どーもShinShaです。
今回は天才画家カラヴァッジョの2回目の記事。
28歳で成功を収めたカラヴァッジョの人生は殺人により暗転します。
そして、ナポリ、マルタ島へ逃走しながら優れた作品を残します。
最後の自画像は自らの首を斬り落とした作品。
どんな心境でこの絵を描いたのか。
深い興味を感じます。
神のような才能がこうした常軌を逸した人物に宿る。
歴史を見ると、しばしばそういうことがあるのですね。
今回の記事には残酷な絵の写真が含まれています。
苦手な人はご注意ください。
カラヴァッジョの驚愕の人生
カラヴァッジョはイタリアでは、ダ・ヴィンチと並び称される巨匠。
バロック美術の先駆者としての大きな役割を果たした天才画家です。
カラヴァッジョの人生について山田五郎さんの本から引用します。
本名:ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
生没年:1573−1610年
彼の人生も、作品と同様に劇的で明暗対比に富んでいました。
20歳でミラノからローマに出るや一躍、人気画家となりますが、激しすぎる画風と娼婦をモデルに聖女を描くリアリズムには賛否両論。
毎晩、酒場で暴れて警察沙汰は数知れず、ついには喧嘩相手を殺してしまい、殺人罪で指名手配。
イタリア各地を逃げ回り。作品と引き換えに教皇の恩赦を求めますが、やっと赦しが出た直後に、野垂れ死してしまうのです。
それでも17世紀初頭にあって衝撃的なまでに斬新な彼の画風は、イタリアはもちろん、ローマを訪れたルーベンスやオランダの画家たちの間で”カラヴァッジェスキ”と呼ばれる信奉者を生み、西欧中で大流行。
引用:山田五郎著「知識ゼロからの西洋絵画史入門」
真の天才画家であり、性格破綻者・殺人者でもある。
しかし、この人は歴史を変えるような革新的な作品を残した。
彼がいなければ、ルーベンス、レンブラント、フェルメール、ベラスケスは生まれてこなかった。
参考図書
今回の記事は下記の2冊の本を参考にして書きました。
山田五郎さんの本は、以前から当ブログでご紹介してきている分かりやすくすばらしい本です。
これ1冊で、西洋絵画の歴史を理解することができます。
もう1冊は、先日、本屋さんで見つけた本。
カラヴァッジョの生涯、作品について説明した本です。
タイトルが安直すぎますが、中身がすばらしいので即購入。
1時間で彼の芸術を理解できるとは思えませんが💦、オススメの本です。
著者は神戸大学教授、美術史研究科。
ほかにもカラヴァッジョに関する著作が多数あります。
- 作者:山田五郎
- 発売日: 2011/07/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 作者:宮下 規久朗
- 発売日: 2021/03/10
- メディア: 新書
カラヴァッジョの絵が観たい(2)
カラヴァッジョは前回ご紹介した聖マタイ伝の大作を仕上げて一躍有名になります。
今回の記事では、1601年以降の作品について紹介します。
彼は、1606年に殺人罪を犯し、ローマから逃走。
逃走しながらあちこちで絵を残し、事件も起こす。
そして教皇の恩赦を求めてローマに戻る途中、1610年にポルト・エルコレにて客死。
前回記事はこちらです。
「キリストの捕縛」
1991年にアイルランドの修道院で発見された作品です。
それ以前は、ロシアのオデッサにあるコピーでしか知られていませんでした。
オデッサ というと何となくナチスを思い出しますね。
キリストを捕まえに来た兵士に合図するためにキスをするユダ。
あきらめたような表情で手を組むキリスト、緊迫感に満ちたドラマです。
カラヴァッジョは激情の人だから、こういう修羅場に何回も立ち会っているのでしょう。
人物の表情、鎧や衣服の質感、強いコントラストによる演出。
凄まじいまでのリアリティがある作品です。
すばらしいです。
"taking of christ" by ukdamian is licensed under CC BY-NC 2.0
「エマオの晩餐」
聖書の一節を描いた作品です。
ちょっとふっくらしたキリストですね。
水差し、陶器、果物籠、料理などの細密な描写がすばらしいです。
籠から果物はこぼれ出しそうです。
さらに籠はテーブルからはみ出している。
カラヴァッジョは、なぜこのように静物を描くのだろうか?
そこに大きな魅力を感じます。
キリストに注目する3人の表情、身ぶりにも、すごくリアリティがあります。
参考図書には、右の人物のポーズはキリストの磔を暗示していると書いてあります。
"Caravaggio (1602) - The Supper at Emmaus" by Caravaggio HD is marked with CC PDM 1.0
「勝ち誇るアモール」
この絵は大傑作ですね。
ギリシャ神話に登場する恋心と性愛を司る神を描いた作品。
Amor は「愛」(エロス)、ローマ神話のクピードー(キューピッド)を意味します。
褐色の羽根を背に付け、なかば嘲笑するような屈託ない笑顔をみせるキューピッド。
足元に散らかっているバイオリンとリュート、鎧、王冠、直角定規 とコンパス、ペンと楽譜など。
この作品は「愛」(エロス)は、武力、学問、音楽など、すべてに勝ることを意味しています。
しかしこの作品のリアルさはすごい。
そして、かなりエロティックですね💦
"File:Amor Caravaggio Berlin.JPG" by Miguel Hermoso Cuesta is licensed under CC BY-SA 4.0
「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」
カラヴァッジョは1606年に殺人の罪を犯して、ローマからナポリへ逃走。
2年間ナポリに滞在し、さらにマルタ島に移動する。
マルタ島では「洗礼者ヨハネの斬首」という作品を描いて騎士団に奉納し、入団を許される。
しかし、わずか1ヶ月後に事件を起こしマルタ騎士団に追われる身となる。
何度事件を起こしても懲りない人ですね💦
逃亡する先々で、援助者の求めや生きるために作品を残しています。
しかし、逃亡している時代でも、彼が創作した作品はすばらしいのです。
この絵はナポリに逃走した時代に書いたといわれていいます。
聖マルコ伝のサロメとヨハネの物語を描いた作品です。
踊りの名手サロメは、母親の言いつけによって、踊りの褒美に「ヨハネの首」を所望し、首が盆に乗せられて運ばれくる。
洗礼者ヨハネは、キリスト教ではイエスの先駆者として位置づけられています。
目をそむけて、首をもつサロメの姿がリアルです。
絵はすべての人物が闇に飲み込まれていくような、不吉な雰囲気に満たされています。
カラヴァッジョは同じ題材でもう1枚、作品を残しています。
もう1作はマドリード王宮にあります。
"Salome receives the Head of Saint John the Baptist" by DJANDYW.COM is licensed under CC BY-SA 2.0
「ゴリアテの首をもつダビデ」
この作品は、カラヴァッジョ最期の自画像とされる。
恩赦嘆願を行うために、教皇の甥に贈るために制作したといわれています。
この作品では、若きダヴィデが切り落としたゴリアテの首を髪をつかんで吊り下げるように持っている。
漆黒の中に二人だけを登場させ、強い光のコントラストでドラマチックな演出をしている。
ダビデは若かりし頃のカラヴァッジョを描き、切り取ったゴリアテの顔もカラヴァッジョ を描いている。
半開きの口、うつろな目、滴る血。
自分をこのように描くという心境は、どういうものだろうか。
そして、殺人者ダビデの表情が沈うつなのが、リアリティがありすぎる。
これは、彼が殺人者の真理を知り尽くしていたからだろう。
この絵を運びながら、カラヴァッジョは逃走中のアクシデントから熱病にかかって死んだ。
絵を描いていた時に、死期を悟っていた訳ではないようだ。
人生を悔み、若かりし自分に今の自分を殺させたかったのだろうか。
これが最後の作品となってしまったのも、カラヴァッジョらしいなぁ。
"Caravaggio, David avec la tête de Goliath (1606-1607), huile sur toile, 125 x 101 - Rome, Galleria Borghese" by Héliodore is marked with CC PDM 1.0
カラヴァッジェスキーの活躍
カラヴァッジョの作品の影響は大きく、ローマでもナポリでも模倣する者が続出した。
それほどのインパクトを彼の作品は持っていたんですね。
彼の技術を習得した画家は、それぞれの国に帰って明暗法や写実主義を伝えました。
スペインのベラスケス、フランスのラトゥール、オランダのレンブラントは自国でカラヴァッジョの芸術を学び、自らの手法を確立します。
彼らの作品を観ると、いかにカラヴァッジョの作品が偉大であったか、理解することができます。
"Netherlands-4167 - The Night Watch" by archer10 (Dennis) is licensed under CC BY-SA 2.0
あとがき
2020年に予定されていたカラヴァッジョ美術展、新型コロナの影響で中止になってしましました。 イタリアも日本も、感染が治っていません。 いつの日か、彼の作品を観る日が来ることを心待ちにしています。
それにしても、カラヴァッジョの絵はすさまじいまでの魅力がありますね。
今日も最後までブログを読んでいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
ShinSha
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