチューニングから作られたものだと感じるのです。先日記事に書いたハーマン・カーブのような音響理論からは、絶対にこの製品は生まれない。だから”Audio Science”を唱えるサイトではレビューを掲載しないのでしょう。要は今の音響理論では、このヘッドホンの音の素晴らしさを説明できないのです。
しかし、このヘッドホンで聴く音楽は本当に素晴らしいのです。このヘッドホンが再生する音は、小さなホールで演奏を聴くイメージです。このヘッドホンは解像度、トランジェントなどを追求する最近のモニターヘッドホンとは明らかに違います。小さなホールのような独特の響きがある音響空間で、音楽の美しさを際立たせているのです。さらにこの製品はウッドハウジングならではの、やわらかく温かい音を再生します。これまで聴いた中で最もリスニングに適したヘッドホンだといえます。
個人的にはMeze 00 Classics はゆったりしたリズムの音数が少ない音源を聴くと真価を発揮するように感じます。残響時間が長いため、音数が多いと干渉が生じることがあり、音源を選ぶ一面もあります。
サウンド・インプレッション
まずクラシックを聴いてみました。反田恭平”月の光” と ”亡き王女のためのパヴァーヌ”。少しボリュームを落として聴く。やわらかなピアノの響きがたまなく美しい。あまりの美しさに涙が出そうになりました。
製品の名前”CLASSIC”のとおり、このヘッドホンはクラシック音楽を聴くのにぴったりです。特にピアノ、弦楽器の響きが素晴らしい。一音一音の響きに集中して聴く音楽に向きます。オーケストラより、小さな編成の演奏を聴くのに適している。
続いて、ジャズを聴いてみました。このヘッドホンはジャズと最も親和性が高いです。豊かな低音と美しい音の響き。まるでジャズクラブで演奏を聴いているみたいです。いや、これほどベースやドラムの存在感のある音はジャズ喫茶の環境に近いかな。
ジャズの楽曲では、先ずキース・ジャレット トリオの演奏 ”Little Girl Blue” “Ballad of the Sad Young Men”を聴いてみました。キースのピアノがまるで目の前で鳴っているような響き。ゲイリーの抑えたベースは低くハーモ二ーを整え、演奏を立体的に浮かび上がらせる。ジャックのブラシはリズムを刻み、シンバルの響きが彩りを添える。ああ、美しいな。このヘッドホンでジャズを聴くひとときは至福です。
続いて聴いたアート・ペッパーの”Besame Mucho”。リズミカルなイントロを聴いただけでワクワクする。ベースの深い響き、パーカッションの迫力、アルトサックスの艶のある音。まるで50年代のジャズクラブで演奏を聴いているみたいです。古い音源もこれほど魅力的に聴ける。これはジャズファン、クラシックファンにとって大きなメリットとなります。

最後はポップスの楽曲。まず、最近ハマっているレイヴェイのボーカル曲 ”Bewitched”。ジャズライクの彼女の楽曲は、このヘッドホンと相性が良いです。アコースティックギターをバックに歌うレイヴェイの声が艶かしい。彼女のファルセットは本当に美しいですね。ヘッドホンの中でストリングスとレイヴェイのファルセットがやわらかく融けて響き合う。うっとりするほど美しいです。
創業者アントニオさんがフェンダギターに愛着をもってこのヘッドホンを作ったという文章を読んで、ジェフ・ベックが思い浮かびました。僕のイメージではフェンダーを弾くギタリストのNo.1はジェフ・ベックです。そんなことから、名曲 “哀しみの恋人たち”を聴いてみました。
思い切ってボリュームを上げてみる。ベースが作る深いビート、ドラムが打つ激しいリズム。これをバックに、ジェフ・ベックのギターが泣き、叫ぶ。ウッドハウジングは激しく美しい音を再生してくれました。あるレビュワーは、このヘッドホンで聴くロックが最高だと書いていました。その後、ビートルズも何曲か聴いてみましたが納得しました。ポップスの曲もMEZE 99 CLASSICSで楽しめますね。
試聴曲
[Classic]
反田恭平 月の光 リサイタル・ピース 第1集: ”月の光” “亡き王女のためのパヴァーヌ”
[Jazz]
Keith Jarrett Trio :Tribute “Little Girl Blue” “Ballad of the Sad Young Men”、Art Pepper: the Art Pepper Quartet “Diana” “Besame Mucho”
[Pops]
Laufey : Bewitched ”Bewitched” “Goddess” ”Misty”、Jeff Beck: Blow By Blow “哀しみの恋人たち”、The Beatles: Abbey Road “Come Together” “Golden Slumber”
[試聴環境]:
音源:Apple Music (ロスレス、ハイレゾロスレス)、DAC: S.M.S.L DO 400
デザイン・製品の質感
天然木の深い茶と黒を基調し金具は金(または銀)。99 Classicsのデザインは美しく高級感があります。胡桃の木を加工した曲線的なフォルムには工芸品の様な味わいがあります。ハウジングの木目はひとつ一つ異なっており愛着を感じます。
装着感
ヘッドバンドを調整することなく、被るだけで頭にフィットする仕組みとなっています。この設計は秀逸です。装着感は素晴らしいです。ヘッドホンは意外に軽量で頭にフィットします。イヤーパッドはやわらかく、側圧の大きさは適正であるため長時間着けていられます。
音場・定位感
定位は正確です。音場は広くありませんが、小さなホールのような大きさの、このヘッドホン独自の音場が作られます。密閉型ヘッドホンには音の詰まりを感じることが多いのですが、本製品には感じられません。木の反響音が和らげているのだと考えます。
記事で採り上げた商品のリンク
おわりに
エージングのために、このヘッドホンで音楽を聴きはじたのですが、数日でウッドハウジングの音の響きの虜になりました。それ以来、ずっとこのヘッドホンでジャズ、クラシックを聴いてます。
密閉型なので夜でも自由に音楽を聴けることも関係しているのでしょう。それにしてもデザインが美しく、愛着を感じる製品です。気がつくと、あれほどお気に入りだったゼンハイザー HD 490 PROを2週間以上手に取っていない (^^;;
今回の結論。Meze 99 Classics は最上のリスニング用ヘッドホンです。全力でオススメいたします。興味のある方は是非この製品を手に取り、試聴してみてください。きっときっと欲しくなるはずです。
ShinSha


