時の化石

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原田マハ著『たゆたえども沈まず』を読みながら(2) 分かっていても、やはり泣けてくるゴッホとテオの感動の物語

どーも、ShinShaです。

今回のブログは、原田マハさんの著作『たゆたえども沈まず』2回目の記事です。ゴッホ とテオ、二つの魂が、この世の中に美しい名画を残してくれた。結末は、十分に分かり過ぎているのに、最後は涙を止められなかった。感動しました。この本はすばらしいです。

今回のブログでは、本のご紹介に加えて、ヴァン・ゴッホ美術館の収蔵のアルル、サン=レミ時代の作品から、あまり知られていない、ゴッホの素晴らしい作品を紹介します。こちらの方もお楽しみに。

本の紹介

じつは、このブログの最初の記事は、ゴッホ最晩年の作品『烏のいる麦畑』に関するものなんですね。ゴッホの絵を愛するようになって40年のShinShaとしては、この小説『たゆたえども沈まず』は、必ず読まなければならない作品なんです。副読本である『ゴッホのあしあと』と合わせて購入して、このブログで紹介してきました。

とまどったのは、よく知っているゴッホの物語を、あらためて小説として読むことが、どういう体験になるかということでした。
しばらく読み進むと、そんな心配は消えていきました。二人の主人公、林忠正、加納重吉は、魅力的な人物でした。その二人が、ゴッホとテオと知り合って、物語が始まっていく。本書は、よくゴッホについて調べ、巧みに構想されたすばらしい小説です。

著者について

筆者、原田マハさんの略歴をご紹介します。山本周五郎賞新田次郎賞を受賞されているんですね。最近も、ベストセラー を出されている優れた作家です。

原田マハ

1962 年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。伊藤忠商事株式会社、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターとなる。2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、2006年作家デビュー。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞を受賞。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞を受賞。ほかの著作に『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『たゆたえども沈まず』『常設展示室』『ロマンシエ』など、アートを題材にした小説等を多数発表。画家の足跡を辿った『ゴッホのあしあと』や、アートと美食に巡り会う旅を綴った『フーテンのマハ』など、新書やエッセイも執筆。

引用:https://haradamaha.com/profile

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原田マハ『たゆたえども沈まず』幻冬社文庫

本書のあらすじ 

この小説のあらすじを、出版社の記事から引用します。

19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇跡の出会いが〝世界を変える一枚〟を生んだ。読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。

後半のあらすじ

「日本に行きたい」林忠正に相談したゴッホは、林のアドバイスで、アルルに転居して絵を書くことを決めた。ゴッホの芸術を完成するために、テオは、ゴーギャンにアルル行きを奨めた。ゴーギャンとの共同生活は、わずか2ヶ月で破綻し、1888年12月、ゴッホは自らの耳を切る事件を起こした。

アルルの病院で入退院を繰り返した後、ゴッホは心機一転、サン=レミの修道院病院に転院して絵を書くことにする。サン=レミ では、ゴッホは精力的に絵画の制作を再開する。そして、ついに彼は〝世界を変える一枚〟の作品を描きあげた。

パリのタンギーの店で、テオ、林、加納の3人は、久しぶりにゴッホの作品観賞会を開く。サン=レミ でゴッホが描いた『星月夜』は、彼らから、いかなる言葉も奪ってしまった。林忠正は、「彼はとうとう.........成し遂げた。」涙を見せる。

サン=レミで回復したゴッホは、オーヴェル=シュル=オワーズ へ転居することになった。オーヴェルに行く前に、ゴッホは3日間、パリでテオの家族と一緒に過ごした。幸せな時間だった。

オーヴェル=シュル=オワーズへ旅立ってから2ヶ月後の1889年7月27日、ゴッホはピストルで自らの脇腹を撃って自殺を図る。知らせを受けたテオは、オーヴェル=シュル=オワーズへ向かい、ゴッホの最後を看取る。ゴッホ 死去の知らせを受けた加納重吉は、オーヴェル=シュル=オワーズに向い、葬儀に参列しテオを支えた。

それから、半年後の1891年1月25日、テオはオランダのユトレヒトで衰弱して死去。妻ヨー・ボンゲルから、テオ死去の報告を受けた林忠正は、彼女を慰め、「ヨー、あなたがひとり、彼の作品を理解し、継承する役目があるのです。」とゴッホの全作品の相続を受けるようアドバイスを送る。

この本の中で、特に印象に残った部分を引用します。息を引き取ろうとするゴッホに、テオが語った言葉です。

兄さん。

いつかあなたの展覧会を開こう。大きな美術館で、世界中からあなたの絵を見るために、たくさんの人が押し寄せるはずだ。

あなたの絵は、海を渡って、遠くまで旅をする。きっと日本までも。

そうだ。あなたの絵は、日本でも紹介されて、数えきれないほど多くの人が感銘を受けるんだ。

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フランス内のゴッホの居住地 元の地図は https://www.photo-ac.com/ からダウンロード

本の感想

後半の感想

ゴッホとテオの物語については、十分に知り尽くしてはいても、ゴッホの自殺と葬儀、そして衰弱して亡くなったテオの物語を読むと、胸が詰まりました。本書では、ゴッホは、テオを救うために自殺をしたように書かれています。テオは、兄の芸術を理解してるだけに、その絵を売ることができない自分を責めていました。もう、ただただ切ない物語です。

アルルでのゴーギャンとの訣別、耳切事件、精神病院への入退院。どん底の中、サン=レミの糸杉、アイリスなど豊かで美しい自然が、彼を迎え入れました。ゴッホは美しい自然の中で、回復して最高の作品を創作することができた。本当に良かったと思います。

ゴッホが亡くなったのは、ベルギーで一枚の作品が売れ、「メルキュール・ド・フランス」にゴッホの絵を激賞する評論が掲載された後だった。もう、数年、ゴッホが生きていてくれたらと思うと残念でなりません。

おすすめのポイント

この小説は、考え抜かれた巧みな構造を作って書かれています。

この物語の主人公は、林忠正、加納重吉、ゴッホの弟のテオドロスの3人です。この構造から、日本人の視点として、パリの文化、ゴッホとテオの物語を、親しみやすく伝えることができます。そして、テオの視点から、当時のパリの芸術の様子、兄ゴッホ の生き様を、生き生きと伝えることができます。

パリで日本美術の紹介を行なった先駆的人物である林忠正と、後輩の加納重吉は、ゴッホの才能と絵画を理解して、テオとゴッホ を支えていきます。加納重吉は、ゴッホの耳切事件でテオと一緒にアルルに行き、ゴッホが自殺したオーベルも訪れ、彼を励まします。林忠正は、ゴッホとテオに、重要なアドバイスを与える人物として書かれています。この辺は、日本人読者には、ぐっとくる設定ですね。

そしてもう一つ感じたことがあります。小説というのは、新聞の記事や雑誌の評論を読むのとは違うんですね。長い時間を読者と共有して、感情を運んでいってくれるのです。だから、この本の読者は大きな感銘を受けるのですね。

[関連情報]ヴァン・ゴッホ美術館 収蔵作品

ヴァン・ゴッホ美術館収蔵作品から、独断と偏見で、あまり知られていないゴッホの素晴らしい作品を選んでご紹介します。ゴッホは、良い絵をいっぱい描いていますね!

アルル時代の作品

この桃の花の絵には、日本の浮世絵の影響を感じます。風景から切り取って、前景に桃の花を描いています。花は満開。蝶も飛んでいます。美しい絵ですね。アルルの美しい自然と、日本の絵画の技術を取り入れて、新しい絵が生まれたのですね。

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花咲く桃の木 1888年4月、引用:ヴァンゴッホ美術館website https://www.vangoghmuseum.nl/

ゴッホはアルルでも、アイリスを描いていたんですね。ゴッホはアルルの自然に魅了されました。この絵にも日本の浮世絵の手法が参考にされています。手前にアイリスを配置し遠くに街並みが書かれいるます。緑が基調の美しい風景画です。彼の精神も、この頃は、静かで穏やかだったのでしょう。

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前景にアイリスのあるアルルの眺め 1888年5月、引用:ヴァンゴッホ美術館website https://www.vangoghmuseum.nl/

ゴッホはアルルでも麦畑を描いていました。少し緑が残り、様々に彩られた麦と黄金色の生命力にあふれた麦の絵が描かれています。美しい表現です。遠くにかすむ風景も美しい。この絵は、今回初めて観ました。

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麦畑、背景にアルピーユ山脈麓の丘陵 1888年6月、引用:ヴァンゴッホ美術館website https://www.vangoghmuseum.nl/

サン=レミ時代の作品

ゴッホは、「糸杉のフォルムは、エジプトの塔のように美しい」と語っていました。炎のように幾重にも重なり成長する糸杉の絵は、ゴッホ独自の素晴らしい表現ですね。

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糸杉と2人の女性 1889年6月、引用:ヴァンゴッホ美術館website https://www.vangoghmuseum.nl/

これは、今回初めて観た絵です。木の幹と草むらの絵ですが、様々な植物が波打つ絨毯のように、生き生きと描かれています。こんなモチーフが、緑色の絵具のわずかな差で、こんなに美しい絵になるのですね。今回初めて観ましたが素晴らしい作品ですね。

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キヅタのある木の幹 1889年7月、引用:ヴァンゴッホ美術館website https://www.vangoghmuseum.nl/

テオの息子、ウィレムが誕生した時に、プレゼントするために描いたアーモンドの花の絵です。この絵は有名な作品です、浮世絵の影響が見られる、美しい清らかな花。背景のブルーもノーブルで美しいですね。

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花咲くアーモンドの木の枝 1890年2月、引用:ヴァンゴッホ美術館website https://www.vangoghmuseum.nl/

あとがき

繰り返しになってしまいますが、結論もストーリーも十分に分かっているのに、涙が止まらないというのは、この小説のもつ力です。少し悔しいけれど、うまく仕組まれたワナにハマってしまった感じです。この本、おすすめです。是非多くの方に読んで頂きたいです。

この後、テオの奥さんのヨー・ボンゲルがたった一人で、ゴッホの作品を売り、世界で最も有名な画家にしていくのですね。興味がある方は、ぜひ、下のブログをお読みください。

www.fossiloftime.com

本ブログの前の記事はこちらです。よろしければ、どうぞ。

www.fossiloftime.com

今日もこのブログを訪問いただき、ありがとうございました。
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ShinSha

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